56話 『魔眼』
『魔眼』と戦うわけではないです。
二つに分かれており、久しぶりに魔王サマも現れます。
ここは徹夜達が自分の世界に戻るために中継とした世界。
いい加減に名前がないと説明し辛いのだが、そこまで名前を考えようとは思わない。
基本的に名前を考え始めると何も思いつかないでボーとしたまま10分は必ず経過するわけである(小説の最初に出てきた『サラスム』という名前もソレぐらいかかった)
まぁ、とりあえず…こんなどうでもいいことはほっとこう。
まぁ、そんなこんなで世界のある場所。
魔族達が集まる国。
その中心とも言える都市の城の中のある一室である。
その部屋には大きめの二つの机があり、その1つの入り口の正面にある机。
そこには『魔王』であるルルが机の上に乗っている書類を目の前にしてイスに座っていた。
「……スゥ」
まぁ、ルルは寝ているのだが……。
すると、部屋に入ってきた魔族の少女が一人。
その少女はルルと同様に白い肌……つまりは、人間と魔族のハーフである。
「……ルル姉さん、いい加減おきてください」
眠っている姉の肩をゆする妹のニィ。
揺すってもおきないので、しょうがなく姉であるルルの頬をつねって……捻った(これは痛い)
「…ふぁ!?」
いきなりの痛みに驚いて目を覚ますルル。
その目の前には腕を組んでいるニィの姿を見て、つねられて頬が少しだけ赤くなっている顔が、あからさまにやっちまった…というモノになる。
「ルル姉さん…ソレ最後の書類だから、おとなしく判子押そうね」
「……はい」
異様に迫力のあるニィに対して、冷汗を流しながらもルルの手がオロオロと隣にある判子を捜すが、数回ほど空を切り…やっとの事で判子を掴むと目の前の書類に判子を振り下ろした。
「…ん、よくできました」
ニィがルルの頭を撫でる。
「………それは姉である我が妹であるニィに対してやることじゃないか?」
「ルル姉さんは、私の事を撫でられるまで仕事はしてないよ」
「……すみません」
思わず目をそむけるルルの頭の上では未だにニィの手が左右にゆさゆさと動いている。
そのたびに床まで伸びている無駄に長い髪の毛が、少しだけ揺れるがルルはソレを気にした様子は一切無い。
「ぬぅ…そろそろ、あの時期かな?」
「アレですか…。
でも、つい先月あそこの警備がサボったせいで、あの場所も少し危険になっちゃいましたからね……まぁ、警備の二人には相当きつい仕置きはしておきましたけどね……その二人は、前に仕事関係で知り合いでしたし。
……だから、さすがに今年はいくのはやめる?」
少し残念そうにするニィ。
「ニィの怒りは怖いからな、その二人…南無。
知り合いじゃなかったなら、まだ軽いお叱りですんだろうに……」
ルルは、二人の魔族に対して手を合わせて、少しばかり同情の念をこめて合掌してみる。
だが、すぐさま目を開けるとニィを見て笑う。
「危険になった程度で行かないという選択は無いだろう…どうせ魔物が一匹二匹居るだけだ。
我は『魔王』だぞ。我の妹なのだから、我の強さは分かっておるだろう?」
「……えぇ、Aランク指定の魔物が数十匹、Sランク指定の魔物が数匹いるだけだしね」
「……………」
「どうしたんですか? 魔王で、私の姉で、とっても強いルルさん」
「……ふ、ふんっ。
その程度の魔物ならぁ、我一人でも大丈夫だ!! あと姉なのだから、さすがにその他人行儀な呼び方はやめぃ」
「うん、ルル姉さん…あの呼び方はやめる」
そんな感じで喋っているルルとニィ。
「まぁ…我々二人で行くのもつまらん。
この頃、入ってきた二人…テツヤ ハゲヤマとミツキ ナイトゥも一緒に連れて行くか」
ハゲ、ヤマ……?
コレを聞くだけだとへそぐらいまで伸ばしている髪を後ろで縛っている17歳の少年ではなく、それこそバリバリ社会人の中年男性をイメージしてしまう。
「…うん?」
ルルの言葉にニィが、変な声をあげた。
「こ、これは別に…魔物の相手をするのが面倒なわけじゃないからな」
言っておくが、ニィが思ったのはハゲヤマに対してではない。
「…………うぅん?」
「それに、まだニィはあの二人とは話したことも無かろう。
これはいい機会だしな!!」
「……」
ニィは……ただ、ルルの事をジッと見つめた。
真実を求めるような結構鋭い眼。
そしてオロオロとニィの目を正面から見れないルルは……。
「ごめんなさい。正直なところ魔物の相手はめんどくさいです」
凄まじい眼力!!
