第十九話 『ギルド設立、初陣の敵は“信用ゼロ”』──働き手を求めてスラム交渉へ。
メイシァルにつれられて町外れまでくると、金属音がしてきた。 そこには数件の建物があり煙突から煙が上がっている。
「ここは工房さ。 パニエいるか?」
メイシァルはそういいながら工房の一つにはいる。 あつい部屋のなか大勢の職人が金属をたたいている。
「なに? メイシァル」
そう褐色のはだの少女がハンマー片手に立ち上がる。
「ああパニエ、こっちはシュンだ。 こいつがあんたを雇いたいってさ」
「あんたがあたしを?」
「ああ、武器屋を探してるんだ」
おれはそうきりだし事情をはなした。
「冒険者ギルド...... ふぅん、面白そうじゃない! 鍛冶屋も兼任ならやってもいいよ!」
「本当か!」
「ただ......」
「なんだ?」
「......そうなんだよな」
メイシァルとパニエは眉をひそめ顔を見合わせた。
「話をきくと、あんたらのメンバーは若いんでしょ?」
そうメイシァルはいう。
「ああ、おれが16、ミリアとディムリアはわからないが同い年ぐらいにみえるな。 シェリガは二十歳そこそこ、セリエスは10才といっていた」
「大人が一人、あたしが17、メイシァルが18か」
「なんだ大人が少ないとまずいのか」
「ああ、大人もだが女だけなのもだな」
そうパニエが口をとがらした。
「女...... おれは周囲に女が一杯だと嬉しいが」
「おまえはな。 ただ客や依頼者は女を信用するかってことだ」
あきれたような顔をしてパニエがいった。
「おいおい、おれたちはバジリスクとデザートワームを倒したんだ。 実績ならある」
「バジリスク...... ほんとうかよ!」
「ああ、城に聞けばわかる」
「そりゃきいてなかったね。 まあ、やってみようか。 やらなきゃはじまらないしな」
「そうだな」
こうして二人を説得してやとった。
それから一ヶ月。
とりあえず城の一階はできた。 国の申請もとおり、ここに武器、鍛冶屋、そしてモンスター屋がある。 おれたちははれて冒険者ギルドを開店することとなった。
「やりますですわ!」
「頑張りましょう!」
「うむ、我が城を更に増築しようぞ」
「せんわ!」
「シュン、冒険者はどうなってるの? 私が危険かどうかを判別するんでしょ」
そうシェリガがいう。
「ああ、それなんだ...... チラシをまいたんだけど、まだ登録希望者がいないんだよな」
「依頼者もですね。 バジリスクやデザートワームを討伐したのになぜでしょうか?」
セリエスが首をかしげる。
「そりゃそんな話、誰もしらんからだろ」
そう、メイシァルがいうと、パニエはうなづく。
「ああ、あたしたちもあんたらに聞いてしったからな」
「どうやら一般のひとたちは伝わってないようですわ。 このままだと依頼人も冒険者も集まらないですわ」
「くっ! ここまでかなりの投資をしたんだぞ! もう後にはひけん! なんとしても人を集める! なにかいい案はないか」
「まあ、あまりおすすめはしないんだけど......」
そうシェリガは切り出した。
「ここかスラム」
そこは王都にあるスラムだった。 粗末な家がひしめくように並び立つ。
「シェリガの話ではモンスターに町や仕事を追われた貧民たちがすむ区域らしいですわ」
「ここのものたちなら仕事をほっしてると、ただ顔役に話しを通さないといけないらしいですね」
セリエスは顔をしかめている。
(確かに匂うな。 それに危険だ。 しかたない、冒険者がいないとどうにもならないしな)
「顔役のナザリオにあうしかないな。 みんな気を付けろ」
「襲われたら我の魔法でここ一帯を焼き払えばよい」
「やめろ。 話し会いに来たんだ。 ただあぶなくなったら頼む」
「やめるですわ!」
おれたちは細い路地を進みスラム奥へとむかった。
「おい、なにものだ」
「ここはお前らのくるところじゃねえ」
そう人相の悪い男たちが前後をふさぐ。
「さ、さっそくか。 セリエスくんやってしまいなさい」
「はい!」
「うげっ!!」
「ぐほっ!!」
セリエスは瞬く間に男たちをのした。
「子供のセリエスに頼るなんて情けないですわ」
「しょうがないだろ。 おれは人間相手の戦闘はしたことない。 もし殺してしまったらことだぞ」
「大丈夫です! 小さい頃からこういうやからに絡まれているのでなれています!」
「けなげじゃな。 およよ」
「おい、お前たち、顔役のナザリオはどこにいる?」
「な、ナザリオさんなら奥にあるあの建物です」
そう男ははなした。




