55話 文字数が…orz
異様に……多くなりました。
いつもの軽く三倍ぐらいあります。
「いや~…なんか、あれだな~」
「あれだね~」
「二人が何言いたいのかはボクもわかったよ」
俺と美月のまったりした感じの言葉に対して、奈菜がそんな言葉をかけてきた。
ふっ、俺達の言っている事がわかる?
そんなわけ無いだろう。
だって……
「暇なんだよね?」
「「……うん。まぁ、そうだね」」
俺と美月のはもっている返事。
まぁ、要するにそういう事だ。
うん、俺と美月以外の人も同意見だったのか。
俺たち三人は宿の二階にあるベランダで、テキトゥに下の道を眺めながら、会話をしているわけであるが…やっぱりやることがないと暇だな。
まぁ、やることがあっても迷惑だが。
「何か面白いないかな~??」
「ない気がするな」
奈菜の言葉に俺が答える。
俺が取り出したお菓子(当然、奈菜の世界の時と同じではなく。まともお菓子だ)を取り出し、それを食べている。
俺が食べているのはキノコのなんとか、美月はチョコパイ、奈菜はなんとかチップスだ。
いや、正直わざわざ教える必要ないことだ(何食べているだろうな~、と考えて3分かかった)
「やっぱりさ世間的にはタケノコのなんとかが人気だけど、俺的にはキノコのなんとかの方が好きなわけだよ」
「私はタケノコかな」
「ボクもタケノコ」
「……」
キノコは、ただ負けるしかないのか……。
「で、でも…」
「「私(ボク)はタケノコかな」」
「……」
キノコは……本当に、負けるしかないのか?
いや、キノコにはきつい環境でも生き残る力がある!! ならば、タケノコ如きに負ける可能性は1%もありはしないのである!! これは絶対だ!!
「タケノコのほうが美味しいし」
「キノコはなんというか、ね…」
負けるしかないみたいだ、抵抗はやめよう。
まぁ、俺は一生キノコさんを応援し続けるけどね。
あのさ…ネタ画像なんだけどキノコがタケノコによって粉々に砕かれていたりとか紐で吊るされていたりとかしていてさ……なんか悲しくなるんだよね。
「ぬぅ?」
「どうしたの、徹夜?」
俺の変な声に美月が尋ねてきた。
「あれ、見てみ」
俺の目線の先…それに向けて指を向ける。
「どうしたんだろうね、あれ?」
「暇だし、ついていってみないか?」
美月、そして俺のコメント。
好奇心っていうヤツ。
「暇だしね。
何か面白いことあるかもしれないしね」
「…暇だし、ボクも行くね」
よし、行くか。
─ ─
そして再び居ないはずの第三者視点へと移る。
なんかどうでもいい会話で文字数を稼いでいるような気がしたが、そこは気にしないでいただけると嬉しい限りである。
この文も文字数稼ぎなので、そろそろ本題に移ろう。
枯れ果てた大地…と、中二病全開でそんな事を言ってみるが、要するには昔は緑豊かで綺麗だったであろうサラサラに乾いた砂の地面。
その上にミイナが居た。
「……ここは?」
ミイナは先ほどまで気絶していた。
先ほどまで城の一室に居たはずなのだが、誰だかわからないが部屋に入って来ると、何が起きたのか分からない内に気絶させられ、ここまで運ばれてきたようだ。
そして、今目が覚めたわけだ。
「痛ぅ…」
後ろの首元に鈍い痛みがあり、どうやら痛みのあるソコに思い切り衝撃を食らったことをミイナは、自然に理解した。
首をさすりながら周りを確認し、360度見渡すために体を動かす。
すると、今頃だが足に何かがはめられており、ジャラジャラと鉄のこすり合う音がする。
その足を確認すると、足枷がはめられており、それに繋がった鎖の先には鏃がついているようでが地面に刺さっている。
鏃は相当深く刺さっているようで、足に力を込めても抜けることはない。
「誰がこんな事をッ!?」
ミイナは驚きながら、どうにか外そうともがく。
だが、そこで微かだが周りでサラサラと土の中で動く音が聞こえてきた。
「ッ!?」
サラサラに乾いた砂を巻き上げながら進む何かが、数匹いた。
