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飼い主とお姫様


ふわふわ もこもこ きもちいね。


ぬくぬく あったか おちつくね。


なでなで うれしい うれしいな。


かわいい だいすき あいしてる。


ずっと ずっと いっしょだよ。



──────────────



暖かな日差しが射し込む窓際のすぐ側にある小さなお城。

立ち上がり手をかけるのがやっとな高さの柵に囲われたこのお城の中で小さな三匹のお姫様が暮らしていました。


気持ちよさそうにスヤスヤと寝息を立てるお姫様のヒマワリ。

自称下僕(しもべ)の人間が用意したご飯をムシャムシャと食べるお姫様のコスモス。

ただじっとふかふかの布団の上に座りぼーっとするお姫様のアジサイ。


ヒマワリは一番お姉ちゃんだけど、誰よりも甘えん坊さんなんだ。

コスモスはヒマワリよりもしっかりしているけれど、たまに人間を独り占めしたくなるんだ。

アジサイは末っ子らしく元気いっぱい、好奇心旺盛な女の子。

ヒマワリもコスモスもアジサイがだいすき。


ふかふかの床の上に仕切りのある小さなお部屋が三つと、仕切りのない広いお部屋が一つ並んでいるお姫様達のお城。

一匹が仕切りの無い部屋に入ると、それに気付いた二匹も同じ部屋に入ってそっと寄り添い一緒に寝るの。


ご飯を食べる時も、お城から出て冒険に行く時も、眠る時も、遊ぶ時も、三匹は常に一緒なんだ。

誰が見ても仲が良いと分かるほどに、三匹は強い絆で結ばれていて、とても大切に思いあっているんだ。


この三匹のお世話をしてくれるのは、自称下僕の人間。

「私は貴女達の下僕だからね。」なんて嬉しそうな顔をして言うこの人には、下僕以外の別の名前もある。

飼い主。

人が遊びに来た時や、怖くて嫌な臭いを放つ人が居る場所でそう言っていた、言われていたのを三匹は覚えている。


三匹のお姫様は下僕や飼い主の意味をよくは分かっていなかった。

嬉しそうなら下僕と呼んだ方がいいのかな?とも思ったけれど、遊びに来た人間が「下僕は流石にどうなの。」と呆れたように笑っているのを見た事がある。

飼い主は、「事実だから。」と力強く言っていたけれど、きっと良くない言葉なのだろうとなんとなく思ったお姫様達。


「あの人はかいぬし!」ヒマワリが力強く言うと、「かいぬし!かいぬし!」とコスモスも続いた。

ヒマワリとコスモスが二匹で暮らして一年経った頃にやってきたアジサイにも、二匹は飼い主という呼び名を教えたんだ。


三匹が楽しくなって大きな声で「かいぬし!」と叫んでいた時、飼い主が顔をのぞかせた。

「一緒に鳴いてて可愛いね。もう仲良くなったんだね。」と飼い主は一匹ずつ頭を撫でた。

飼い主にはお姫様達の「かいぬし」という言葉は伝わっていないようだ。

でも、「おなかがすいたよ。」と言えばすぐに新しいご飯の準備をしてくれるし、「なんだか きもちがよくないよ。」と言えば心配そうに抱きかかえて、お外のお外に行く小さなお部屋にいれて、そのままあの怖くて嫌な臭いがする場所に連れて行ってくれるんだ。


知らない人間が沢山いて、人間以外の生き物も沢山いて、嫌な臭いがするここは好きじゃない。

でも、少し我慢すればなぜだか気持ちが落ち着き出すんだ。

痛いのも、苦しいのも全部どっかに飛んでいっちゃうんだ。不思議だね。

言葉が通じなくても気持ちが伝わるのも不思議だね。


三匹のお姫様達は、「今日も可愛いねぇ!」と頬を緩めて優しく撫でてくれるこの飼い主の事が大好きなんだ。


「ずっと一緒にいようね。」

そう言って撫でる飼い主の目は、愛おしくて仕方ないと語っている。

言葉にせずとも伝わるのは、飼い主とお姫様だからなのかな?


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