18:そんなハッピーエンドってわけじゃないけど俺らは前を向いて今日も生きていく。
うるさいなぁ、まだ眠たいからもう少し寝かせてくれよ。俺を呼ぶ懐かしい声、すべてをいやしてくれそうな声だけど、眠気がなかなか取れない。
やっと目を開け辺りを見渡すと、目の前一面が海だった、遠くに島がいくつか浮かんで見えるが、ここはどこだ、そうだ、ここは薫とよく来たあの海岸だ。
「あなた」
呼ばれて横を見ると年を重ねた女性、星野さんがいた。
「お前ヨルなのか、いや違うのか…」
「もう気づいてたんでしょ」
いや確信したのは今だ、あの時はそうかもしれないと思ったが、思わない様にしたんだ、だってもし当たっていたら俺は立ち止まって前に進めなさそうだったから。
「薫、なのか」
「そうよ、あなた久しぶり、といっても一か月ぶりになるのかしら、でもやっぱりこうして話すのは久しぶりになるのかしら」
この天然ぽい会話、薫で間違いない。
「どっちでもいいさ、やっぱり薫だったんだな」
「ん、あ!ちょっと待って久しぶりの再会なのに、この姿はないわね」
光に包まれ薫の姿がみるみると若返っていく、光が収まり、はっきりと俺の目が薫をとらえた、その姿は正に死んだはずの薫そのものだ、思わず駆け寄り彼女を抱きしめる。
「薫!会いたかった、ずっとずっと、お前に言いたかったんだ!いつまでも愛してるからな」
「ん、知ってる」
どれくらい抱き合っていただろう、ただ嬉しくて涙があふれるのもお構いなしで強く彼女をいつまでも抱いていたかった。
「あのさぁ、やっぱいつまでも横でいちゃつかれるの、いやだわ」
声がするので見るとそこにヨルがいた。
「よ!」
手を上げ軽く挨拶してくる。
「なんでお前がここにいるんだ!!」
「それ前にも聞いたようなセリフだな」
「ヨル!お父さんにそんなこと言わないの」
「わりぃわりぃ、大人しくしているつもりだったんだが、どうにも居心地が悪かったもんでつい」
「もう、あなたって人は」
「ああ、もう口を挟まないから続けてくれ」
何でここにヨルがいるんだ?
「それはこれから話すことを聞いてもらえればわかるわ」
俺の心を読んだ?
「読んでないわ」
!?
「ふふ、驚いているわね、それも含めて話すから聞いてちょうだい、そうねぇ、まずは何から話そうかしら、私の生まれについてから話す方が分かりやすいかな」
「薫は家に帰りたがらなかったよな」
「少し歩きましょうか、その方が話しやすいわ」
海岸を二人並んでゆっくりと歩く、こうしているとまるで生前に戻ったみたいだ。
「私の家はね、普通の人たちと違って呪術を扱う一族なの、昔で言えば陰陽師って呼ばれてた人達、そう言えば音御市さんが言ってたでしょ」
「ハタガラス」
「そう、でもそれは一般に知られている通称であって名前なんてないわ、しいて言えば葦外一族と呼ばれてたわね」
「その葦外一族と敵対している、おもてとか言ってたか、その人たちってなんだ?俺たちを陰で助けてくれてたみたいだけど」
「彼らは蘆屋一族って人たちで、私たちとは遠い親戚になるわ、昔に分かれたあちらが本家で葦外一族は分家、それで仕事も真逆で彼らは祭祀や未来を占ったり表の仕事を生業としていているわ、決して表舞台に出ないってところは同じだけどね」
葦外一族の仕事はどういうものかと聞こうとしたけどやめた、大体想像つく。
「そうね、聞かない方が良いわ、私も気分が悪くなるから話したくないし」
眉を顰め、珍しく嫌な顔を薫がする。
「私の両親はね、私を生むためだけに結婚させられたの、それを知っていた両親は私を連れて逃げたんだけど、お爺様に殺されちゃった、私もそれに気づいて知っていたけど、逆らえなかった、だってどの未来を選択しても結局捕まる未来しかなかったから」
