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1-12.崩れた理性



パーティー会場でルナを見た瞬間、レイは時間が止まったような感覚に襲われた。ルナの容姿が整っていることは知っていた。


だが、そこに立っているのは、純白のドレスを纏った天使のような美少女だった。見惚れてしまい、時間にすれば数秒だったかもしれないが、レイは反応ができなかった。顔に血が集まり、熱くなる感覚があった。


それから母と三人で、ルナの紹介に回ったが、その間もルナから目が離せなかった。ある貴族の男がルナに話しかけ、昔の習わしだと称して手の甲にキスを落とした時には、彼の心臓が激しくざわついた。焦燥感が頭を支配した。


その後、母に促され、ルナとダンスをすることになった。ルナはダンスを踊ったことがないということだったので、教えながら踊ることにした。最初は手こずっていたものの、何度か動きを教えるとルナのダンスはどんどん上達した。


ルナに触れている手が熱かった。顔を直視できなかった。いつも多くの令嬢からダンスを申し込まれ、社交の一環として踊るダンスとは全く違う。こんな気持ちになったのは初めてだった。


ダンスを踊り終えた後、二人でバルコニーに出た。お酒は飲めない年齢なので、二人ともワイングラスにジュースを入れて飲んでいたが、これにはアルコールが入っているのではないかと疑うくらいに、ふわふわとした感覚だった。


バルコニーからは綺麗な白光を放つ満月が見えていた。ふとルナは振り返り「綺麗だね」と微笑みかけた。

その情景、風の音、滾るような自分の体温、心臓の音、そして彼女の姿は、焼きつけられたように、その後何度もレイの脳裏によぎった。


(ルナが好きなんだ。どうしようもなく……。)

自覚してしまった。止めることなどできなかった。たまらなく愛おしかった。デュオを組んで、彼はルナの色々な面を知ってしまった。


落ちこぼれと呼ばれながら、人と違う才能に一生懸命向き合っているところ。健気で純粋なところ。小柄で可愛らしいところ。しかし、純白のドレスを纏えば美しく天使のようであること。


何が大切かを見極め、他人のために行動できる高潔な心を持っていること。様々な部分に触れてしまった。


そのどれもが尊く、愛おしい。自分のものにしたい。そう思ってしまった。


しかし、ふと、デュオ結成当初、彼女に放った言葉が脳裏に浮かぶ。


「『平民の身分でアルフリード公爵家である俺と男女の仲になろうと考えるな!』」


その言葉は形を変え、自分自身に牙を向いた。温かい感情が一変し、心が凍ったように感じた。


美しく優しい月の光のように純白な彼女に伸ばした自分の手は、それに相応しくないほどひどく汚れて見えた。

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