2-14.救済の一閃
「見つけたあああ!」
その報告の声と共に、カイ・ランバートから特大の炎魔法が放たれる。膨大な魔力量の炎の奔流がコア・ブレードを呑み込み、その巨体を強引に吹き飛ばす。
しかし、その上級ノクシアの鱗は並大抵の破壊では揺るがない。煙の中から現れたコア・ブレードは、全身を煤けさせながらも、即座に立ち上がり凄まじい威圧感で咆哮した。
「うわ効いてない!?あいつ硬えな〜。」
「下がってろ!」
レイが前に出る。彼は漆黒の剣に膨大な魔力を収束させ、一気に放出した。
「――疾雷・放電」
激しい雷鳴と共に、高密度の雷撃がコア・ブレードを直撃する。凄まじい衝撃に周囲の樹木までも焦げ付くが、土煙の中から現れたコア・ブレードは、依然として無傷だった。
「っ……レイ君の魔法が、全然効いてない……?」
ルナの震える声が響く。最強と信じていたレイの一撃ですら通じない現実に、その場の全員が絶望に飲み込まれそうになった。
コア・ブレードはその巨躯を震わせ、今度はこちらを消し去るべく大きく口を開けた。その奥には、不気味なほど高密度な魔力が集積されていくのが見て取れた。
「まずい、ブレスが来るぞ……!」
カイが叫ぶ。
その時、絶望に震えていたはずのセシルが、必死に声を張り上げた。
「レーナ! あの化け物の関節を狙って! 鱗の薄いところなら、あなたの矢が通るはずですわ!」
その叫びに応えるように、銀色の閃光が空を裂いた。
「……言われなくても!」
レーナが弓型アストラル『アークイラ』を引き絞り、その風属性魔法の極致を解き放つ。
「――風迅・穿天牙!」
旋回する風を纏った矢が、ブレスの反動でわずかに露出したコア・ブレードの関節部を寸分違わず射抜いた。
ギャアアッ
体勢を崩し、コア・ブレードのブレスが不発に終わる。その一瞬の空白を、レイは逃さなかった。
彼は雷の魔力を脚部に収束させ、爆発的な加速度を得る魔法――レヴィン・アクセルを発動する。
視認できない速度で接近したレイは、大きく開かれたコア・ブレードの口内、剥き出しの急所へと漆黒の剣を突き立てた。
「――飛電一閃」
剣から直接、コアの内部へと雷が流し込まれる。どれほど強固な外殻を誇ろうとも、内側からの破壊には抗えない。雷が内側からその身を焼き尽くし、上級種ノクシアといえども絶叫を上げることすら許されず、内側から爆ぜるようにして崩れ落ちた。
静寂が戻った森の中で、レイはゆっくりと剣を引き抜き、ルナたちの元へ歩み寄った。
「……無事か?」
冷徹な天才の、僅かに安堵を含んだ声。 ルナとセシルは、極限の緊張からようやく解放され、堪えていた涙を溢れさせるのだった。




