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3-3.民の連携



天球の庭(スフィア・ガーデン)の中央にそびえ立つ、険しい岩山の頂。 そこには、レイやルナとは対照的な戦術を展開する二人の姿があった。


「――風迅(ふうじん)極光きょっこう

レーナがアークイラを極限まで引き絞り、風の魔力を凝縮した矢を放つ。矢は数百メートル先の平原を移動していたデュオを捉え、そのバッジを音もなく粉砕した。


「……これで2組目。狙撃ポイントが割れる前に、一度場所を移動したほうが良さそうね。」


レーナがとった戦法は、地形の利を最大限に活かした「超長距離狙撃」だった。岩陰に潜み、野鳥のような鋭い眼差しで周囲を監視していたカイが、拳を突き出す。


「よっしゃ、命中! 流石、レーナちゃん、最高だぜ! 次の獲物は……っと、アナウンスだ。」


その時、演習場全体に魔導拡声器によるアナウンスが鳴り響く。


『―― 残り18デュオ!最も多くのデュオを脱落させているのははレイ・アルフリード、ルナ・フローレット・ペア。通算8組のリミット・シールドを破壊!』


「おいおい……レイの野郎、あっちはとんでもねえペースで狩りまくってんな。俺らがじっくり狙いを定めてる間に、会場の4分の1をあいつらだけで食っちまってんぞ…。」


カイが冷や汗を拭いながら苦笑いする。自分たちの予想を超えて脱落者が増えており、サバイバルは予期せぬ速度で加速していた。他のデュオも、この「一年生による蹂躙」に、驚愕を隠せずにいた。


* *


一方、そのアナウンスを、深い静寂の中で聞いていた男がいる。

白銀の髪をなびかせ、優雅に森を歩く男――生徒会長ユリアス・グロリアス。 彼の隣には、デュオパートナーである三年のエミリア・フェンレイが、周囲を警戒しながら寄り添っていた。


「……レイ・アルフリード。驚異的な速度だな。」


ユリアスは足を止め、顎に手を当てて思考を巡らせる。


「エミリア、今の放送を聞いていたか? レイのペアは、まるで敵がどこに隠れているかを知り尽くしているかのような動きだ。一度も迷いがない。」


「この複雑な地形の中、おそらく最短距離で会敵している。……まさか、ルナという娘の『魔力探知』?」


「おそらくそうだろうね。その噂に聞く探知能力があれば、この広大な天球の庭(スフィア・ガーデン)も彼らにとって全体を俯瞰できるチェスの盤面に等しいのかもしれない。

……正面からぶつかるのは、僕たちにとっても得策ではないね。」


ユリアスは冷静だった。レイの実力を認め、さらにルナの補助能力を掛け合わせた時の脅威を正確に見抜いていた。


すると、前方の茂みが揺れる。そこから、警戒心もあらわに武器を構えた二年生のデュオが現れた。

ユリアスは杖を構えたエミリアを片手で制し、不敵な笑みを浮かべて敵デュオに呼びかけた。


「待て。君たちをここで落とすのは簡単だが、一つ、面白い提案がある。」


突然の呼びかけに、その二年生デュオは戸惑いながら足を止める。


「僕たちと協力して、3次予選への切符を掴まないか?」


「……協力?正直、意図が見えないです。生徒会長、あなた程の御方が俺たちみたいな雑兵と組んでメリットなんかあるんですか?」


「…今、この天球の庭(スフィア・ガーデン)には手に負えない『怪物』が解き放たれている。野放しにすれば、君たちもすぐに餌食になるだろう。」


ユリアスは、黄金の瞳に冷徹な知略を宿し、続けた。


「これから複数のデュオで連携する。……『王』を堕とすには、民同士の協力が必要だからな。」


絶対的な強者による、弱者を巻き込んだ「レイ・ルナ対策」。


ユリアスの狡猾な策が、予選の空気を一変させようとしていた。

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