周りを見渡すと合計5匹ぐらいの何かが居り、それが一瞬だけ顔を出し、再び砂に潜っていく。
徹夜の言う砂魚である。
「…なんでこんな時に、あんなのが数匹もいるんですかッ!!?」
そんな事を思わずぼやいてしまうミイナだが、力を込めて足枷から足を抜こうとしており、相当必死なことが分かる。
…だが、ミイナの細い足でさえも足枷はガッチリと拘束し…抜けることはなくミイナの動きを阻害する。
そんなミイナの行動とは関係なく、砂魚はミイナに近づいていく。
「~~ッ!!?」
声のない悲鳴を上げるミイナ。
砂魚はただミイナに近づいて行き、大きな口が開くと…
呑み込んだ。
呑み込まれたのは、ミイナではなく砂魚だ。
地面…サラサラに乾いた砂が盛り上がり何かの口の形に変形すると、それなりに大きい砂魚を丸呑みするように包み込んだ。
その地面から生えてきた口の中で砂魚の悲鳴とも思えるような声が聞こえてきたが、ジュッ…という短い音共にそれが途絶えた。
「…えッ!!?」
驚きの声をあげるミイナとは関係なく、それはさらに形どっていく。
それは竜だった。
その竜の体の表面が段々と崩れていく。
『炎、もっと温度を上げなさいッ!!』
竜の口から女性の声が響く。
「わかってるっての…ッ!!」
それに答えるような声が聞こえ、そちらにはさっきまでミイナにアピールして撃墜されていた炎。
炎は片手を地面についており、髪の毛には赤いラインが入っている。
砂魚を飲み込んだ竜は炎の能力で作られた器で、声の主は炎の精霊であるサラ。
サラの入った竜の形の器は今までで一番大きく、今までは人が5人乗れるかの程度だったわけだが…今の大きさは何倍も大きい。
高校の体育館に入れるか入れないかだと言っておこう…正直、体育館なんて大きさは違うだろうから説明になんて使えないのだが…。
すまないと言っておこう。
「くそめ…うざがられるの覚悟で戻ったら、ミイナちゃん付きの侍女さんが倒れてるしッ!!」
そんな事を言った炎…そして火竜はその大きさに似合う火の球を吐き出す。
それを食らった一匹の砂魚はバラバラになって吹き飛び、それを見たほかの砂魚は逃げるように砂に潜っていく。
「……こんな事をするのは一人しか居ない」
そんな事を言った炎。
同時に火竜が炎とミイナに当たらない程度に周りを熱の塊で焼き払った。
円を描くように火竜の口から熱線が放たれ、それから逃れるために砂の中に隠れていた人物が大きく跳ぶようにして避けた。
「……邪魔するな、神沢 炎」
「何で、こんな事をした…古里ッ!!」
その人物は古里 里稲だ。
炎は睨むようにして里稲を見つめ、後ろのミイナは目を見開いて驚いている。
「私の今回のクリア条件は『魔物の全滅…そして、これから現れないこと』だ」
「……何で、その条件でミイナを殺すような事になるのかを教えて欲しい所だな」
「それは、その女がこの土地と異様に強い魔物の原因に決まってるからだろ」
「ッ!?」
その言葉に炎ではなくミイナが驚いている。
炎は、ただ黙っている。
「国民を元気付けるために、その女は歌を歌っているが…それが感動したりして元気付けるなどの幼稚な物ではなく、本当に存在する精神的な治癒能力だ。
国民は歌を聞いて元気付いた気がするというが…それは不安や怒りなどの負の感情が歌によって吸い取られているだけ、だから自然とやる気がわいてくる。
…だが感情は、それほど自覚できるものではない。
だから、元気付いた〝気がする"で終わる。
自分達の感情が、その女の能力のせいで自分達の国を壊しているのに気づかない」
「それは、どういう…?」
ミイナが、里稲に問う。
「景山の精霊が、この国に精霊が居ないと言っていた。
それも当然だろう……その能力で吸い取った負の感情は精霊に押し付けられ、魔物と化しているのだから。
異様に強いのは当たり前だ…精霊が魔物になったのだから通常の魔物より強力だろう」
ミイナは徹夜たちが最初に言った世界の『時の巫女』カイラのように、能力を持っている特別に存在なのだろう。
