11:なんだかんだ言ったってハルとヨルは仲良しなんだ
「あの探偵、全部見透かしてたんですか!」と驚く安倍に、俺は事の経緯を話した。
「だろうな、あの口ぶりから察するに、安倍の尾行はただの記念だそうだ」「音御市が言うには晴の視点で描かれているからだ」という説明に、安倍は「なるほど、じゃあダメな探偵を晴ちゃんの前では演じているという事ですね」「それを含めて音御市、きゃつは中々な切れ者ですね」と納得した様子。
音御市が味方になったことで、事態は大きく動こうとしていた。
「でも安倍、良いのか、この先危ない目にも合うかもしれないぞ」という俺の問いに、「何言ってんですか、ここまで来て仲間外れはないですよ、最後まで付き合います!」と、安倍の決意は固い。
喫茶店での三者会談
夕方、会社近くの喫茶店で俺、安倍、そして探偵の加賀谷音御市の三者が顔を合わせた。互いに挨拶を済ませ、音御市は漫画の入った紙袋を俺に返却する。
目的の順序決定
音御市は冷静に、今後の行動の順序を決めるよう提案した。
1、作者の捜索
2、全巻漫画をそろえる
3、ヨルは何者なのかの解明
「晴ちゃんの動向はこの際どうでもいいんですよ、最終巻まで無事なのはわかっているのですから」と言い切る音御市に対し、娘を案じる俺は「え、でも」と感情的になってしまう。
「お父さん、娘さんを心配する気持ちは分かりますが、冷静さを欠いては駄目です」と諭す音御市に、安倍も同調し、感情を挟まず重要事項に集中すべきだと促した。
「晴さん、というかあの漫画のラストで主人公が死ぬのは間違いないみたいです」という音御市の告白に、俺も安倍も動揺する。音御市によると、ラストへの批判的な書き込みは出版社の都合で消されていたという。このことから、「出版社に圧力をかけられる大きな組織」が絡んでいる可能性が浮上した。
音御市からの情報共有
音御市は、すでに独自に調査した情報を共有した。
単行本は1~9巻。連載は8巻で終了し、公には作者**「くまいのち」の病が理由とされている。最終巻の9巻は部数が極端に少ない**。
音御市は「作者の情報がまったく足取りがつかめません」とし、組織的に隠されていると見て、出版社関係者への接触に時間がかかると予測した。
本の捜索は難航しているが、安倍は「こういうのって古い小さな書店の方が見つかりやすい気がしますよ」と、漫画愛好家ならではの視点を提供する。音御市もこれに同意し、素人の行動パターンを指摘した。
ヨルの存在と正体についても考察が進んだ。
音御市は「ヨルとされているドッペルゲンガーですが、晴さんの影のように見える事があるのでいるのは確か」と述べ、俺が逆上がりでヨルが見えるようになった経緯に「真夜中の公園で、ですか、中々シュールな絵ですね」と反応。
ヨルの正体は、音御市も「他の世界線の晴さん」という考察に至っており、専門家の意見として「何かのはずみで二人の間に、亜空間が開いてしまい、吸い寄せられるように出会ってしまった」可能性を提示した。
「しかしそれで、見えるようになるなら試してみる価値はありますね」という音御市の言葉に、安倍は「私も早速帰りの公園でやってみるのでアキラさんも付き合ってくださいね」と意欲を見せた。
晴からの予期せぬ問い
作戦会議が終わり、安倍からの飲みの誘いを断った俺は、帰宅すると晴が夕食を用意して待っていてくれた。
食卓で他愛もない会話をするうち、晴は「私、結婚しないよ、きっと」と寂しげなことを口にし、俺が「馬鹿なこと言うな」と返すと、不意に俺の目を見て尋ねた。
「お父さん!?何?なんで泣いているのよ」
輝彦に晴を引き渡す場面を想像してしまい、涙腺が緩んだことを悟られたのだ。
さらに、晴は鋭く切り込んでくる。
「ねぇ、お父さん」「いい人でも出来たの?」
「前に送ってくれた女の人でしょ」と、安倍の存在を指摘された。
「だがら違うっていってるだろ、あいつはただの飲み仲間の同僚だ」と否定する俺に、晴は「うそだ!だってあの人お父さんの事、多分好きだよ」と言い放った。
そこにヨルが窓から入ってきて、「お!?何々?夫婦喧嘩か!!」とからかい、俺と晴は同時に「ちがう!」と否定してしまう。
「まったく晴よ、お前みたいなのってファザコンって言うらしいぞ」というヨルの言葉を無視し、晴は風呂場へ向かう。
俺は盗み聞きで、ヨルに「もう!お父さんの前では静かにしててっていつも言ってるでしょ」と怒る晴の声を聞く。
ヨルの幼稚で自分勝手な振る舞いに、俺は「もしかして悪魔的なものがヨルの正体なのか」と再び疑念を抱く。
そして、俺は改めて、晴には真実を打ち明けられないと決意する。もし身代わりになって死ぬ可能性を話せば、自己犠牲の強い晴はそれを許さないだろう。「だから今は見守るしかできないのか」と、堂々巡りの結論に至るのだった。