─ ─
そして再び同じ世界の違う場所。
いくつもの隠蔽魔法で、敵…詳しく言うと徹夜達の目から逃れている隠れ家のような場所。
そこには、一人の老人と数人の少年や少女などが居るわけだが……老人の方はどうでも良いので、少年や少女が数人居る部屋の中だ。
「その眼で、こっちを見るな……唯時」
眠い眼の少年が、目の前に居る少年にそんな事を言った。
「それはさすがに、ひどくないか?」
しょっぱなから美咲に、そんな事を言われたのは両目に変なマークが浮かんでおり、右目には老人がかけたであろう命令を聞かせる魔法陣がひっついている。
つまりは『魔眼』……霧崎唯時という名前の少年である。
「まぁ、タダトキの眼は相手の心も見えるらしいやろ? だから、ミサキは見られたく…え~っと、うん…ないんやで~。
いつも、奈菜ちゃんのこと考えておるからな~」
そんな二人の会話に割り込んできたのは、エセ関西弁少女の楓。
最初の『ミサキは見られたく…』から先は、あくまでエセ関西弁だから思い出せなかったのだろう…まぁ、所詮はエセである。
「変なところで詰まるとは…さすがエセ関西弁だな」
「そこはスルーしとけぃ!!」
「仲が良いな、二人とも」
美咲の静かなコメントに対して声を荒げる楓。
そして……ソレを見て、素直な感想をのべる唯時。
「「誰がだッ!!」」
ハモる二人。
普通…関西弁なら完璧にはハモらないのだが、それはエセだからとしか言いようが無い。
「うん、仲良いな」
「「……」」
唯時のコメントには、二人とも黙るしかない。
「タダトキの眼には、ミサキの心はどううつるん?」
「なッ!? お前、何てこと聞いて…ッ!!」
「ん~…」
美咲の言葉を無視して唯時は、美咲を見ながらう~む…と唸る。
「なんというか…うん。
奈菜の事を心配しているのと、『堕勇』として『勇者』である奈菜と戦うかもしれない状態の自分に対して常に怒り、あとはあの老いぼれへの怒りがあり。
えっと、あとは……」
「あとは?」
楓が唯時に先を求める。
その後ろでは、唯時を止めようとしている美咲が楓におもいっきり踏まれて、バタバタともがいている。
「なんだろうな…? よくわからん」
「なんやそれ!! お前の眼は全て見えるんやろ!!」
「いやいやいや、正直おふざけでも人の感情とか想いは見たくないからな…それに、この能力は俺の心理状態でも変わるからな」
「むぅ…」
唯時のコメントに、ただ唸るだけの楓。
そんな楓をほっといて、唯時は未だに踏まれている美咲の方を見てニヤニヤと笑いながら……。
「まぁ、せいぜい頑張れ…美咲。俺は応援してるぞ」
「…ッ!?」
「あ~!! ホントは見えてたんやろ!!」
「さぁ?」
目を見開いて息をのむ美咲と、騒いでいる楓。
……そして、ニヤニヤとした笑いを崩すことの無い唯時。
そんな三人が居る部屋に、一人だけ入ってきた人物が居た。
「またお前らは騒いでいるのか…」
その部屋に入ってきたのは、日本刀を腰に下げた黒髪の少年。
その少年は呆れた感じの顔で、三人にそんな事を言った。
「なんや、泰斗……お前もいたんか」
「居て悪いか……唯時は、俺のほうを見るなよ?」
「だからひどいなッ!!」
ある種、この唯時へ対しての『こっちを見るなよ』は無理矢理操られている堕勇の中では、お決まりの言葉だったりもするわけである。
「…んで、その首のは大丈夫なのか?」
唯時は、泰斗を方を見ながら首の後ろ側をとんとんと叩いている。
それに対して少しの間だけ泰斗は唯時の事を睨むが、すぐに口を開く。
「問題ない。
なんかいつの間にか居なくなってしまったが…居なくなる前に『魔道書』のヤツに上手く問題は解決してもらった」
「ふぅむ。まぁ、後は心の問題だが……俺がやれることはないだろ」
美咲と楓は、この会話の意味が何だかを分からないようだが、唯時は眼があるせいでほとんどの物は見ると理解できる。
まぁ、理解できないないものも時にはあるが…今話していることは二人にしか理解できない。
美咲と楓は、それの説明を求めるわけでもないし…泰斗と唯時も説明をしようとは思っていない。
「…いつもウザイほど無駄に心配してくれて、ありがとな。
本当にウザイほど……」
嫌味交じりのつもりで言った泰斗だが…それに対して唯時は、ただ笑うだけである。
「……本当にお前は話していて面白い相手ではないな」
それをみた泰斗は、唯時に対してそんな事を言うわけだ。
唯時のとっては本音も見えてしまうわけであり、それに対しての言葉だろう。
「……俺は、あの老いぼれに呼ばれてるからな。
来たばかりだが……そろそろ行くわ」
「おぅ、じゃあな」
泰斗の言葉に唯時が返答し、泰斗は部屋から出て行った。
「お前らも、結構仲良いよな…」
美咲がそんな事を唯時に対して言った。
「…この眼だと人間の心を見れるからな、友達選びは簡単だよ」
唯時は、ただそう呟く。
「…ま、無理に操られている俺以外の三人は全員それほど性格は悪くないし、友達には苦労しないな」
特別な眼を持った少年は、楽しそうに笑う。
久しぶりに出てきました『水晶』こと泰斗君。
誤解してる方や忘れている方もいるかもしれませんので、書いておきますが徹夜くんは殺さずに放置しといたら誰かに回収されていました。
誤字・脱字があれば御報告宜しくお願いします。