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1-7.夜の図書室にて



ルナは、レイの冷たい言葉に傷つきながらも、エレオノーラ公爵夫人の情報を集めるため、一人で行動していた。授業の合間を縫っては、学院の庭園に足を運んだ。


しかし、公爵夫人の姿はどこにもない。ルナが手入れは続けていたものの、庭園の花々はどこか元気がなく見えた。公爵夫人のことを知っていそうな貴族の学生にも話を聞いてみたが、最近の彼女の不可解な言動についていくつかの情報を得られただけで、なぜ彼女が変わってしまったのか、その確信に触れる情報に出会うことはできなかった。


そんな日の夜、ルナは学院の図書室の片隅で、古い文献を読んでいた。公爵夫人がなぜこのような行動に出ているのか、その原因を探るためだ。すると、彼女の魔力探知が、よく知る人物の魔力を捉えた。


「……レイ君?」


図書室の隅で、いつも完璧で孤高な黒髪の天才が、珍しく険しい表情で文献を漁っていた。彼の探している本は、魔力による洗脳や、精神操作に関するものだった。その瞬間、ルナは確信した。レイもまた、母親の異変に気づいているのだと。そして、彼は誰にも頼らず、一人でこの問題に立ち向かおうとしているのだと。


「レイ君も、お母様のことが心配なんだね」

ルナが、そっと声をかけた。レイは、一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに冷徹な顔に戻った。


「余計な詮索をするなと言ったはずだ。これは、俺の家だけの問題だ」


そう言い放ち、レイはルナに背を向けた。しかし、その背中は、以前よりもずっと孤独で、苦悩に満ちているように見えた。


ルナを拒絶したように見えたレイだったが、しばらくすると目線は本に向いたまま静かに語り始めた。


「確かに…。ここ数日、母の様子がおかしいんだ。秘書からの報告でも支離滅裂な行動を取っていることはわかっていた。何より、お前も感じていたように、話をしているとまるで別人だった」


普段とは異なり、弱々しく語るレイの様子に、ルナは心配した。彼はかなり精神的に参っているようだ。


「この文献によると、古代魔法の一つに洗脳魔法があるらしい。お前が感じた邪悪な魔力と関連があるのかもしれない。

…その時感じた邪悪な魔力はどんなものだった?」


あれだけルナは関係ないと言い放っていたレイが、ルナの情報に縋っている。その姿にレイにとってももう後がない状況だと、ルナは理解した。


「分からない。あの時感じたのは一瞬だったから……。だから……もう一度エレオノーラ様の前に立って、詳しく魔力探知をしたい。


だからレイ君、エレオノーラ様と会う機会を作ってくれないかな?」


レイは少し考えると、口を開いた。


「母の予定では、明日の早朝に学院長との約束があった。だから、それが終わる頃に学院長室の前で待ち伏せすれば、会えるはずだ。」

そう告げ、レイとルナは明朝、学院長室前で落ち合う約束を交わした。

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