第49話(最終話)「願わくば、この幸福が一時でも永く続きますように――」
おいでませ。
これが最終話となります。最後までよろしくお願いします。
◇
「私ね、多分薫風さんに初恋していたと思うんですよ」
「「「ぶっ!」」」
『よすが』にいたお客・璃月・千秋が一斉に空気を吐き出した。薫風ですらコーヒーをいれていた手を止めて。
だって突然心霊が告白したから。それも皆に聞こえる声でだ。
「葵月さんに最期に伝えたのもこの真実ですよ」
「そ、そうか」
珍しくキョドっている薫風。
心霊はそれを見て面白そうに笑って言葉を続ける。
「薫風さんと出会ったのは偶然でした。
喫茶店巡りをしていた折にお見かけしたんです。
奥さまを亡くされても気丈に振る舞っていた貴方を。
けれど、淋しそうに見えたんです。
その時はただ同情を感じたんだと思っていました。
でも良く考えたら違うかなぁ、って。
だって同情なら今までいくらでもしてきました。
一緒にいて支えてあげたいと思ったのは薫風さん、貴方が初めてだったんです。
一目惚れと言うモノだったのでしょう」
「過去形か」
「過去形です」
お客と璃月と千秋が心霊を凝視している。耳だって最大限に大きくなっている。一言一句聞き逃すまいと。
「今はね」
近くにいる人物――璃月の手を取る、心霊。
「きっと璃月くんに恋しています」
「――ッ」
璃月の顔色が真っ赤に染まった。まるで今はナリを潜めている左目の花のような色に。
「私、貴方の血筋に弱いんですかねぇ」
「ふっ。
璃月は俺に似ているか?」
「ええとても良く」
笑いあう二人。
動揺するお客。
固まる璃月。
複雑な表情を浮かべる千秋。
それら全てを見回して、心霊は一つ呟くのだ。
「願わくば、この幸福が一時でも永く続きますように――」
バグは今も生まれ続けている。
【ドリーミー】も残っている。
ブラッドサンドも活動を続けるだろう。
問題はあれど、この場は確かに幸せに満ちていて。
だから心霊は今日も、微笑みを浮かべるのだ。
了
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