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1-11.天才の動揺



エレオノーラ公爵夫人の一件が終わり、レイとルナは学院での日常を取り戻していた。公爵家への信頼は一時的に失墜したものの、その後のエレオノーラ夫人の献身的な対応、そしてセレスティア学院長が周囲に事情を説明して回ったこともあり、なんとか信頼を取り戻しつつあった。


しかし、エレオノーラに洗脳魔法をかけた犯人、洗脳魔法をかけた方法、その目的については、アルフリード公爵家が全力で調査を続けているものの、依然として何も判明していない状況だった。


ルナとレイの関係も、公爵夫人の一件を境にわずかに変わっていた。


レイは、ルナを以前のように「効率を上げるための道具」としてではなく、母を救ってくれたかけがえのない存在だと感じ始めていた。しかし、その感情の正体は、レイを深く戸惑わせた。


訓練の場。ルナが少しでもつまずきそうになると、レイは無意識に手を伸ばそうとする。

「危ない。平気か?」

しかし、すぐに我に返り、冷徹な声に戻る。


「……無駄な動きをするな。効率が悪い」


レイは、ルナを気遣う自分を必死に隠そうとした。この感情の正体に心当たりがないわけではなかったが、それを自覚してしまうと、すべてが取り返しのつかないことになる予感が、彼の頭を支配していた。


* *


そんなある日、エレオノーラ夫人は、先日のお礼にとアルフリード公爵家が主催するパーティーにルナを招いた。


「そんな、お礼だなんて。あれは私がそうしたかったからしただけなので、気を遣わないでください」

ルナは恐縮したが、夫人は優雅に笑い返す。


「では、パーティーに大切な友人を招くってことでどうかしら?とても普通のことよ」


そう返されてしまい、ルナは押し切られた。ドレスなど服装の心配をしたが、夫人から「全てアルフリード家で準備するから」と、言いくるめられてしまった。


パーティーの当日、ルナはアルフリード公爵家の衣装室で使用人たちにドレスの着付けをさせられていた。ドレスは、純白をベースに深紅の装飾品のアクセントが加えられたものだった。


主張しすぎておらず、ルナのピンク髪と相まって、高貴な中にも可愛らしさが感じられるデザインとなっていた。メイク、髪型、アクセサリーと高そうなものが自分に付けられていくが、これが自分に似合っているのか、ルナは不安を感じていた。


「とてもかわいいわ、ルナ!やっぱり純白のドレスが似合うと思ってたの」


準備が終わった後、姿をみたエレオノーラ夫人が感激する。彼女はブロンドの髪がよく映える水色ドレスを着ており、美しさの中に威厳を感じさせる装いであった。


パーティー会場は、中央に巨大なシャンデリアがある豪勢な広間だった。大勢の貴族たちが談笑し、テーブルには見たこともないような豪華な料理が並べられている。ルナにとって全てが初めてで、その全てが、眩しかった。

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