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2-13.黎明の連帯



翌朝。薄暗い洞穴の中で目を覚ましたフィンは、目の前に最愛の少女、ルナがいることに驚愕した。周囲の状況から一夜の出来事を察した彼は、すぐに命を救われたことへの感謝を伝えた。ルナもセシルも、外を警戒しながら夜通しフィンを見守っていたため、その顔には疲労が色濃く刻まれていた。


「ルナさん……本当に、ありがとう。あなたが来てくれなかったら、僕は今頃……」


フィンは震える声で感謝を絞り出した。ルナは力なく、けれど温かく微笑んで


「……良かった、フィン君。」


と安堵の息を漏らした。


フィンは次に、傍らにいたセシルへと視線を向けた。

「セシルさんも……ありがとうございます。」


セシルは気まずそうに顔を背け、ぶっきらぼうに答えた。


「……お礼はルナさんだけに言ってちょうだい。わたくしは何もしていませんわ。昨日は、あなたのおかげで助かったのですから、むしろお礼を言わなければならないのは、わたくしの方ですわ。」


フィンは目を見開いた。セシルの纏う雰囲気が、以前とは比べ物にならないほど柔らかく感じられたからだ。ルナとセシルの間に流れる空気も、かつての憎悪に満ちた冷たさではない。死線を共にした二人にしか分からない、静かな絆がそこには確かに存在していた。


しかし、その平穏は唐突に破られた。ルナが洞穴の入り口を鋭く見据える。


「……っ、強大なノクシアの気配がこっちに向かってる!?」


朝になり霧が晴れたことで、彼らの居場所が特定されたのか、獲物を見つけた飢えた獣のように、その上級ノクシア、コア・ブレードは一直線にこちらへ向かってきている。


「ここから逃げるよ!」


ルナの叫びに導かれ、三人は洞穴から飛び出した。

森の中を必死に移動するが、フィンの傷は癒えておらず、歩くのが精一杯だった。


「ルナさん、セシルさん……僕のせいでスピードが出ない。お願いだ、僕を置いていってくれ!」


フィンは絶望的な表情で訴えたが、セシルがそれを一喝した。


「ふざけないでちょうだい! 昨日、ルナさんが必死になって繋いでくれた命ですわよ!」


ルナとセシルはフィンを両脇から支え、泥を噛む思いで移動を続ける。だが、コア・ブレードの俊敏さは三人の歩みを容易に上回った。


ヴォオオオオァ!


背後から迫る咆哮。セシルは昨日のトラウマから錯乱し、杖型のアストラルを振りかざして水魔法を乱射した。しかし、コア・ブレードの硬質な鱗はそのすべてを冷酷に跳ね返した。そして、その巨大な鎌を頭上に振りかぶり、セシルを真っ二つに裂こうと振り下ろす。


「――っ!」


セシルは絶叫し、思わず目を閉じた。だが、いつまで経っても衝撃は来ない。

恐る恐る目を開けると、そこにはルナの背中があった。 ルナは光属性の防御魔法を展開し、あのコア・ブレードの暴威を真っ向から受け止めていたのだ。


(あの強力な攻撃を防ぐなんて……。これが、落ちこぼれと呼ばれていたルナさんなの……!?)


セシルは驚愕した。そして、自分を囮にして逃げた令嬢たちとは違い、目の前の少女はボロボロになりながらも、必死になって自分を守っている。その献身に、胸が締め付けられた。


ルナのバリアにヒビが入り、砕けそうになる。


「二人だけでも、先に逃げて!」


ルナの悲痛な叫びに、今度はセシルが再び一喝した。


「そんなこと、できるわけありませんわ!」


バリアが砕け散り、凄まじい衝撃波が広がる。コア・ブレードが次の一撃を繰り出す一瞬の隙――。 セシルはその瞬間を逃さなかった。彼女は恐怖を押し殺し、コア・ブレードの関節……鱗の薄い隙間を狙って魔法を放った。


狙いは的中し、コア・ブレードが大きくよろめいた。


「セシルさん、ありがとう!」


ルナは即座に態勢を立て直し、再び防壁を展開する。



ーーその時、ルナの広域魔力探知が、待ち望んでいた三つの魔力を捉えた。


(……レイ君たちだ!)


ルナの瞳に、希望の光が宿る。



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