薫には自分の未来さえ、見えるのか。
「そうよ、凄いでしょ、そんな私でさえ、お爺さんの策略から抗うのは難しかった、でもね、それでも些細な抵抗をしてやろうと、家出をしてやったの、お婆様の協力を借りてね」
「その時、俺に出会ったってわけか」
「そうなの!あなたに出会う事はわかってたんだけど、予測したとおりにいくもんかって思いながらも、やっぱり恋に堕ちちゃった」
なんだよ、見もしない男の事を、自分の能力だけで見て嫌ってやろうとしたって事じゃないか。
「別にいいじゃない、ちゃんと好きになったんだから、やっぱり本能には抗えないものね」
そう言い、屈託のない少女のような笑顔で笑う薫。この笑顔を守るためなら死んでも構わない。
「いや、死んでもらっては困るから、ちゃんと晴の事を見届けて一緒に歳を重ねなさい!」
心を読まないでくれませんか。こんな時にも説教とはさすがだな。
「まぁね」
得意げに俺を見ている。
「どこまで話したかしら、あ、そうそう、でね、私が家出して恋に堕ちているのも彼らの手の内の中だっていう事が、私は分っていたから、それでも何とか一泡吹かせてやろうってしたわけなの」
「手の内ってどういう事なんだ?」
彼女は少し話すことをためらっていたが、それでもゆっくりと口を開く。
「これを話さないと前に進まないわね、ヨルの事も説明できないし、いいわ、ちょっときつい話になるけど、聞いてくれる?」
「ああ、逆にここまで来てお預けはないぞ」
「そうよね」
彼女は軽く微笑むと一呼吸おいて話を続ける。
「私には呪いがかけられていたのよ、子供を産んだら私の能力を受け継がされて、当人は衰弱して最後には死んでしまうって言う」
なんだと!じゃあそれが分かっていて俺と出逢い、晴を生むことを選んだのか!!未来が見えていたら当然そうなるという事が分かっていたことになるじゃないか。
「まあそういう事ね」
「じゃあ、俺となんて出逢わなければよかったじゃないか!!」
「そんな悲しいこと言わないで、それを含めてあなたを好きになり、愛したのよ」
とめどなく涙があふれてくる、もう嬉しいのか悲しいのか良くわからない。
「泣かないで、御免なさい、あなたを悲しませることになるってわかっていたのに、こんな事なら出逢わなければ良かったのかな」
「そんな悲しいこと言うな!!」
「ふふ、同じ言葉、言い返されちゃった」
大粒の涙をこぼしながら薫は笑っている。
「お前も泣いてるじゃないか」
「あなたが泣くからよ、いけない、話が途中ね」
二人涙をぬぐいなら歩き始める。
「それで、私は叔母様に会いに行ったわ、何か手掛かりがないかと思って」
「それがあの結婚報告に行った日か」
「そうよ、それで秘術を授かった、それは自らの命と引き換えに物体のある自分そっくりの式神を作り出す方法、それが作者である今の私、それと呪術で対象者の生霊を作り出す術、それがヨル、それが私とヨルの本当の姿、だから今の私は、厳密に言えばあなたの知っている薫じゃないのかもしれないわね」
「でも、お前は薫の記憶を持っているんだろ」
「そう、持っているわ、私の特殊能力、超予測による能力を利用して術を施したから」
「じゃあお前は薫だよ、何の問題もないさ」
「ありがとう、あなた、そう言ってもらえると私も嬉しいわ」
「でもヨルはどうなんだ?あいつにも薫と同じ能力があるじゃないか、ただの生霊ならそんなものはないだろうに」
「あの子は特殊なの、晴の能力を受け継がせるように呪術を組んでいるから、そのおかげでちゃんと意識も備わっているの、でも人の心を読むことができるというのは生前の私の能力じゃないわ、生霊のなせる業なのよ、だから私もそういった意味では生霊なのよね」
