50話 世界詳細
─ ★ ─ は、普段なら区切る所。
これは、俺が炎を投げた後である。
馬車は遠くで見ていたから分からなかったが、それなりに広く…王族が使っているのに可笑しくないくらいの大きく、とても豪華な内装だった。
普通、王族の馬車といったら騎士などが守っているはずだが、何故馬車がそのまま襲われていたのか…なのだが、どうやら砂を潜って迫ってきていた、あの魔物に襲われ、全滅またははぐれたらしい。
「私の名前はミイナと言います。
この度はありがとうございます」
その少女の言葉に奈菜がテキトーに返答してた後に、炎が喋った。
「いや~、ちょっと少しばかり色々と理由があって、ここ辺りの状況が分からないんだけど教えてくれないかな?」
なんだか、目をキラキラさせて完全に美少女に会えて嬉しそうな感じである。
やっぱりコイツ…なんというか、言葉があってるかどうかわからんけどもチャラ男(?)だわ~。
「できたら、この国だけじゃなく全体的に」
これは奈菜である。
なんか人多いし、俺喋らなくていいや。
他の人が質問してくれるから、さっきから美月もだんまりだし。
「…? 状況ですか?」
「うん」
これ、要ね。
俺も美月もマジでだんまり、というか…なんかもう疲れてきたわ。
やばい、17歳で歳かもね…。
「ここ辺りを知らないという事は、今いるこの国が全体的にわからないんですか?」
「うん、お願い」
菜奈。
「我が国土の大体が砂漠なのですが、十数年前から異様に強い魔物が現れ始め、それと同時に私の国は緑の豊かな国だったのですが、何故か木が枯れ…砂漠となって行ったのです」
ふむ…その魔物が何か関係ありそうな…感じ。
ちなみに…
「……」←俺
「………」←美月
D A N M A R I(だんまり)
「…なんかやること無いよな~」
「うん」
そんな俺達は端のほうで二人で誰にも聞こえないような声とアイコンタクトで会話し始める。
ハッキリ言ってしまえば…俺達も会話聞いとけ、っていう事になるんだが…他の人が聞いとけば十分でしょ。
「それがさ~、なんか俺の義妹殿である栞が、お前の弟さんのフユが…なんチャラかんチャラってうるさいんだよ」
「あ~…冬日もなんか転校してきて、あまり時間経ってないから色々とオロオロしていて、つい助けたくなるって言ってたよ」
「ムゥ…仲が良いですな」
「仲が良いの、かな…?」
良いのだよ。
「まぁ、他の中学とかを見る限り弁当を持参しなくちゃ行けないのも含めて、珍しいからな~」
ちなみに一般的な中学校は給食があるものだと思っているので、本当にこれが珍しいかどうかは分からないが、俺的(または作者的)には珍しいという事である。
正直、俺の常識なんて信用できないんだけどね。
「ま、そこは中学生の二人に好きなようにやらせて、俺たちは関係ないということで良いだろ」
「………ただ面倒だから逃げた訳じゃなく?」
「そんなわけないだろ~」
マジで、そんなわけではない……たぶん。
うん、そんなわけではないのだ。
まぁ、とりあえずは二人で、そんな事を話しており、奈菜がチラリとこちらを見たりもしたが、とりあえずは何も言われなかったので問題はない。
さすがに奈菜もこれ以上会話に人数が入ると、ただでさえまとまらないのに重要な部分を聞き逃す場合もある。
だから、何も言わないのだ。
まぁ、少しばかり話を聞いて特に気になることは無かった件について。
うぅむ…なんだろうねぇ。
この途中で終わって中途半端な感じ……嫌だわ~。
「……ご主人」
「む?」
そんな俺の疑問の声。
俺の目の前に、唐突に現れた黒い髪の少女……つまりクロである。
久しぶりの登場だ。
他の面々は奈菜と美月は知っているので得には何も言わず、里稲はチラリと見た後にすぐに興味をなくしたらしくすぐに目をそらした。
炎は…美少女に夢中ですな。
要は………寝てるッ!? アイドルとかの仕事で色々とお疲れですか。
瑞穂と和馬は、俺に少し尋ねてきたわけだが、普通に答えて終わった。
…で、例のお姫様のミイナは、炎に話しかけられて、こちらをチラチラと見ることぐらいしかできないらしい。
「どした? クロ」
「…むぅ、いつも通りの出番だなんだかんだについては今日は言うまい」
そんな喋り方だっけ?
