第四十一話 『禁忌の書を破壊せよ? 断るつもりが世界の命運を背負いました』──きっかけは、美人王女の一言で。
「......わざわざご足労いただき、申し訳ございません。 このような姿で失礼します」
そう目の前のベッドに上半身をおこし女性が頭をさげた。 おれとギガルト、セリエスはワイズにつれられこじんまりした屋敷へときた。 この女性ーー元プレマス王国、王女ミルミナにあうためだ。
「それでミルミナさまが錬金術の書を破棄してほしいと......」
「ミルミナで構いません。 もはや国もなくなりましたから...... これはわれわれの落ち度、このようなことをほかのかたにお願いするのは本当に心苦しいのですが。 あの禁忌の書は人の手にわたってはならないものなのです......」
「それならなぜ破棄されなかったのですか?」
「ひとつは帝国への切り札、我が国は小さく隣国、帝国と対抗するためにしかたなかった。 もうひとつはいずれ必要になると先祖が言葉を残したためです。 どう必要かはわかりませんが......」
「なるほど、それで内容は......」
「わかりません。 失われた言葉ゆえ解読が困難。 ただ推察するに、生命に関する魔力技術なのではとのこと」
「......生命に関する魔力技術か」
「そりゃ、帝国は欲しがるだろうね。 モンスターを作る技術があるんだ。 禁忌とされるほどの古代の技術なら間違いなく応用できる」
そうギガルトがうなづく。
「ええ、そして我々が内容を把握してないことが向こう側にしられたようです。 こんなことになるならすぐに破棄すべきでした......」
「なるほど、それで奪い取りにきたのか」
「......あれがどういうものかはわかりませんが、ギガルトさんのいうように帝国に解読されその技術が奪われると、必ず帝国は世界を支配するために侵攻を開始するでしょう」
(うーん、かもしれないが...... でも帝国にはいるなんて不可能だし、できたとしても正直面倒だ...... 断りたい。 しかしミルミナさんはきれいだしカッコ悪いとこ見せたくない、ここはうまくごまかして断ろう)
不安そうな顔でミルミナさんがこちらをみている。
「......せめて帝国内部に潜入する方法と、禁忌の書がどこにあるかがわかれば、くっ! この世界の危機、なんとかしたいが!」
(ふふっ、これならカッコ悪くない)
「本当か! 我々は潜入するための地下トンネルをつくっている! 奴らが禁忌の書を隠している研究所もわかる!」
「ありがとうございます! これは世界の命運を握ることを理解していただいているのですね!」
(ぎゃあああああ!!! し、しまったーー!! どう、どうする...... あっそうだ!)
「しかし、私の仲間たちはまだ幼い、潜入なんて危険にさらすのは...... どうする君たちの意思を確認したい」
(もちろん! セリエス、ギガルト断るよな!)
「もちろん! 私は錬金術に興味あるからいくよ!!」
「もちろん! ぼくもシュンさんが世界を救うお手伝いをしたいです!!」
(ああああああああああ!!!)
こうしておれは潜入作戦に加わる羽目になった。
「い、いくことになってしまった。 ミルミナさんの美しさがおれを狂わせた。 あんなきれいなひとあんまりみたことないから......」
「でもきれいな人なら、シュンさんのまわりの女性はみなさんきれいですよ」
セリエスがそういった。
「見た目はな...... でも全員、ただただ面倒だろ。 おれはおちついた大人の女性が好きなんだよ。 そんなやつはまわりには皆無だ」
「それを本人のまえでいうかね。 まあ私はそうだけどね。 貴族だからルードリヒさんはおしとやかじゃない」
「でもなんか固いんだよ。 ギルド長は威厳が必要だとかいって、逐一行動や言動を注意されるんだぞ。 まあおれよりディムリアがかっちりしつけされてるけどな」
「そういえば何回か逃げて捕まってお説教されてましたね」
「ああ、あいつがいればおれに意識が向かないから助かるが...... いやそんなことより、帝国に潜入なんてどうすんだよ」
「私は帝国の技術を見るのは楽しみ!」
「帝国に行く前にラーク卿に話をしておいたほうがいいんじゃないですか?」
「それも考えたが、帝国で最悪捕まったりしたら、この国に迷惑がかかるからな」
「それで三人で行くつもりですか?」
「ワイズの話だとあと一人とミリアくらいならつれていけるらしい。 ミリアか。 多分ぶちギレるだろうな」
「ぶちギレますね」
「きれるね」
「はぁ、やっぱりか」
おれたちはそういいながら、一度城にもどった。