「私が今回出したクリア条件はさっき言ったはずだ。
魔物の全滅と魔物が現れないようにすること…だから、その女を殺すわけだ」
「もっと違う方法があるだろ…」
「これが確実な方法だ。
…それよりも、そろそろ来るころだ」
「…あ?」
その言葉と共に、ミイナと炎の足元が爆発した。
…それは正しく言うと爆発したのではなく、何かが勢いよく飛び出し爆発したように感じたのだ。
「…っぶね」
炎はミイナを確保し、サラの上に乗っていた。
サラは飛んでおり、その上に炎と一緒に乗っているミイナの足の付いていた鎖は炎が無理やり断ち切ったらしい。
その地面から飛び出したのは、黒く大きな丸い形の体に巨大な口を持っていて、上から見ると花のように細かい何かが360度伸びている。
そのサイズはそれこそ、徹夜達が居るであろう王都よりも少し小さいだけで…異様なほど大きい。
炎は、その魔物の異様な大きさではなく、花のように周りに飛び出している何かを見ていた。
「くそ、古里の言っていた魔物の全滅は…アレを倒せばできるわけか……。
…てっきり一匹一匹倒していく面倒なことでもするかと思ったんだけどなぁ」
黒い体から360度飛び出している何か。
その先には、砂魚が生えていた。
その一つ一つが生き物のように動き、うざったい声で鳴いている。
砂魚の生えたモノは数百と、異様に多く……中心にある黒い体を潰せば周りのも殺せそうだ。
数日前に里稲が殺した砂魚の尾にはちぎれたような跡があったが…それは、死んだ砂魚を不要と認識し本体が捨てたからなのだろう。
「まぁ、でかいだけだろうな…」
炎が呟くと同時に、魔物の巨体の隣に魔物と比べればさすがに小さく見えるが、巨大な木が生え…その木からツルがいくつも伸び砂魚の生えた何かにまきついていく。
その木は1つだけではなく、いくつも生えていきツルが巻きついていく。
そして、そのツルが巻きついていたものを引き抜いた。
生々しい音共に引き抜かれ、先のほうの砂魚が悲鳴をあげ絶命し始める。
「…あっけないな」
炎は、この乾いた砂の中に何年も潜んでいたであろう巨大な魔物の姿を見ながらそんな事を呟いた。
それと同時にサラが降下し始め、口の奥から熱がもれ始める。
「里稲ごと殺れ…サラ!!」
里稲が居るであろう場所と自分達の間に巨大な魔物を入れて、熱線を放つ。
その攻撃は魔物の黒い体を貫き、里稲が居た場所も貫いた。
「チッ…避けたか」
炎はさっきので死んだであろう魔物の姿を確認することはなく、自分が今許せない里稲を殺すために周りを見回している。
その後ろに居るミイナは、この状況に反応できずにボケッとしているが…気にしないでおこう。
空を巨大な竜に乗りながら飛んでいた炎だったが、下からのびて来たツルに竜が巻き取られた。
そのツルに強く引っ張られ、バランスを崩し落ちていく。
「…ッ!!」
ミイナを抱えて、自ら竜から飛び降りる炎。
「サラ、巨木に近づいて爆破だ!!」
炎のその言葉と共に竜の巨体が爆発し、巻きついていたツルの元である巨木を竜の器ごと吹き飛ばす。
炎は地面に着地すると同時に5人乗れる程度の竜をつくり出し、それにミイナを乗せて飛ばす。
ソレと共に、さっきの爆発で巻き上がっている砂煙の中から里稲が飛び出してきた。
「シッ!!」
「…ッ!?」
里稲が振り下ろしたナイフを、いつの間にか手に装着していたガンドレッドで受け止めた。
里稲から後ろに下がって距離をとると、炎は里稲に向かって小さな竜を投げる。
「爆破!!」
炎の、その声とともにその小さな竜が爆発した。
だが、手応えはない。
「ちくしょ…こっちの攻撃を上手く避けやがってッ!!」
炎の足元からはミイナを避難させるために空を飛んでいるモノと同じぐらいの竜を作り出す。
その竜の喉元から熱がもれ始め、炎と竜の正面からは里稲が飛び出してくる。
「…本当にウザイ男だ」
その声と共に、竜と炎が周りから生えてきたツルに拘束されるが竜はソレを気にせずに熱線を放とうとする。
里稲は手に持ったナイフの切っ先を炎の喉へと目掛けて構え、そのナイフを突きだした。
