本気で音楽活動をするために
僕が小学5年生になりあきちゃんは6年生になった。
僕もあきちゃんも塾では進学コースに在籍しているが私立の中学には進学する気はなかった。
ただ単に、レベルが高いから進学コースにいるだけなのだ。
ここの塾の進学コースはかなり有名である。
近隣の市から電車に乗って通ったり、親が送り迎えしながら通う子も多い。
学力がついていけずに試験に落ちてしまったら進級すら出来ないのだ。
全国の有名中学への入学者を毎年多数輩出し、高い学力を得る子を量産する。
そんな有名塾に通い続けても進学する気のない僕達には意味がなかった。
中学なんて地元の公立中学でいいのだ。
受験なんかに巻き込まれたらバンドどころではなくなるだろう。
入試を受けさせられたら受かってしまう自信がある。
あきちゃんはもう6年生なのだ。
このまま在籍していたら10月頃には受験シーズンに巻き込まれるだろう。
2人で話し合った結果、塾を辞めようとの結論に至った。
だがお互いの両親を満足するように納得しなければただのワガママになってしまう。
辞めるには辞めるなりの理由とそれに見合う提案が必要なのを僕達は知っていた。
私立中学に通う気はない事は最初から言っている。
あきちゃんと一緒に音楽を真剣にやりたいと考えている事もお互いの親は理解している。
『塾で習う勉強を全部完璧にできるようにしてしまったら通う意味がなくなるんじゃない?』
あきちゃんの提案は理に叶っていた。
今手元には僕の5年生用の新しい教材とあきちゃんの6年生用の新しい教材がある。
まずはあきちゃんが復習の意味も込めて僕に5年生の教材の内容を教える。
この塾の5年生の教材とは、中学2年までの勉強を全て終わらせるプログラムだ。
あきちゃんの教え方は教師も顔負けでとにかくわかりやすい。
理屈や理論を全て理解して覚えるタイプの人なのでどう教えたらわかりやすいのかをよく理解しているのだ。
僕も同じタイプの人種なので聞きたい事が手にとるようにわかるらしい。
思い立ったら即行動。
そうと決まれば猛勉強をすぐ始める。
自習室の水曜日や塾の前の1時間もほとんどが勉強の時間にして努力した。
その甲斐もあり、僕は6月までの3ヶ月で5年生でやる範囲の勉強を全て終えた。
続いての6年生でやる中学3年生の勉強は範囲は狭い。
6年生は前半の半年で中学3年生の勉強をマスターして、残りの半年は試験対策に模擬試験を繰り返すだけなのだ。
僕たちは模擬試験は必要ない。
まだ誰からも習っていない中学3年生の勉強を教科書を見ながら考えて理解して解いていく。
僕もあきちゃんも幼い頃から自習ばかりやってきたから自習は得意だったので、難なく勉強が進んでいった。
夏休みに入ると時間に余裕が出来たので8月中頃には全ての勉強を終えた。
あきちゃんの持つ6年生の教材は後半に使う模擬テストが大量についている。
僕達は少しまとめてそのテストをコンビニでコピーした。
10枚ずつ合計20枚のテストのコピーを持ち、全ての勉強が終わっている証明をしたいと提案するためだった。
あきちゃんの家でちえさんに答えの掲載されている教材を預かってもらい、僕とあきちゃんは10枚ずつテストを一気に解く。
あきちゃんは合計992点、僕は978点だった。
圧倒的正解率で僕達は塾で勉強する内容を全て理解してる証明をしたので塾を辞めさせてもらう話をスムーズに進める事ができた。
僕の親にも僕が解いたテストを見せるとすんなり信じてくれて辞めて音楽に真剣に打ち込みたい僕の提案を快く許諾してくれた。
信じてくれなかったらちえさんに証人として話してもらう手筈だったが不要だったみたいだ。
こうして僕とあきちゃんはそれぞれの親に、高校になるまでは勉強をしなくても大丈夫と証明したので音楽に専念する事が認められた。
僕もあきちゃんも学校で少し浮いていて、知的好奇心を埋めたいと考えて塾に通っていた。
僕達が本当にやりたい事を見つけて夢中でそのやりたい事をやろうとしている姿が嬉しかったんだと両親は言っていた。
理解のある良い親ですごく嬉しかった。
僕とあきちゃんは今まで平日に塾を口実にして1時間会っていた。
辞めると電車に乗らないと会えないあきちゃんとは平日はあまり会えない。
なので平日は各自家で練習する事になり、土日、祝日などの学校が休みの日に朝から夕方まで会うようになり、みっちり一緒に練習した。
僕の親は、塾にかかっていた月謝がなくなる代わりに僕に1ヶ月1万円という大金をくれた。
交通費やギターの弦を貼り直したり、音合わせでスタジオに行くためにお金が必要だからだ。
塾に通っていた時に食事代でもらっていた1日1000円は、食事代を差し引きして貯めれる金額が毎月8000円くらいだったので自由に使える金額が多くなった。
他の楽器パートはメンバーがいないので、ちえさんが昔一緒にやってたバンドメンバーに録音を頼んでくれていて僕達が練習した曲については音源を用意してくれた。
小学生の練習量とは到底思えないくらい練習をしたのでどんどん上達して曲のレパートリーも次々と増えていった。
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