久しぶりだから、分からないわ。
「精霊が居ない……ノジャ」
「出番増やしたいからって変な語尾にしなくて良いから、完全に無理してるの分かるから。
精霊なんて、そんな居るもんじゃないだろ……実質俺の場合は会った時があるのは、双子とお前ぐらいだけだし…」
美月は精霊での上位の存在に会いに言ったときがあったような、無いような。
そのときは俺、別行動でエンジョィしてたから正直分からない。
「精霊というものは、私達のように武器などのモノに憑く者もいるが、本来精霊は人に見えない姿で自然の中に一体として存在している。
若い木を育て大きくし、水を綺麗に、そしてその場を美しくするのが精霊……人の手が加わっていない場所をよりよくする存在が精霊というもの」
「…ふむ」
「…どこにでも居る存在のはずが、どこにも存在しない。
だから、木が枯れて行く……」
おお、これで謎解明(?)
「ふむ…」
異様に悲しそうにしているクロの頭を撫でる。
「精霊が…居ない?」
ミイナがポツリと呟く。
「いや、でも……そんな」
そんな感じで何かを考え始めるミイナ。
─ ★ ─
これは、あれから一日後である。
目的の国の王都にも着き、城の近くの宿に泊まることになった。
ミイナの親である王様などは数日前に亡くなっており、その事でミイナは戻ってきたという事である。
城に泊まるようにも言われたが、それだと異様に動き辛くなる。
それを考えて城に入れるようにしてもらい、自分達が出来るだけ動きやすいように、城に泊まることはなく安い宿に泊まることにしたのだ。
「さて…どうなるかな~?」
奈菜の言葉。
俺と美月、奈菜…あとは瑞穂などが食堂に集まっており、集まっていない奴もいるが…まぁ、別に良いだろう。
「徹夜くん、これを王都の周りに仕掛けといてよ…」
奈菜が杭の様な物を40ぐらいの数がまとまっているものを投げてよこす。
「それは堕勇だけに反応して知らせる魔法具だからさ、周りに仕掛けておけば相手が来たことはわかると思う」
「…了解」
俺は小さく闇を展開させ、その闇の中に杭を入れる。
そして、その闇からいくつもの闇が分裂してありのような形に変わり宿の外へと出て行く。
宿の外に出れば鳥となって、空に飛んでいくだろう。
本当に闇って便利だわ。
そして、10分くらい経ったのだが……。
「ん…?」
「どうしたの? 徹夜」
俺の疑問の声に美月が尋ねてきた。
「杭を刺すために飛ばしていた闇を通じて色々と見えたりもするんだが、王都の外が……騒がしいな」
別に中二病を患っているわけではない。
「……?」
「砂漠の砂を舞い上げながら進んでいる何かの魔物が数十匹、空を飛んでいる変な魔物が数十匹、慌てて迎撃準備をしている兵士が数百人。
メイドが一人」
「最後の一番可笑しいでしょ……」
「おい、徹夜…最後のメイドだって? ……あの人か?」
和馬、あの人だから食いつくのか。
「たぶん、な…。
さすがに闇で出来た鳥40匹に意識をまわしてたから方角とかまではわからないな」
「…そうか」
和馬がそれに返事をした。
「じゃあ、メイド討伐…あとはおまけに魔物一掃する形で行こうか。
あのメイドをほっとくと色々と危ないから……部屋にいる里稲にはボクが知らせるよ」
奈菜が、そんな事を言う。
「徹夜、行こ~」
「何故に美月と……?」
「え~、別に良いじゃん」
ま、良いでしょ……。
俺と美月、和馬、瑞穂、要、炎、そして奈菜が…それぞれが勝手に違う方向に出て行った。
一話よりも多めに書きました普通に区切ったら、また2000文字ですね。
今回は3000文字です。