「しかし、ヨルの性格は誰に似たんだろうな」
「それはやっぱり、わたしなんでしょうけど、晴が自分で嫌ってる性格を受け継つがせたのかも、私の推測ではそんなところだけど、今度晴に聞いてみてちょうだい」
薫にもわからない事があるんだな。
「私にだってわからない事はたくさんあるわよ」
「また晴を連れて会いに行くよ、その時にさっきの事聞いてやってくれ、俺じゃうまく聞けそうにない」
薫は海を眺めながら、長い髪を揺らし気持ちよさそうにしている。
「話はこんなところかしら、丁度いい具合に話せたわ」
「丁度いいって、なんだよ、それ」
本当はその言葉が何を意味しているのか察しはついていた、だけどそれを受け入れられない自分がいる。
「なんとなく察しはついてるんでしょ」
「また、そのセリフか、さっき聞いたぜ、それ」
だめだ、声が震えてちまう、また涙がこみあげてきて止める事が出来ない。
「何泣いてるのよ、それじゃあ、言う必要もないわね、ヨル、お父さんに挨拶するわよ」
気が付けばヨルはすぐそこにいて、ゆっくりと歩いてくる。
「この子も連れて行くわ、晴が寂しがるでしょうけど、それじゃあ何度も繰り返してしまうし、彼らも諦めがつかず、また晴とあなたを襲うでしょう」
「そんな!そんな事ってないじゃないか」
「ごめんな、オヤジ、泣いてくれて嬉しいよ、でも勘弁してくれ、さっきの戦いで俺も限界が来ちまってるみたいなんだ」
「あと、私と一族の事、もっと知りたかったら御婆様に聞くといいわ、きっと教えてくれると思うから」
「そんな事はどうでもいい、俺はお前の口からもっと色々と聞きたいんだよ、頼むから行かないでくれ」
「お願い、笑ってお別れ言わせて、私の体みたでしょう、反動で歳を人の何倍も取ってしまう身体なのよ、もう限界をとっくにきているの」
「そんな、それじゃあ俺はこの先どうやって生きて行けば」
「晴がいるじゃない、あの子と私達の分まで一緒に生きるの」
「そうだけど、でも」
呼び止める声を遮るように、薫は言葉を綴る。
「あなた、晴の事お願い」
「ああ、まかせろ、きっとあいつは薫似の美人になる」
「うん、知ってる」
そうか、きっと晴の未来も見えているんだろうな。
「あと、一つ、大切な事を言い忘れるところだった、あなた、未来って言うのは先の出来事じゃないの、今起こっている事よ、過去もそう、今起きている延長線上の情報でしかない、常に今に答えがあるの、だから何事も決めつけないで」
「薫に言われると凄く説得力があるな、わかった、心に刻み込んどく」
「今はわからなくても良い、でも絶望はしないで、実はね、あの漫画、ドッペルは晴を救ってほしくて書いたんじゃないの、放っておいてもあの子は死ななかった、晴は昏睡状態になって体はヨルが入れ替わるだけだった、それも時間の問題で、ヨルが消える形で晴は目覚めたの」
「なんだと!じゃあ何のために」
「私が救いたかったのはあなたよ」
「俺!?なんで…」
「あなたは私が死んでから、自分の命なんてどうでもよくなってたでしょ、晴はしっかりしてるし、自分がいなくてもなんとかやっていくだろうと考えてた、だからあの漫画をあなたに読んでもらい、そこから生きる意味を見つけて欲しかったのよ」
「もしも俺が読まなかったら、どうなってたんだ」
「それは、、、言いえない、だからさっきの言葉を本当に心に刻んでいて欲しい」
力強く生きて欲しいって言いたいんだろうか。
「わかったよ、それにあの漫画を見つける前と今の俺とじゃ、全然価値観が変わった気がするから、心配はいらない」
「うん、今のあなたなら大丈夫そうね、それで良い、あともう一つ」
「なんだ・・・」
