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2-10.狂った歯車



レイたちが他を寄せ付けない速さでスコアを稼いでいるその裏で、セシルとフィンのチームは地獄の淵に立たされていた。


当初、彼らの周囲に出現したノクシアは、鳥型の『ラトルクロウ』やイタチ型の『ヴィーゼログ』など、低級な個体ばかりだった。


「順調ですわ! さあ、ゲートを壊せば大量に加算されますのよ。どんどん稼ぎますわよ!」


セシルは高らかに笑い、水魔法でゲートを破壊しては順調に討伐数を伸ばしていた。一次予選突破は確実――そう確信していた。 だが、森の深部、深い霧の先に現れた「ゲート」からその悪魔が這い出した瞬間、すべての歯車が狂い始めた。


「……何、ですの……あれ」


ゲートから現れたのは、教本でしか見たことのない上級ノクシア――『コア・ブレード』だった。 リザードマンのような強靭な四肢に、人間より二回りは大きな巨体。最大の特徴は、両腕が鋭利で巨大な「鎌」と化していることだ。動きは俊敏で、その硬質な鱗はセシルたちの魔法をことごとく弾き返した。


巨大な鎌から繰り出される強力な斬撃の前では、防御魔法など紙細工も同然だった。


「……セシルさん、危ない!」


皆を庇うように前に出たフィンが、渾身の障壁を展開する。しかし、コア・ブレードの鎌はその魔力壁を無慈悲に貫き、フィンの胴体を深く切り裂いた。


「かはっ……!」


鮮血が舞う。フィンは致命的なダメージを負いながらも、死に物狂いの気力でコア・ブレードから距離を取った。


「なんなのよ、あいつ……。一次予選でこんな化け物が出るなんて、聞いてませんわ!」


セシルが叫んだ瞬間、彼女はさらに信じがたい光景を目にする。 共闘していたはずの四人の取り巻き令嬢たちが、セシルたちを置き去りにして遥か後方へと撤退していく姿だった。彼女たちは背後の二人を振り返りもせず、


「ごめんなさい、セシル、フィン!どうかご無事で!!」


と言い放ち、逃げ去っていく。


(わたくしを……置いていきますの……?)


裏切りの衝撃に足元がつき、セシルはその場に崩れ落ちそうになる。


「何を……してるのですか、セシルさん!」


フィンが血に染まった腕でセシルの手を強く引き、強引に走り出した。


* *


それから、どれほどの時間が経っただろうか。 遠くで一次予選の終了を告げる鐘の音が響いたが、霧の深いこの場所には、救助の気配はおろか、他の人間の気配も一切なかった。深い霧を味方につけ、なんとか追撃を振り切った二人は、ようやく森の奥の小さな洞穴へと逃げ込んだ。


しかし、洞穴へ辿り着いた瞬間、フィンは糸が切れたように地面へ倒れ伏した。


「フィン? フィン、しっかりなさい!」


呼びかけるセシルの手も、返り血で赤く染まる。フィンの傷はあまりに深く、このままでは命を落とすことは明白だった。 予選は終わったはずなのに、誰も助けに来ない。自分たちは、この広大な森に、あの化け物と共に取り残されてしまったのだ。


もし今、あのコア・ブレードに見つかれば、間違いなく死ぬ。セシルは暗い洞穴の隅で、己の無力さと、すぐ隣にまで迫る死の気配にガタガタと身を震わせた。


「誰か……助けて……」


プライドも、令嬢としての矜持も、すべてが恐怖に塗りつぶされた、掠れた叫びだった。



仕事が忙しく更新頻度落ちますが、細々と執筆は続けていきます…

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