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キミと見たライブの景色  作者: NO NAME
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ワンマンライブ

あまりにも大規模なフェスで宣伝した事もあり、僕達が初めて開催するワンマンライブのチケットは8月中には2000枚全て売り切れてしまった。

フェスでの告知の効果は抜群だ。


チケットを買えなかった人から問い合わせが殺到したり、追加チケット作って欲しいと懇願されたりしたが、会場のキャパシティ的に追加でチケットを販売する事は出来ない。

買えなかった人に申し訳ない気持ちになりながらもどうする事も出来なかった。



本当はもっと大きな会場を使うべきなのだろう。

だが僕達は吉沢さんの店を辞めて別の場所でやろうなんて考えは誰も持っていない。

限定2000枚のチケットでいいのだ。

吉沢さんの店でやりたい。


集客は8月中に終わってしまったので、作曲と練習に明け暮れる時間が多く出来た。

冬の開催なので次に発表する新曲は冬の歌を作ったり、寒いので激しく盛り上がれるアップテンポの曲を作ったりした。

ただ自由に好き勝手作っていた作曲も、だんだん演奏時期の事やライブの構成的にこんな曲が欲しいと言った使い道を意識するようになってきた。

作曲のクオリティも上がってきたと感じる。



あきちゃんが歌詞を仕上げてくるテンポが異常に早いのだ。

天才は語彙力も高く、言葉の引き出しを多く持っているので表現力が豊かなのだ。

曲をつけるのが間に合わなく、新曲をどんどん作れないのが少し歯痒い。


曲数を増やすことで臨機応変にライブに合わせて楽曲を変えられるので曲数はとても大切だ。

僕達はワンマンライブに耐えられるくらいの曲数は十分にあるのだが、もっと選曲の幅を広げたいので曲作りを永遠に繰り返す。


12月までの時間は作曲や練習に追われ、あっという間だった。

作曲や練習に追われながら、ライブの企画も行う。

演奏だけで5時間だと間がもたないのだ。

お客さんも疲れ果ててしまうだろう。


合間にアトラクションやトークタイムを挟む予定を組む。

Anotherメンバーが今回はワンマンなので演奏ではなく、トークやアトラクションに出演してくれると言ってくれた。

非常に助かる。僕達だけでは5時間は長すぎるのだ。

こうして企画も徐々に進みながらライブ当日を迎える。

ライブの日は非常に寒い日だった。

朝からライブハウスの前に寒い中並んでくれるお客さん達。

僕達の入りの時間にはもうすでに100人くらいが並んでいた。


『寒いから早く入りたいー』

『熱い演奏を頼むよー』

僕達に向けて期待の声が寄せられる。


寒い中並んでくれてる人達に少し申し訳ない気持ちになりながら僕達は音合わせやリハ、ステージ周りのデコレーションなどの為に開場1時間前くらいにライブハウスに入る。


『今日はよろしく。

初ワンマンおめでとう。その年でしかも短期間でここまで上りつめたキミ達には驚くよ。

scrambleの伝説を間違いなく超えたな。』

吉沢さんが朝から来てくれていた。

いつも中盤くらいから来る吉沢さんにしては異例の出来事だ。

『楽しみにしてたんだから期待してるよ。』


吉沢さんに応援の声をかけてもらうとすごく自信がつく。

こんなにすごい人に応援してもらえる僕達は幸せだ。

数々の恩恵も受けていて贔屓にしてもらっている。


続いてAnotherメンバーが入ってきた。

『今日はトーク出演呼んでくれてありがとう。

お金を払って来場するつもりだったのに楽屋まで与えてくれてすごく嬉しいよ。』

ボーカルのゆうじくんはニッコリ笑顔で爽やかに言った。



僕達はワンマンを繰り返したいわけではない。

Anotherとはものすごく仲良くしていて経験豊富な彼らから多くの事を教わったり手伝ってもらったりしている。

可能であれば僕達はAnotherと一緒にライブがしたいのだ。

だが、ワンマンもまた夢であったので今回限りワンマンライブにする予定だった。

