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魔物の裏切りと魔法使い

 



 勇者と手下の魔物は、そのままどんどん魔王城の方へと進んでいきます。

 進めば進むほど、襲ってくる魔物はどんどん強くなっていきます。

 それでも二人は、素晴らしい連携で、魔物たちを圧倒していきました。

 あと半分で魔王城だ――というところで、一人の魔族と対峙しました。


「随分と面白い組み合わせだ」


 相手の魔族は二人を見た途端、そう言って笑いました。

 今までの魔族とは少し雰囲気が違っていました。


 大きな体、刈上げられた髪、鋭く光る瞳。

 勇者は剣を構えます。けれど次の瞬間――


 一体、どういうことでしょうか?

 少し後ろにいた手下の魔物が勇者に襲い掛かったではありませんか。


 すっかり信用していた手下の魔物に襲い掛かられて、勇者は混乱してしまいます。

 勇者はそのまま手下の魔物を切り伏せることは出来ずに叫びました。



「どうして裏切ったんだ!」


「我の主は最初からそこのお方だ。油断していたお前が悪い」


「信じていたのに!」



 勇者は魔物の手下の剣を向けることは出来ず、そのまま逃げだしてしまいました。

 後ろからは魔族の高笑いが聞こえました。


 勇者は、悔しくて悲しくて辛くて仕方ありませんでした。

 勇者は逃げた先の洞窟で考えました。

 魔物と信用した、自分が悪いのだと。

 魔物は魔物でしかない。嘘しかつかない。

 勇者は悲しみをこらえて、強く目を閉じました。


 一瞬でも、仲間が出来たみたいで楽しかった。

 でもそれはもう終わった。僕は立ち止まるわけにはいかない。






 パパとママいつ帰ってくるんだっけ?

 ま、いっか。レジ―の食べ物買ってこなきゃ。

 あ、靴紐解けてるや。すぐそこに行くだけだからいいよね。面倒くさいし。





 勇者はもう一度、手下であった魔物と、その主の魔族の元へ向かいました。

 強い魔族と魔物2人相手では、真っ向勝負では勝てるかわかりません。


 勇者は作戦を練っていました。

 チャンスは一度だけ。勇者は手下の魔物と魔族を、切り立つ崖へと誘い込みます。

 まるで自分が、崖の先に追い詰められたかのように、見せかけたのです。

 そしてその手前で近くの岩場に隠れて、二人が崖の方へ行くのを待ちました。


 二人が勇者を探して、崖の先まで行った瞬間。

 勇者は後ろから斬りかかり、見事二人を崖下に突き落とすことに成功しました。

 この高さだと助かりません。

 勇者は落ちていく魔族と魔物を見下ろしながら言いました。


「楽しかったよ、さようなら」






 レジ―のご飯も作ったし、続きを書こう。

 その前に、靴をそろえておかないと。

 脱ぎ散らかしてるのが、バレたら怒られるや。

「あれ?」

 靴が片方しかない。どこにしちゃったんだろう……?

 靴紐が解けてた方がないや。

 どうしよう、これしかなかったのに。怒られそうだなぁ。






 勇者は裏切りの悲しみから立ち直り、足を前に進めました。

 あともう少しで、魔王城です。

 ようやく魔王城が見えてきたというところで、魔王の幹部の姿を見かけました。


 ローブを羽織った魔族。魔法使いのようです。

 魔法使い相手に、剣で挑むのは圧倒的に不利です。


 どうしたものか――と勇者は考えました。

 どうにか、あの魔法使いの懐に飛び込まなければいけない。

 飛び込んでしまえば、勝負がついたようなものです。


 勇者はとある作戦を思いつきました。

 顔を隠し、剣もマントの中に見えないように隠します。

 そして、魔法使いに歩み寄っていったのです。


「初めまして、偉大なる魔法使い様。どうか僕を弟子にしてくれませんでしょうか?」


 勇者は魔法使いにそう言いました。

 相手の信用を得て、隙を狙う作戦でした。

 最初は警戒していた魔法使いでしたが、悪意を見せることのない弟子を志願する若者に対して、気をよくしたらしく、勇者を受け入れたようでした。


 勿論、魔法使いは弟子を志願した若者が、勇者であることは知りません。

 何故なら、勇者は臆病で気弱な若者を演じていたからでした。

 そうして、魔法使いと勇者は毎日顔を合わせることになりました。


 魔法使いはすぐに魔法を教えるわけではなく、最初は勇者を試すように雑用を押し付けました。

 しかし勇者は、それを文句も言わずに、やり遂げます。

 それにさらに気をよくした魔法使いが、自分の魔法の自慢をし出しました。

 勇者は魔法使いの心を開くために、その自慢に対して、大きく相槌を打ちます。


「さすが偉大なる魔法使い様です。尊敬します」


 そんな言葉を重ねるうちに、魔法使いはこう言いました。


「おぬしは随分、見どころのある若者のようじゃ。

 この偉大なる魔法使いが魔法を伝授してやろう」


 勇者はほくそ笑みました。これで勝ったも同然です。

 次の日、勇者はマントの下に剣を隠したまま。魔法使いに会いに行きます。

 そしてすっかり気を許して油断していた魔法使いを後ろから斬りかかりました。

 魔法使いは呆気なく、倒れて息を引き取りました。

 血で濡れた剣を見て勇者はため息をつきます。


「こんなやり方は良くないと知っているけど、これも平和を取り戻すためなんだ」


 その言葉はまるで自分に言い聞かせているようでした。







 今日はなんだか朝から家の中が慌ただしかった。

 パパとママが帰ってきたのかな?

 玄関の開く音と、車の音が何度も聞こえている。


「どうかしたの?」


 1階に降りて、パパに聞くと、パパは怖い顔をして答えた。


「おばあちゃんが転んで怪我をしたから、しばらく入院するんだ」


 僕はびっくりした。

 パパとママがいない間、おばあちゃんは一人で家のことをしてたけど、その時なのかな?

 僕も手伝ってはいたけれど、大人にしかできないことだってあるはずだ。


「大丈夫なの?」


 パパはその僕の言葉を無視して、出て行ってしまった。






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