その二人を地面から飛び出したひも状の闇が拘束し、飛び出してきた奈菜が大剣で竜を砕く。
そして、炎を拘束していたツルが切り裂かれ、炎の後ろには剣を持った美月が居た。
「「…ッ!?」」
いきなり現れた三人に、驚く二人。
「いや~、暇潰しの興味本位だったが、炎への尾行をしておいて良かった。
……まぁ、途中で寄り道してたから闇で追ってたんだけどな」
徹夜が、そんな事をいいながら着地する。
その手にはミイナが抱えられており、空を飛んでいたはずの火竜が消えていることに炎が気づいた。
「悪いけど、急いでたから壊させてもらったからな」
それに対して徹夜は一言というと、ミイナを地面に下ろす。
炎が何かを言おうとするのは無視して、徹夜は口を開く。
「……ただ要点だけ話せ。
もう話を聞くのも色々と面倒だ…」
徹夜にしては珍しくイライラとしたオーラを異様に出しながら、そんな事を言った。
その後は、里稲の言葉を聞き奈菜が能力を抑えるための専用の魔道具を作ることになった。
これで能力であるらしい人を元気にさせる歌は、ただの綺麗な声になったわけだ。
能力は関係なく、本当にただ元気付けるための歌になった。
そして、この環境の事だが。
精霊は自分達に害を与えるものから逃れる習性があり、ミイナの能力も無くなった…まぁ、ちゃんと言えば押さえ込んでいるだけだが、精霊に害を与える物がなくなったので自然とよってくることになるだろう。
…クロやフレとイムが言うには、ね。
そして最後に炎と里稲の戦いに巻き込まれてアッサリ死んだ大きな魔物のことなのだが。
あれは魔物になった精霊たちの集合体である。
精霊でも相当強力な物が、中心の巨大な口を持った黒いモノへと変わり、それに力の弱い精霊たちがくっついたのが砂魚が先っぽに生えたモノだ。
力の弱い精霊は負の感情を押し付けられ魔物と化したが、さすがに余計なものを入れられては不安定になり消滅への道へをたどる。
だが、もともと強力な精霊であったモノに取り付くことで、長い間でも生き残ることに成功したわけだ。
魔物達がミイナを狙うのは、単に自分達がこんな姿になった原因に恨みがあったからだろう。
理性などの物は存在しないのだろうが、本能的に分かるのかもしれない。
そして、次の日に徹夜達は元の世界に戻ることとなった。
─ ─
だが、その前に…ミイナ達が居た世界。
ミイナや徹夜達がいる王都から相当離れている場所。
……そこに自分で造った竜に乗り、空から降りてきた炎がいた。
「……」
特に何も言わずに周りを見回す。
「無駄に頑張って居ったのぅ…『火竜』」
「…なんだ、居たのか」
突然の声に炎は表情を変えることなく、返答する。
炎の後ろには、いつの間にか老人が立っており…そいつは堕勇を纏めている老人、グリモアである。
老人と炎の間にはメイド服を着ている少女、明が立っており、その手にはチェーンソーが握られている。
「…いつも思うが、そのチェーンソーはどこにしまっている?」
「メイドは青い狸の持っている不思議ポケットの一つや二つ、持っているのは当然の事です」
「……」
炎は明の言葉を無視して老人のほうを見る。
「いつも思わせられるが…お主は演技が上手じゃのう。
好きでもない相手に好きと言い撃沈する…人の生死など、どうでもよいのに大切そうに守ろうとする。
記憶を頼りに失ったものを求め続ける空っぽの人形は……いつまで他の勇者達を騙し続けられるか楽しみじゃ」
撃沈するのは決定事項か。
「うるさい、黙れ…俺をわざわざ呼びつけたんだ。
ぱっぱと用件を言え…クソ爺」
炎は不機嫌そうに…だが顔は無表情のまま、呟くようにして言った。
うん、今回は里稲も炎もどちらにも色々とありますね。
あえて言えば里稲は全て助ける!みたいな甘い正義ではなく1つを犠牲にして他を助ける、というまだ現実味のあるほうです。
里稲が人を助けるためにソレを行っているかはわかりませんが。
誤字・脱字があれば御報告宜しくお願いします。