次回からはみんなで仲良くライブを作るつもりだ。


『ゆうじくん、今回はどうしてもやってみたかったワンマンだからトーク出演のみの依頼だけど、次回からはまた前みたいに一緒にライブをしようよ。』

『あき達はAnotherから学んだ事が多くてこれからもずっと仲良く一緒に楽しんでいきたいって考えてるから一緒にライブをしたいんだよね。』

あきちゃんがゆうじくんに僕達の気持ちを伝えてくれる。

ゆうじくんは即答で「是非お願いします」と快諾してくれた。




リハ前の入り時間にステージデコレーションをしながら次回ライブの予定をNo NameとAnotherのみんなに伝えた。

1998年3月、僕の中学卒業に合わせてライブをしたかったのだ。

卒業すると僕は就職をする。

研修の期間の6ヶ月は僕は地元の本社に勤務だ。

この街に来れる機会はかなり減るだろう。


研修が終わればこの街の支社へ転勤となり、その6ヶ月で貯めたお金で家を借りてあきちゃんと一緒に暮らす予定だ。

つまり3月のライブをした後10月までは活動休止に近い状態になってしまう。

だからどうしても3月にライブがしたいとみんなにお願いをした。



ライブの途中で3月のライブの告知を行うために吉沢さんに伝える。

吉沢さんはすぐに印刷のスタッフを呼んでくれてフライヤーのデザインを作るように指示。

デザインが決まりすぐにスタッフさんがライブハウスの上の階にある印刷会社へ持ち帰り、急いで印刷をあげてくれる。


ビル1棟全てを吉沢さんのビジネスで使っているので動きが早くスムーズだ。

15時には印刷が上がるとのことなので15時半からのトークで3月のライブの発表とチケット販売開始の告知。

帰るお客さんにフライヤーの配布をする事になった。


このように急遽対応してくれる所も吉沢さんの魅力であり、僕達は吉沢さんの会社にお世話になりっぱなし、甘えっぱなしの状態だ。

ライブ中に次回ライブの告知を行えるアドバンテージはかなり大きい。

次回ライブはNo NameとAnotherのツーマンライブ。

参加バンドを募らないので打ち合わせはスムーズに進んだ。



開場時間となり、多くの人が流れ込んでくる。

僕達はいつものようにステージで待ちながら入ってくるお客さんを交えて楽しく和気藹々なトークタイムで時間を過ごす。

入りの頃は100人ほどだった入場待ちの人たちが、開場時間になると400人を超える大行列になっていたみたいだ。

次々と人が流れ込んでくる。

多くの参加バンドがあった対バンの時は人が入ってくるのが当たり前だと感じていた。

だがワンマンとなると全てが自分たちを目当てとしてくれるお客さんだ。

入ってくる人が多ければ多いほど感動もするし嬉しく感じる。


会場は開演までの間に次々と人で溢れいっぱいになっていく。

増えれば増えるほどステージ上の僕達へ投げかけられる応援の言葉が増えていく。

『楽しみにしてたよーー』

『ワンマンおめでとー』

『最高の1日を期待してるよー』

開演時間になり僕達は楽器の前にスタンバイする。

『夢だったワンマンライブ。ついにスタートするよ!

あき達No Nameは夢を一つづつ確実に達成しながら進んでく。』

『ワンマンは今日で初めてだけど今日で最後。次からはやっぱり仲のいいバンドと楽しく共存しながらライブを作っていきたいと思ってます。』

『1回だけしか開催しない幻のワンマンライブ。

みんな思う存分楽しんでねーーー。』


あきちゃんのMCに開場が沸いた。

沸いたと同時にゆいちゃんがハイハットを全力で叩く。

『いくよーーーーーーー』

あきちゃんが叫びライブが始まった。


1曲目からハイテンポの上がる選曲だ。

寒いなか並んで来てくれたお客さんに熱い時間を過ごしてもらう。

会場は熱狂に包まれみんなで大合唱。

過去にCD収録している曲なので多くの人は歌詞を知っている。



演奏が始まると漏れた音を聴いてなのか走って会場に入ってくる人が多く一気に会場内は人で溢れかえっていく。

次々と密度は高くなり開演1時間になる頃に演奏の合間に1000人を超えたとスタッフさんから通達が入った。

大成功だ!!

