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第九話 『偽りの公爵、暴かれた真実』──王家の剣が語るもの。

「どうしたセリエス?」  


「はい、実は......」  


 アバレスト公爵に宝珠をみせたところ。 宝珠は偽物だと糾弾されたらしかった。


「そんなことはない! あれはリアベールのものに間違いはないのじゃ!」 


 ディムリアは憤慨している。


「まあ本人もいってるってことは、そのアバレストとやらが嘘をついているってことだな」


「それでその宝珠はどうしたのですわ?」


「アバレスト公爵が預かると......」


「手に入れるための嘘だったのかもな」


「そんな......」


「許せぬ! シュンよ! 今すぐそやつを成敗にむかうぞ!」


「あほか! 領主だぞ! 証拠もなしにそんなことをしたらおれたちは打ち首だ!」


「......いえ、ディムリアさん。 本当にちがったのかもしれません。 あれは本物ではなかったのかも。 ご迷惑をお掛けしました」


 そうつとめて笑顔をつくりさっていく。


「セリエスがかわいそうですわ......」


「ふむ、だが領主あいてでは...... この世界の市民なんてただの虫けらだからな」


(そんな領主だ。 ろくなやつじゃないはず、変に関わればおれたちの安全は脅かされる。 まあセリエスがかわいそうではあるが......)


「だめじゃ! セリエスを助けねば金の魔法はおしえぬ!」


「なっ!? そんなことしたらお前死ぬぞ!」


「ああ、そしてそなたもな!」


「なんだと!!?」


「契約は両方がまもらねば両方とも死ぬのじゃ」


「そ、そんな!? くそっ!」


 おれはセリエスをおいかけ呼び止めた。


「セリエス。 その領主のことをくわしくおしえてくれ」


「えっ?」



「......なるほどアバレストは、その手記をみて宝玉のことをしったのか」


「ええ、祖先の書いた手記にくわしい記載があるとかで......」


「それでなんでアバレスト公爵は宝玉を手にいれようとしたのですわ?」


「それはだいたい予想がつく...... それなら、なんとかなるかもしれんな。 一応ディムリア覚えているその時のことをくわしく説明してくれ」


「わかった!」


 おれはディムリアからその当時の状況をくわしくきいた。

 

 そして。


「そなたがセリエスがいったものか。 勇者アバレストの真実のことで話があるとか......」


 そう小太りの若い男が椅子にふんぞり返りながらいう。 周囲には晩餐会に集まった貴族たちがこちらを不審そうに見ていたた。 


(晩餐会があるときいてセリエスに伝えさせたが、このアバレストと言うやつ、やはり完全におれよりの人間だな。 目をみればわかる同族だ)


「ええ、アバレストさまが魔王討伐のさい、何かおとされたのかご存知ないかとおもいまして」


「い、いや。 なんのことだ」


 アバレスト公爵は目をそらし明らかに動揺している。


「なんのことですかアバレスト公爵?」


 そばにいた貴族のような若者がいぶかしげにいった。


「いや、あそこに錆びた剣がありましてね。 それが魔王討伐に関係していると思いお持ちしたのです」

 

 おれは落ちていた錆びた剣をみせた。


「それは!? まさかその意匠の紋章は王家の剣! それは王家が魔王討伐のために与えたとされるものか!」


 貴族の若者は言葉を失っている。 周囲の貴族たちもざわつきは締めた。

  

「その剣は初代アバレスト公が魔王との戦いで失ったはず...... なぜそこに」


「いくらなんでも偽物では?」


「だが意匠は王家の紋章をモチーフにしておるようだ」


「確かに本で呼んだ剣と同じもののようにみえるな。 勝手に王家の紋章を意匠に取り込むのは重罪だが......」

 

「ならば本物か?」


「これはどう言うことですか? アバレスト公爵、そなたの祖は魔王を倒され、その功績でこの地位についたはず」

 

 若者はアバレスト公爵にきいた。


「ラーク卿、これはおそらく偽物です。 そなたそれをこちらに渡すのだ」


 アバレストは額から汗をながし、その腕を伸ばした。


「アバレスト公爵、それはできません。 これは私のもの。 ダンジョンや遺跡の物はひろったものが所有できる決まり...... そうでしょうラーク卿」 


「確かにそうだが、それは魔王の遺跡からみつけたのですか?」


「ええ、セリエスがリアベールの宝珠を手に入れたときにね。 たがその宝珠もアバレスト公爵が没収したのです」


「リアベール...... それはたしか暗黒騎士と呼ばれた......」


 困惑しながらラーク卿は考え込む。


「この剣ですが、このとおりぬけません」


 おれは周囲の目の前で剣をぬこうとするがギシギシと音がしてぬけない。


「錆びているな......」


「使っていないということか。 だがそれでは......」


 貴族たちは眉をひそめ、アバレスト公爵をみる。


「......それを渡せといっている」


 そうアバレスト公爵はこちらをにらみいった。


「できませんね。 魔王を倒したのはあなたの祖先じゃなかった。 あなたは手記からそれをしってセリエスに宝玉をもってこさせた。 証拠を隠蔽するために、だが落とした剣の存在はしらなかったようですね。 さすがに祖先も恥を残せなかったようだ」


「くっ! 衛兵! このものらをとらえよ! 偽りをもってこの国にあだなす逆賊だ!」


「お待ちくださいアバレスト公爵!」


 ラーク卿の言葉もきかず、衛兵は俺たちを取り囲む。


「セリエス、お前の強さをみせてやれ。 殺さないようにな」


「は、はい」

 

 セリエスは鞘で、瞬く間に衛兵を叩き伏せた。


「なっ!?」


「なんだあの強さは!」


「魔法すら使わず......」


「みなさま、このセリエスは魔王を倒したリアベールの子孫です」


 おれがそう紹介すると貴族たちはどよめいた。


「リアベール、たしか元バスブットの騎士で堕ちた暗黒騎士......」


「かのものが本当の魔王を倒したのか」


「その子孫ならばあの強さにも納得がいく」


「みな、なにをいっておる! この者たちは嘘をついているのだ!」 


「しかしその王家の剣は本物だ。 このバスティン・ラークが断言しよう!」


 ラーク卿は剣を指差すと、アバレスト公爵は言葉を失った。




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