「安倍さん、可愛いわね」
何だ、そんな事か、もっと他になかったのか。
「いいえ、これは大事なことなの、きっとあの人と晴を選ばなきゃいけない時がくる、その時は信条を踏まえれば晴を選んで欲しいけど、ちゃんと見てあなたが選んであげて」
「そんなの決まってる!晴を選ぶさ」
「そう言うと思ったけど、そういう事じゃあないんだけどなぁ」
「なぁ、母さん、そろそろ」
ヨルが会話の途中に話しかける、薫は深くうなずくと俺に向き直りまっすぐで優しい目で見つめる。
「なぁ、オヤジ、今までその、何ツウか、本当はもっと遊びたかったし、あんまり話せなかったけど、すげー楽しかったぜ!ありがとな」
目の端に涙を浮かべ、満面の笑みでそう俺に言ってくれた。
「何言ってんだ、俺の方こそ晴の事守っててくれてありがとうな」
「へへ」
涙をぬぐいながら、照れ笑いをする
やっぱ晴に見た目は似てるけど、ヨルはヨルだ、もう一人の俺の娘だ。本当に、俺の娘でいてくれて、ありがとう。
「何度も言わなくていいって、照れるだろうが、じゃあな、オヤジ!」
ヨルと薫の体が光の粒子になり世界に溶け込んで徐々に消えていく。待ってくれ、まだ俺がお別れを言えてない。
「私もお別れをちゃんと言わせて、あなた、最後まで今までずっと、ずっとありがとう、愛してるわ」
「そんな事、知ってたさ」
頬を伝う涙を感じながらゆっくりと目を開けると、教室の天井が見えた、俺は生きているのか、身体を動かそうとすると、全身から痛みが走った。ゆっくりと顔を横に動かして、今置かれている状況を理解しようとする。どうやら俺は体育の授業とかで使う、体操マットの上で寝ているようだ。
「先輩!」
この声は安倍か!なんでコイツがここに。
「良かった、死んじゃったかと思いましたよ」
大粒の涙を流しながら握った俺の手を強める。
「いたッ!」
「ああ、ごめんなさい」
握った力を緩めるが手は離さない。
頭だけを起こして辺りを見渡す、ガラスの破片が周辺に散らばっていて俺の周りにだけない、安倍がかたづけてくれたのだろうか、俺は何枚か重ねられたマットに横たわっていた。
「このマット、お前が用意したのか」
「そうですよ、作者のヨルさんに事細かく言われていまして、ここに敷いておくとアキラさんが助かるからって」
薫と安倍はあのログハウスでそんな事を話していたのか、だったらすべて見えていたことになる、じゃあ言ってくれれば、いや、よそう、俺に内緒にしてくれていたからの結果なのだ。
「ちょっと体起こしてくれないか」
「大丈夫ですか?止めといた方が良いと思いますけど」
「いいから」
「少しだけですよ、痛かったら言ってください」
両肩をもって起き上がらせてくれた時、胸と腹部に激痛が走る
「いってッ」
「ほら、やっぱり、今は安静にしていてください、すぐに助けを呼びますから」
「おとうさん!」
教室の入り口に立ち、俺を見るなり叫ぶ晴。そして俺の元に駆け寄り、安倍と俺の間に割って入る形で歩み寄り、両手で俺の頬を挟んで、顔を近づけてくる。
「おとうさん、無事だったんだね、本当に良かった」
あふれ出る涙が俺の顔や首筋に堕ちてきた。
「心配かけたな」
「本当だよぉおぉ」
こんなに泣いている晴は久しぶりに見るな。
「ごめんな、晴、でも大丈夫だから」
そう言いながら、視界の端に音御市がいるのが見えた。
「無事で何より、一時はどうなる事かと思いましたが、やっぱり私の理論は正しかったようですね」
どういう理論なんだ?まあいい、今度詳しく聞かせてもらうとしよう。
「あのお父さん!ご無事で何よりです」
「輝彦君か、君も元気そうでよかった」
「はい、ありがとうございます、あの今日が初めましてですよね、俺、晴さんとお付き合いさせてもらっている加賀谷輝彦って言います!」
