第五十七話 『世界は救われた。俺は怠惰のまま。だけど、魔王は静かに丘にいる』──そして話しに行くことにした。
「多速魔連弾」
こちらに腕を向けたグアレナに魔法の雨が降り注いだ。
「何ですかこれは!?」
驚くグアレナがみたそこにはディムリアがいる。
「な、なぜ、あなたがそこにいる!? 私が取り込んだはずだ! こうして魔力も増大しているのに!」
「それはおれのスキルだ」
「......あなたのスキルとやらは器官を複製する...... まさか!?」
「そうディムリアの魔鉱宝石を複製してお前はそれを取り込んだ」
「そんな!!」
「残念じゃったな。 我はシュンから耳に着けた口でその話を聞いて、蒸気のあるうちに姿を消しておったのじゃ」
「くっ! やりましたね...... だが、それでも私の優位は揺るがない! その魔法とて効きはしない。 また取り込んであげますよ」
「それはどうかな」
「もう、黙りなさい......」
グアレナが両腕を掲げると、頭上に光る球体が浮かんだ。
「死になさい。 パニッシュノヴァ」
しかし放たれた光の球体は消滅した。
「なんです...... 私の魔法が」
「かつての魔王が破れたのは、ディムリアが抵抗して魔力をとめたからだそうだな」
「まさか、私の魔力を!!」
「そうだ。 その体内の魔鉱宝石は、おれの意思で働く」
「くっ!! だがそれでも私を倒せるほどの力はない!! おなたさえ殺せば!」
グアレナが剣をぬきこちらにむかう。
「させない!」
「なめるな!」
セリエスとルードリヒが剣を防ぐ。
「私が回復するですわ!」
「わかっていないようですね! 私は魔鉱宝石のために不死! いずれあなたたちは体力がなくなり死ぬのですよ!」
「ああ、お前こそわかっているのか。 ディムリアの魔鉱鉱石を複製できたんだ。 それがどういうことなのか」
「なに...... まさか」
「ああ、今見せてやる。 第二の器官、第三層、他複製」
「私を複製してどうするつもりです!」
「こうするんだよ」
ディムリアが光輝く。
「なるほど、これが完全な力か」
「な、なに......」
「お前の不完全な魔王の力と、ディムリアの完全な魔王の力、どちらが上か、わかるよな」
「消え去れグアレナ...... パニッシュノヴァ」
「き、きさまぁぁぁ............」
ディムリアのはなった光の球体はグアレナを包み込んだ。
「ふぁぁ」
おれはベッドであくびをしていた。
あれから、一年、おれは建て直されたバスブットの屋敷で怠惰を極めている。
皇帝が倒されたことで、帝国は戦争をやめた。 というより皇帝とグアレナのキメラ部隊ありきの無茶な作戦だったため、戦争が遂行できなくなり、民から統治者を選ぶことを条件に和議を結ぶこととなった。
「全く、ギルドにも顔を見せず、この屋敷で食っちゃねの毎日、最初よりひどいもんですわ!」
「だってやることないじゃん」
ギルドは人に任せ、支店を各国に配置して一定の評価をえていた。
「それよりセリエスは?」
「王国よりリアベールの功績が認められ貴族になったですわ。 今は旧アバレスト領の領主さまですわ」
「ふむ、やっと汚名が返上されたか」
「汚名が返上されたかじゃないぞ」
ワイズが部屋にはいってきた。
「なんだよ。 ワイズか。 おつー」
「......おまえな。 おれの領にくるといってからいつになる」
ワイズは指定災害モンスター討伐の功績で、旧プレマスの領地を得ていた。 アビスケルベロスもおれたちが助力してなんとか倒したからだ。
「いいだろ。 お前はミルミナさんと結婚して領主になったんだから寂しくないだろ。 おれは寂しいのに」
おれはふて寝した。
「まあな。 いやそうじゃない! ミルミナもお前に会いたがってるんだぞ。 アビスケルベロスの件も感謝を伝えたいとな」
「感謝なんていい...... 面倒だ」
「はぁ、ミリアもたいへんだな」
「本当ですわ!!」
「ルードリヒは国に戻ったんだろ」
「ああ、王女とハルメシア卿に騎士団長にこわれて断れなかったらしいな。 さすがに魔王討伐の一人ならそうなるだろう」
「みんな、それぞれやることがあるんだな。 おれとは大違いだ。 あれディムリアは?」
「帰ってから何か落ち込んでる風ですわ」
「仕方ない...... 話しでもするか」
おれは屋敷をでてディムリアがいるという丘へと向かった。