集客に多少の不安があったが、2000枚のチケットが売り切れている実績は健在だ。

来場者が多く僕達は大満足だ。


フェスしかしてなかったので1年8ヶ月ぶりのライブハウスでのライブ。

久しぶりのライブハウスでキミと見たライブの景色は初ワンマンなのでいつもと違った独特の一体感があり、溢れかえった人の群れが心地よくて最高の絶景だった。



開演1時間後にようやく1回目のトークコーナーに入る。

休憩みたいなものだ。


『もの凄く多くの人が早くから来てくれてあきは感激です。

寒い中来てくれた人達。あったまってきたかなぁ?』

会場内はすっかり熱気に包まれて、半袖になっている人が多く目立つ。

今回のトークコーナーはフリートーク。

4人でステージで自由にトークをしながら楽器メンバーは1人ずつ順にトイレに行っておく。

ワンマンなので自由にトイレに行くことすら出来ないのだ。


あきちゃんだけはトークタイムでもメインなのでこの時間はトイレに行くことが出来ない代わりに次の演奏時間が終わってからすぐにあきちゃんだけ10分くらい休憩してもらう。

その10分は僕達楽器メンバーで間を繋ぐのだ。


演奏時間の2回目のテーブルでは未発表の新曲を半分くらいおり混ぜて15時まで演奏。

時間を長めに90分もとった。

90分続けての演奏は初めてでかなり疲れた。

集中力が途切れそうになったり、肉体的な疲労感も感じた。

あきちゃんも喉がしんどそうで90分は少しやりすぎた感じもしたが、15時まで時間を繋ぐ事ができたのでフライヤーが到着しているはずだ。

早く次回の告知をしたいのだ。


あきちゃんがトイレ休憩に行くついでにフライヤーをステージに持ってくる予定だ。

僕達はあきちゃんの休憩の時間、幼稚園で歌うようなみんなが知っている歌を楽器でロックに演奏して楽しんだ。

特に「カエルの歌」が大好評で盛り上がった。

Over Driveのエフェクトでギターソロがかっこいいカエルの歌。

BPM80くらいでアップテンポに演奏しながらロックに激しく歌う。


『不良のカエルがいっぱいで不覚にも笑ってしまったよ!なかなかやるなお前ら』

輪唱しながらカエルの歌を会場のみんなで楽しんでいるとあきちゃんが帰ってきた。

手にはフライヤーが数枚。

プロジェクターにもフライヤーの内容が映し出され次回ライブの告知をする。

『さあお待ちかね。次回ライブの告知だよー

チケットがたった今、完成しましたーー♪

さっそく販売開始しちゃうからねー』

今回のライブではチケットは早々に売り切れてしまった。

早めに買わないと買えない事は来場者のみんなは知っている。

『入り口のキャッシャーで買えるから帰りにでも買って帰ってね。』


次回のライブはAnotherとのツーマンになる事の告知もした。

『絶対行くー』

『楽しみにしてるよー』

などの声が多く聞こえてくるので次回も集客は大丈夫だろう。

安定の売れ行きに安心感が強い。


集客をほとんどしなくてもチケットが安定して売れるので練習する時間に余裕が持てる。

回数を重ねるほど認知度や人気は上がっていくものだ。

ファンを持続させるためには音楽のクオリティを上げていきたい。

集客に時間を要さないのはとてもありがたい事だと思った。


この日のライブは最後まで大盛況。

久しぶりのライブハウスでのライブだったが、僕達はやはりフェスよりライブハウスの方が良い。

入りきらない程の来客により熱気に満ちたこの空間が好きなのだ。

ずっとこんな最高のライブを繰り返し開催していくと思っていた。

いつも閲覧ありがとうございます。


交流や投稿告知用のX(Twitter)を開設しました。

https://x.com/noname_kimilive

フォロー頂けると泣いて喜びますm(*_ _)m


最新話の投稿告知や読者様との交流に活用させて頂きたいと考えています。

初作で稚拙な部分も多々ありますが、読んで頂いて光栄です。


これからも楽しんで頂けるように努力致します。

暖かい目で見守ってください。

よろしくお願い致します。

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