ん?ちょっと待て、今聞き捨てならない事をあいつは口走ったぞ。
「な、なによ、それ、なんで私とあなたが何で付き合いしていることになってるのよ」
俺の言いたい事を晴が代弁してくれた。
輝彦は慌てて言葉の訂正をする。
「ああ!ごめん、そのお友達としてお付き合いさせてもらってますと言おうとしたんだけど、緊張しちゃって」
「彼、輝彦はあなたの娘さんを危険に巻き込んだ引け目に駆られて、怒られるんじゃないかと、内心ハラハラなんです、許してやってください」
音御市が叔父らしく弁明する。良かった、俺は殺人者にならずに済みそうだ。
そしてこの場にいるはずの、人物がいない事に気が付いて俺は皆に聞く。
「ん?ヨルは??」
「そうなんです、ヨルさんの気配が何処にもないんですよ」
音御市が不思議そうに答え、続けて輝彦も教えてくれる。
「あのあと、お父さんと一緒に堕ちたそうなんですが、下にもいないし何処にも見当たらないんです」
そうだ、コイツは気絶していて事の顛末を知らないんだった。対して晴は黙ったまま。
やはりあれは夢じゃなく、本当の事で、お別れを言いに来たんだ。
そう思うととめどなく又、涙があふれてきた。
「お父さん!どうしたの!?」
「アキラさん!どこか痛むんですか」
最後のお別れの時を思い浮かべながら、心の中の二人に伝える。
ヨル!薫!本当にありがとう、これからは一生、一緒だ!これからもずっと見守っててくれ。
これですべての事柄に終止符を打ったのか、そう思うと寂しささえ感じてしまう。
「晴!もう降りて来いよ!遅刻するぞ!」
走って階段を降りて、居間に飛び込んでくる晴。
「何やってたんだ!もう飯出来てるぞ」
「あ、あんがと、じゃあリンゴだけ頂くね」
ハムエッグの横に置かれた皮をむいたリンゴを一切れ口に入れると、走って玄関に向かう。
あれから一か月が過ぎようとしていた。俺たちは各々の生活に戻り、俺と晴は現状にようやく慣れてきていた。
「全く、ご飯ぐらい食べれるように起きて来いよ」
晴を見送るため玄関までついていく。晴は靴を履きながら理由を告げる。
「そうじゃないのよ、髪型が決まんなくて、ごめん、オヤジ」
なんだと!今俺を何て呼んだ!
「今、一瞬ドキッとしたでしょ」
「べ、別にビビってないわ」
その手の悪い冗談はやめろ。
「ふんだ、一生このネタ使ってやるから、私を抜けモノにした罰よ」
「それは何度も言っただろ!」
「はいはい!わかってます!でもね、それはお父さんもお母さんも私の事信用してなかったって事なんだから、ちゃんと言ってくれれば私も協力したわよ」
「それは何度も聞いたよ、悪かったって」
「まぁいいわ、続きは晩御飯の時にね」
まだ続ける気か!
「当り前よ」
「今お前なんつった?」
「じゃあ行ってきますよ、お父様」
「お、おお気を付けてな」
なんだ?気のせいか?
それにしても晴はあれから元気になったものだ。以前より明るくっていうか活発と言うか、ヨルに似てきたのか?とにかく、強くたくましく育っているようで本当に良かった。
ただ安倍の事を会話に出すと暗くて怖い感じになるけど。
正に日本晴れの陽気に包まれ、元気に走って行く彼女を見送りながら、いつまでもこの幸せを守り抜こうと思った。
あれで終わりではない、むしろこの先の方が長いのだ、きっと俺も晴も沢山の出会いや別れ、歓喜と悲しみが襲うだろう、けど大丈夫!俺と彼女には二人が憑いている、きっと、これからもずっと大丈夫さ。
おっと、やべぇ、遅刻する!俺も急いで電車に向かわなければ、遅れたら安倍にからかわれそうだな。そして俺もいつものように会社へと向かって走りだした。