『さぁ、ファンタジーの話をしよう』
――事実は小説よりも奇なり。
フィクションというものは、どこまで行っても、人間の想像の範囲内で語られる。
現実というものは、人間の想像を超えてくる。
だから僕は思う。
想像内の安心で安全な、それでいて少しだけスリルがあって、ロマンのある話を書こう。
この紙の上では、僕の想像以上のことは起こらない。
つまり僕にとって、それ以上に安心で、安全な世界は存在しない。
いやもしかしたら、この紙の上には本当はもう一つの世界が存在していて、僕は創造主なんかじゃなくて、どこからともなく与えられた天啓に沿って、ほんの少しだけ色を加えて書き記す。
そんな物語の奴隷なのかもしれない。
とも思ったりもするけど、それすら僕の想像内の話で出来事だ。
だから僕は想像する。
紙の上に形として書き記す。
しつこいようだが、これはやっぱり僕の想像出来る範囲の、安心で安全なこの世界にはないお話だ。
そうだなぁ。
やっぱり正義のヒーローと悪の親玉がいなきゃ始まらない。
悪者は理由もなく(もしかしたら理由はあるのかもしれないけど)、自分たちの勝手で善い人たちをいじめるものだ。
そんな悪者たちを懲らしめて、正義のヒーローが善い人たちを助ける。
そうして世界は、どんどん良くなって善い人たちが住みやすくなる。
でもどんな人が善い人で悪い人なのか、正義のヒーローはどうやって見分けているんだろう?
人間と魔族みたいな境があればわかりやすいのかもしれない。
でもちょっと待った。
きっと人間にも悪い人はいるし、魔族にも善い人はいるはずだ。
うーん、悩ましい。
まっ、いっか。
そこはやっぱり正義のヒーローなんだから。
きっと正義のヒーロー。そう!勇者にはわかるんだ!
『さぁ、ファンタジーの話をしよう』