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3-4.沈黙の包囲網



結界の収縮は進み、その半径は開始時の約半分。かつて天球の庭(スフィア・ガーデン)の各地に点在していた魔力反応は、次第に数を減らしていた。


『――残り13デュオ。繰り返す、残り13デュオ!』


魔導拡声器のアナウンスが響くなか、紫色の壁は容赦なく収縮を続け、安全エリアは天球の庭(スフィア・ガーデン)中央の開けた平原付近へと狭まっていた。レイとルナは、エリアの境界線に近い林の影に身を潜め、次なる標的を探っていた。だが、ルナの顔から突如として血の気が引く。


「……レイ君、待って。おかしいよ」


ルナがアルカナマップを指差す。その指は微かに震えていた。


「結界の収縮の中心点……広い平原に、8組のデュオが固まってる。戦っている様子もないし、まるでお互いを守り合うように、円陣を組んで静止している…」


レイは目を細め、ルナが投影したマップを注視した。本来なら、残り少ない枠を争って潰し合うはずの最終局面。そこに現れたのは、不自然な『団結』の光景だった。


「……なるほどな。そういうことか。姑息な奴らめ。」


レイが吐き捨てるように言った。


「二次予選の通過枠は8デュオ。つまり、あそこに集まった16人は、互いに攻撃しないという不可侵条約を結んだわけだ。自分たちだけで上位8枠を独占し、残りの5組……俺たちを含めた『イレギュラー』を確実に排除するために」


「そんな……。でも、それじゃあ公平な試験にならないんじゃ……。」


「ルールでは『協力してはならない』とは明言されていなかった。狡猾だが、生き残るための最善策だ。おそらく、音頭を取ったのは……おそらくユリアス・グロリアスだろうな。序盤はユリアス・エミリアペアの他のデュオ撃破のアナウンスがあったが後半は一切聞いていない。」


レイは眉間に皺を寄せ、状況を分析する。あの円陣へ無策に突っ込めばどうなるか。レイの速度なら、一組を奇襲して脱落させることは容易だろう。だが、その瞬間に残りの7組、14人分の魔法が四方八方から自分達を目掛けて降り注ぐことになる。


「俺一人の身を守るならまだしも、14人もの同時攻撃から、お前まで守り切る保証はない。一撃でも貰えば終わりというこのルールで、あそこに飛び込むのは自殺行為だ……。」


とはいえ、あの8組以外のデュオもフィールドに残っている現状、ルナを離れた場所で待機させる事もできない。


絶対的な個の武力を持つレイを封じ込めるために、ユリアスが選んだのは『連携による抑止』だった。平原の中央で悠然と構える8組の円陣。彼らは動く必要さえない。ただ結界が収縮し、レイたちがエリアの端へ追い詰められ、姿を現さざるを得なくなるのを待っているのだ。


「……ここにきて、危険な真似はできない。ルナ、打開策を探るぞ。あいつらの策に、わずかでも綻びがあるはずだ。」


だが、レイの言葉とは裏腹に、紫色の結界壁は刻一刻と彼らの背後に迫っていた。逃げ場を失い、打つ手も封じられた二人に、最大の危機が訪れようとしていた。



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