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第十一話 『黄金竜との契約試練』──“第二の器官”最後の一本。

 洞窟は広くなんとかモンスターたちをできるだけ避けつつ、上を目指す。


「かなり強い、避けてても多少戦うから疲労があるな。 ただの洞窟だぞ。 本当にここに魔法なんかあるのか?」


「あたりまえじゃ。 我がここに封じたからな」


「なぜですわ?」


「金は人を惑わせるゆえじゃ。 かつて多くのものに伝えたときに人々に混乱をきたしたことがあるからじゃ」


「確かに金を産み出せるなら、金の価値は暴落してしまうでしょうし...... でもディムリアさんは魔法使いだったのですね」


 セリエスはそううなづきながらきいた。 


(セリエスはディムリアを魔王だとしらんからな...... 混乱するからいわないほうがいいとミリアにいわれてる。 とはいえおれもまだこいつを本物とはおもってないがな)


「それでその魔法、なんで人間に教えようとおもったんだ?」


「人々が飢えておったからじゃ。 食物はつくれんが金ならつくれたから、それをあたえた。 その頃は人間社会のことはよくわからんかったからの」


(そもそも魔王ってなんなんだ? どうみても人間だが、あんなところにいたのだから普通じゃない。 あとでくわしくきいてみるか)


「だが、まずは魔法だ」


「こんな人間に教えてもいいのですわ。 世界支配とか考えるかもしれないですわ」


 そうミリアはじとっと横目でおれをみた。


「だれがこんな人間だ! だが本当になんでおれたちに教える?」


「契約もあるが、ミリア、セリエスは不正はしまい。 シュンはろくでもないやつではあるが、こやつにそこまで大それたことはできる胆力はない」


 そううなづきながらディムリアは断言した。


「誰がろくでもないやつだ! 確かにおれは自分が楽したいのであってほかの人間に迷惑をかけたい訳ではないがな」


「シュンさんはすごい人ですよ。 見ず知らずのぼくを助けてくださいました」


 そうセリエスはキラキラとした目でこちらをみてくる。


(うっ...... あれは助けないとディムリアが協力してくれないから)


「ちがいますですわ。 打算で助けようとしただけですわ」


「しゃ、シャーラップ!!」


「そんなことはありません! シュンさんはとても優しい人ですよ!」


「セリエス、そのキラキラした目でみるのはもうやめて...... おれの心のライフはゼロだよ」


 おれは罪悪感にさいなまれながら、それでも野望のために歩をすすめた。



「奥になんかいる...... かなりでかいぞ。 まさかなにかがまもってるのか?」


 暗い洞窟の奥に巨大ななにかがいる音がきこえる。


「うむ、我が魔法にて、魔法をモンスターとしておる」


「はぁ!? 戦うってことかよ!」


「当然じゃ、奪われては困るから封印したのだからの」


「なにがいるのですわ」


「えーと、ドラゴンタイプじゃ」


「ど、ドラゴン!? 竜じゃねーか!」


「なんじゃ、ならばやめるか」


 ディムリアはにやにやしていった。


「お前!! まさか倒せないのをしって魔法のことを教えたのか!」


「リスクのないリターンはない。 当然であろうが、無理なら諦めることじゃな」


「......くっ、しかたない。 弱点はおしえてくれるんだろうな」


「ああ」


「ならやる......」


「正気ですわ! 相手はドラゴン、並みのモンスターではないですわ!」


「しかしこれを逃せばおれの永遠のだらけ人生設計が遠退く......」


「死んだらそれどころではないですわ! あほですわ! あほの極みですわ!」


 ミリアに罵倒されながらも部屋へと歩みいく。


 

 大きな部屋は噴火口なのか天井があき空がみえ日の光がはいっていた。 その輝きに照らされ目の前に巨躯がみえる。 それは立ち上がると金色の光沢をもつ竜だった。


「弱点は炎だったな! そして額の魔力の宝石! みんないくぞ!」


「はははははっ」


 ディムリアは笑い転げる。


「な、なんだ?」


「こやつは我がつくりだしたドラゴンじゃ。 我を襲うことはない」


「なに!?」


「あくまでお前の覚悟をとうたまで」


「ふざけるなよ! 死ぬ覚悟をしただろ!」


「ふふっ、なにかをえるにはそれ相応の対価が必要......」


「グオオオオーー!!」


「お、おい、あぶない! 第二の器官セカンドオーガン


 おれは足を増やしてディムリアを抱えてとんだ。 地面に地響きがおこる。 ドラゴンがディムリアをふみ潰そうとしたからだ。


「な、なんじゃ! なぜ攻撃してきた!?」


「しるか! 離れるぞ!」


 ドラゴンはその巨体を揺らしてこちらを踏みつけにくる。


「やべぇ! ミリア! 炎を!! セリエスこっちが囮になるから足を頼む!」


「わかったですわ!」


「はい!」


 おれが囮になっている間にミリアとセリエスが攻撃をしかける。


「だめだ! 効いてない!」


「あの程度の攻撃では効かぬ。 やはり額の魔石をわらねばならぬな」


 ドラゴンの額には赤い宝石がうめこまれている。


(あれか...... ただ弓でねらうには正確に弓と弦をひかないと...... だがねらわれている間じゃ、攻撃はできん)


「我をおろせ。 囮になってやろう」


「あほか! お前じゃ踏み潰されて終わりだ!」


「魔王である我をなめるな。 一度だけなら魔法が使えるようになっておるわ」


「ほんとうか! セリエス、ミリア離れろ!」


 おれはディムリアをおろした。 


 ーー灼たる息吹をもって、眼前の敵を焼き尽くせーー


「グレートプロミネンス!!」


 視界が赤くなると、ドラゴンが巨大な黒い火柱に包まれた。


「ギャオオオアオ!!」


「すげえ!! いや弓を!」


 おれは弓をかまえた。


(あの額の宝石を撃ち抜くには、おれの筋力じゃ、安定させるために弓と弦に腕三本ずつはいる。 今は本当の腕を使っても五本、もう一本つくるしかない......)


「第二の器官セカンドオーガン!! ぐっ! きつい!」


 ひどい頭痛を感じながら四本目の腕をつくり、弓と弦をひく。


「ガアアアアッ!!!」


 溶けた体でドラゴンは炎からでてきた。 


「いけっ!!!!」


 おれが矢を放つとそれはドラゴンの額の宝石をいぬく。


「や、やった......」


 宝石が割れたおとを聞きながらおれの意識がとおのいていった。

 


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