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雪灰


     私がもしも神だったなら、親が子の命を奪ったり 子が親を手にかけたり

         子供が犠牲になったり、老人が惨めに扱われたり




     そんな事は全部、禁止します。

     起こらないようにします



        『しかし、我々の世界の神はそうではありません。

 

                     そうではないのです…』





天翼の一族は、ある時代では天使の眷属として崇拝され


ある時代では、”トリモドキ”として迫害されていた。


今では、誇り高き翼の一族として尊敬されています。



それは彼らが、生贄を育む民として連盟したからに他なりません。



”ヴァルシュツァトリーガル”


この世界を指す言葉、示す文字、現す敬称



13の大国が、生贄の連盟国であり、40の地域が連なり、僻地の村や町も加盟する


世界を守る為のシステムである。



「まったく、ムラオサから軍資金を貰ったけどさ 子供の小遣いだぜ 傷薬を買ったら失くなっちまう」


スーアがずっと文句を垂れいる。



「ごうつくばり!ケチ!!」


「村長も、昔はああじゃなかった…でも、奥さんと娘さん2人がいなくなって変わったんだ」



なんとも言えない空気が流れる


「お前が、村長は搾取してるって言ったんじゃないか!ヤミグモ」


「そうだよ、天引きとも言える それは事実、でも昔はそうじゃなかったって話さ」



それに、ムラオサは別に金を集めたからといって豪遊している訳ではない

俺たちの村じゃ、遊びや贅沢も多寡が知れてる


なら、村長はなぜ 金を貯め込んでいるのか…?


恵まれない子供達の為のお金、とかなら感動的だが



そもそも、親もいなくて

偶然出会った剣士に育てられた俺たちも、なかなかに恵まれない子供達だ


今は、大人というには経験が少なく 子供というには可愛げがない見た目になってしまった。



天翼の一族の村についた


リージマハ地方の小さな村だ

翼の民は世界各地に散らばっているが、この村のある場所こそ翼の民が最後に休まる場所

最初に興した村、だと聞いている。



”雪灰”が降っている


雪ではない、灰でもない

どちらにも見える、冷たく仄かに火を感じる 降物だ。


空にいる大きな魔物が降らせているというのが、定説であり 常識だ。


あの、墓所に咲く花が良く咲く地方で降り積もり

作物には害になるが、呪いの花は平気であることから


死が積もる様、死を隠す灰

とも、一部で呼ばれている。



村につくと、葬式のような様子だった


そして、実際そうなのだろう

外には、藁のむしろは掛かっているものの

野ざらし同然で、大量の遺体が並んでいた


雪灰がうっすら積もり、あの花も手向けてある。




キジマサ「私が付いていながら、多くの部下を死なせました…!申し訳ありません!!


鎧を身に纏った、綺麗な女性が深く首部を垂れている


おそらく、族長たちがいるテントのような建物に入ったのだが

取り込み中だったようだ



族長「よい…お前がいなければ全滅していたであろう…よくぞ生きて戻った」



「しかしっ!!!あなたの息子様まで…!!!!!!」



地獄のような状況のようだ


他の村に生贄守護の依頼を出すなんて、よっぽどだと思ったが

本当によっぽどだったのだ



「あの子も、天翼の戦士だ 覚悟の上だった…もう休めキジマサ」



うなだれて、女戦士が出ていく 背中の立派な蒼い羽がボロボロで小さくたたまれていた

眼に生気など微塵もない。



「失礼した、客人 カラマリの村の戦士だね 随分若い」



いきなり本題から入る



「急いで、この村の娘を生贄として捧げて来て欲しい」



犠牲者が出たばかりなのに、次は生贄か

神様はなんて欲張りなんだ



「期限が迫っているのですか?」


「ウーザリィーヌ王国から、せっつかれていてな 早く出さねば重税と賠償を求めると」



大国は、生贄の儀式に連盟しながら

その犠牲者を、小国や力を持たぬ村々から なかば脅迫のような契約で選出させていた。


”搾取”なんて言葉では生温い


この世のエゴが全て放り込まれて煮込まれた、下劣な有り様




それが、生贄システムを支える根幹の一つだった…。








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