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2-5.廃都の決戦



掃討も一段落し、四人は中央の広場で集合する。


「いやあ、ルナちゃんの魔力探知はやっぱりすげえよ!あんなに正確に場所がわかると、確かに討伐効率が段違いだな。俺のイグニート・レッカーもうれしそうだ。」


カイが汗を拭いながら笑う。しかしその時、ルナの魔力探知が大きな気配を察知し、彼女の表情が曇った。ルナは廃都の奥の、静まり返った大聖堂を見つめた。


「……気を付けて。まだ大きな個体が残っているみたい」


ルナの言葉のその直後、大聖堂の壁を突き破り、巨大な甲虫型のノクシア、シェル・バスターが姿を現した。その全身は、並大抵の攻撃では傷一つつけられないような強固な外殻に覆われていた。


「ちっ、任務の内容は小型ノクシアの掃討だったんだがな。カイ、お前は右から気を引け。レーナは関節を狙え。トドメは俺が刺す」


レイが指示を出し、三人が一斉に動き出そうとしたその時だった。


シェル・バスターの体内から、無数の小型ノクシア、ジェノ・バスターが放出された。それはシェル・バスターの幼体で、五十センチほどの巨大な蚊のような禍々しい姿をしている。 羽音を響かせ、大量のジェノ・バスターが三人の元へ、そして魔法を使えないはずのルナの元へと、その数を活かして殺到した。


「ルナちゃん!? 何してるんだ、後ろに下がってくれ!」

カイが悲鳴に近い声を上げるが、ルナは一歩前に出ると、左手の人差し指に輝く指輪、ルミナにそっと触れた。 その瞬間、ルナの手のひらに眩い光が集まり始める。


「……大丈夫だよ、白光砕礫ルミナント・バレット!」


ルナが左手を突き出すと、そこから純白の光の礫が放たれた。それはルナの精密な魔力操作によって、空中を舞うジェノ・バスター複数体の核へ正確に吸い込まれていく。 刹那、光に包まれたジェノ・バスターたちが、内側から次々と弾け飛んだ。


カイは口を開けたまま固まり、レーナは信じられないものを見るかのように、その場に立ち尽くしていた。

「……魔法? 今のは、ルナの魔法なの?」


レーナの震える声。魔法が使えないはずの少女が放った、あまりにも洗練された一撃。


「……そうだ。俺の魔力を分け与えている。今のルナは、一人前の魔導士だ。」


レイが誇らしげに、だがどこか独占欲を含んだ声で告げる。カイとレーナは、光の余韻を残すルナの手元を見つめ、言い知れぬ衝撃に打ち震えていた。


「みんな、止まってないで! この虫達を倒さないと!」


ルナの切迫した声に、ようやく二人が我に返る。

「おっといけねえ、あまりにもびっくりしすぎて……!」


「ほんと、そういう大事なことはもっと先に言ってよね……ルナ、レイ!


それにしても数が多いし、気色悪いわね……!」

衝撃を飲み込み、四人は再び武器を構えた。


* *


押し寄せるジェノ・バスターの群れに対し、ルナは左手を強く握りしめる。


「ルミナ、お願い!」


指輪から溢れ出した純白の魔力が収束し、細身の光剣へと姿を変える。ルナはレイから受け継いだ魔力を刃に乗せて、自身に群がる幼体たちを斬り伏せた。


(アストラルの生成まで…。レイの言う通りもう『一人前の魔導士』なのね。)

その様子を横目にレーナが微笑ましい気持ちになる。だが、ルナの懸命な奮闘に負けてはいられないと、すぐに自身の弓を握り直した。


「おらおら、まとめて灰になりな!」


カイが『イグニート・レッカー』を大きく振り抜くと、爆発的な炎が周囲をなめ尽くし、ルナに群がろうとしていたジェノ・バスターたちを焼き払う。


その爆炎を切り裂くように、一条の雷光が走った。


雷魔法を脚部に集中させる魔法「レヴィン・アクセル」により、肉体の限界を超えた速度で戦場を駆けるレイ。瞬きする間に数十体のノクシアを斬り捨てた彼は、その勢いのまま親玉であるシェル・バスターの懐へと飛び込んだ。


「……燃え尽きろ。フレア・ドライブ!」


至近距離から放たれた極大の火柱がシェル・バスターを包み込む。しかし、巨大な甲虫は不気味な咆哮を上げると、その分厚い甲殻で熱線を強引に弾き飛ばした。

「……くっ、これほど硬いとはな!」


反動でわずかに体勢を崩したレイに対し、シェル・バスターはその巨大な脚で地面を叩き、強烈な震動波を放つ。さらにそのまま、戦車の如き巨体でレイを圧殺しようと突進を開始した。レイは即座に切り返し防御体勢に入る。


だが、その瞬間、戦域の空気が一変した。


「……そこよ!」


後方で弓を構えるレーナの瞳が、レイの攻撃によって一瞬だけ露出した、首元の「甲殻の薄い継ぎ目」を捉えていた。 彼女が全魔力を注ぎ込み、極限まで圧縮された風属性の矢が、アークイラから放たれる。それは音を置き去りにし、真空の刃となって大気を削りながら突き進んだ。


「──風迅ふうじん穿天牙せんてんが!」


放たれた一撃は、シェル・バスターの強固な鎧を紙細工のように切り裂き、その深奥にある核を正確に粉砕した。 巨体は断末魔を上げる間もなく内側から弾け飛び、廃都の石畳に霧となって消えていった。

静寂が訪れる。


「……ふぅ。……やったわ」

レーナはアークイラを降ろし、肩で息をしながらその場に膝をついた。 レイは、シェル・バスターが消えた場所を見つめた後、ゆっくりとレーナの方を向き、短く告げた。


「……いい一撃だった。俺だけでは削りきれなかったな。」


その言葉に、レーナは驚いたように目を見開き、それから少しだけ誇らしげに口元を綻ばせた。


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