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生贄と闇雲と奇跡と


  『神は言っていたよ 人間には、もう飽きたってな。』





どうする?


正直、もう勝てないのは明らかだ


奴の狙いは十中八九、生贄だろう


スーアたちが全力で逃げても、おそらく無駄


護衛は全員やられている


強さの次元が違う


俺がこの身体で、いつもの10倍動けたとして埋まらない差がある。


だったら、もう諦めていいんじゃないか?



そうだ


どこか、冷めたとこがあり


クールに判断出来るのが俺の良さでもあったはずだった


どこか達観している、熱さは足りないが


その判断は概ね正しいし、これまでやって来れた実績がある


どんなに抵抗しても無意味


そんなのは完全に理解出来ている…






なのに、



なぜだ…?





『動けぇっぇええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!』





俺の魂は、抗う事を選択した


無様な叫び声をあげて


脳は理解してる、身体はボロボロだ、心は折れている。



だからこそ、”魂”が


最後に魂だけが


諦める事を拒否した_。



黒鉄の騎士がこちらを振り返る



やった、少しでも


意識をこちらに向ける事に成功した


刹那でいい、何が良いのかわからないが…


時間を稼ぐ、後は身体が動けば



黒鉄の騎士は、こちらに手をかざした


瞬間、緑色の光が見えた



気がした



おそらく、魔法だろう


あの野郎、あんなに剣の腕が立つのに

魔法まで使うのか


反則だろう


しかも、タメの時間がほとんどなかった



また俺の身体が吹っ飛ぶ



人間の身体はこんなにグシャグシャになるかと


思うほど、あらゆる骨が折れる感覚がした


正直痛みなんて、ほとんどない


通り越して、もう気持ちよくすらある



「ス・・・・・・・ーア・・・・」





黒鉄の騎士は、私の方を向き直した


ヤミグモがやられた


私は、座り込んで震えていただけだ


相棒がやられたのに、自分はこれから死ぬのだと


自分のことばかり考えていた


土壇場では、人の真価が問われる


私は、この程度の人間だったのだ


相棒より、自分が可愛い 弱い存在…



「スーア…?」



え?



黒鉄の騎士が


私の名を呼んだ



私を知っているのか? 狙いは私か??



「イケニエ…そうか、あの旅か……」



何を言っている?



「生贄なんて、何の意味も、無いんだ… スーア」





黒鉄の騎士は、そのままどこかへ歩き去った


ボロボロのマントを靡かせながら







『ヤミグモ…ヤミグモぉ‥‥‥』




ボロボロと、ボロボロと涙が溢れて止まらない


涙はヤミグモの顔に落ちる



ヤミグモはもう息をしていない


ああ、私はこういう時 泣くんだな


そんな事が解かっただけだった




モレが、生贄の樹の前に向かう



「生贄として参上しました、神よ どうか…」



木の中で何かが光る


石盤? のようなモノが埋め来られてるように見える






『おめでとうございます!ヴァルトリ運営事務局です!ミッション達成です☆』




神々の声が聴こえる


私にも、微かに



『達成の報酬として、以下の内容よりお選びください! 世界に対して何を望みますか~!?』



神々の言語はやはり、何を言っているかわからない



『イーェス、イーェス…イーエス!!!!』



モレは呪文を唱えている




『■■■…■■■■■■■■■■■■…■■■■■■』



神の声は、もう私には聴こえない



パァアアアアアアアアアアアア



優しい光


モレがこちらを振り返る



ありがとう…




そう、微笑んだように見えた



モレは、生贄の少女は 



光の粒になって消えた。




【ヴァルシュツァトリガルは今後も、サービスを充実して参ります♪】







「うっ…‥‥あっ‥‥あ?」




ヤミグモが目を覚ました


私は飛びついて、枯れたと思っていた涙を再び溢れさせた





雪灰はやんでいる





天翼の一族の村では、何人かのシビトが動き出したという


キジマサの母も、ベッドの上で意識を取り戻し キジマサの姿を探した


キジマサさんも、一命取りとめた



しかし、天翼の民は ウザリヌに宣戦布告し各地に散らばっていた



世界は特に変わらないし


それからも、生贄の儀式は続いていった





「そうか、失敗したか」



まぁいい、それも次の計画の一つの道だ



カラマリの村長は、黒い大きな甲冑に身を包んだ騎士と話している


その者のマントは布切れのようにボロボロだった



「ご苦労だったな、”闇雲”…」





時が少し経った…



モレに捧げる花は何が良いだろうと


ヤミグモと、モレの許嫁と話した



彼女は死んでいない、そんな気がする


死者に捧げる花は相応しくない



もっと、優しくて


清らかな花を




これが、私の


相棒の



この世界の、数多ある生贄の旅


その1つの物語…




終劇


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