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第十六話 『ギルド設立の条件は、災害級モンスター討伐でした』──働きたくないのに、また働かされる。

「ふむ、冒険者ギルドですか?」


 王様に許可をえるために、まずラーク卿の屋敷に挨拶にいった。


「ええ、モンスターに悩まされている人びとがいますから、国も簡単には兵士を派遣できていないようす。 そこで戦闘技術のあるものを扱い派遣する仕事です」


「なるほど、確かに現在、兵士を各地へと分散できる余裕はないですね。 そのような組織があれば助かる。 しかし......」


「どうしました?」


「今いったように兵士を分散できる余裕はないのです。 それは各地で戦争が起こっているためなのですが...... ギルドができたら、兵力がギルドに集中することになりますよね」


(そうか、おれ自身が兵力をえて反乱する可能性を危惧してるのか)


「もちろん監視してもらって結構ですが」


「いえ、あなたを疑っているわけではないんです。 国のためにバジリスクを倒して重症をおいましたからね。 ただあなたのしらぬところで他のものがその兵力を操る可能性がある」


(なるほど、確かに傭兵のようなもの。 金のためならそういう行動に加わるものたちいるな。 それに、おれ自身権力をえるために命をねらわれるかもしれんな)


「......やはり、やめた方がいいですか」


「いえ、モンスターや盗賊による被害は甚大です。 そのギルドはあった方がいい。 ただそこに所属するものを調べる必要がある。 登録制度をつめてほしいのです」


「なるほど、登録を厳格化か。 でも調べるといっても本人の申告以外調べようがない」


「そこで、ある人物を雇ってもらいたい」


「ある人物?」


「ええ、そのものは人の嘘を見破ることができるのです。 そのものを雇うことができれば許可をとりつけましょう」


「わかりました。 その人物を教えてください」


 ラーク卿からその人物ーー占い師シェリガの話を聞いて早速交渉に向かった。



「シェリガ、有名な占い師ですわ。 なんでも人の本性を見ることができるとか」


「なれば無理ではないか。 シュンは腐った精神をしておる」


「誰が腐った精神だ。 正直者なだけだ」


「そうですよ。 シュンさんは困っている人びとのために冒険者ギルドを立ち上げようとしているんです」


「......セリエスさん、そのキラキラした目をいったんやめようか......」


(確かに嘘を見抜かれたら終わりだな。 さてどうするか)


 おれたちはシェリガがいるという森の小屋へと向かっていた。


「でも、ミリアさん、シェリガという人はなんでこんなところに?」


 セリエスがきいた。


「なんでも気味悪がられてここに追いやられととか......」


「心を読むのじゃろ。 そんな迫害も受けよう。 弱さや強さ、ひとと違うということはそういうこともつきものじゃ」


 そういうディムリアの表情は悲しそうにみえた。


(なんだ...... いやいまはどうやって力を貸してもらうかだな。 嘘もつけないなら、簡単じゃない。 だめだうまい考えがうかばん)


 森をすすむと小屋がみえてきた。


「あの、すみませんシェリガさん」


 扉をたたく。


「あん? なんだ」


 そうでてきたのは、片手に酒瓶をもった露出の多いスタイル抜群のおねーさんだった。


「な、なんてハレンチな格好! セリエス見てはだめですわ!」


「うっぷ、酒くさい!」


「お主がシェリガか」


「そうだけど? なんのよう?」


 おれは事情をはなした。


「ははははっ、冒険者ギルド! なにそれ? あんたばかなの?」


「いや、本当に作りたいんだ。 だから強力してくれよ」


「本気でいってんの? 人に尽くしたところで何にもなんないわよ。 どうせいいように扱われるだけ。 ひっく」


「酒くさ! あんたもそうだったのか」


「ええ、悪いやつらの魂胆を知らせてたんだけどね。 結局は気味悪がられて追放されたよ。 正直者は馬鹿を見るってね」


 酒瓶を机におくと、シェリガはおれをみる。 その深く青い瞳はなにもかも見透かすようだった。


「あんたそんなもんつくってなにするつもり。 本当は悪巧みを考えてんでしょ」


(......しかたない)


「おれは働きたくないんだ。 他の人に働いてもらい仲介料をもらいたい。 だからギルドをつくりたいんだ」 


「なにいってるんですわ!」


「まあ事実だからな」


「......ぷっ! ははははははっ、どうやら本当みたいね!」


  シェリガが笑いながら机をたたく。


「はぁ、笑った、笑った。 でもそれで私があなたに力を貸してなんの得があるの」


「いまはなにもないよ。 むしろ何をしたら協力してくれるのかききたい」


「そうね...... なら今はなきプレマス王国、ヤーツ砂漠の【デザートワーム】を倒してみなさい」


「デザートワーム? どっかできいたな」


「指定災害モンスターですわ!」


「ええ!? またかよ!」


「また?」


「このシュンさんはバジリスクを倒したのです!」 


 セリエスがそう胸を張る。


「ああバジリスクを倒したのって君たちだったの? それなら倒せるわね」


「ふむ、それでどうする?」


「し、しかたない。 働かないためだ。 倒せば力を貸してくれるんだよな」


「ええ、倒せればね」


 シェリガに了承をとりつけたおれはデザートワームを倒すことにした。


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