第二話:乞食は犯罪だって言ってんだろ!〜同担拒否を名乗るなら課金しろ〜
アスタリスク*ファイブ。
最近話題を呼ぶ基本無料(一部アイテム課金要素含む)のソシャゲだ。
まあ……ぶっちゃけ言うとイケメンアイドルのゲームである。
主人公は五人の新人アイドルグループ「*5」のマネージャーに任命される。
表上では歌を歌い、ダンスを披露して、時にはTV番組にも出演する。芸能界の闇、キャラクター達の過去や苦悩などなどの試練などがストーリーで繊細に紡がれているのだ。勿論フルボイス。
ほら、一見「よくあるアイドルゲーだわ〜〜」ってなるでしょ?
実はこの*5、表上はキラッキラのアイドルなんだけどその実態は街を守るヒーローなんだわ。特殊能力「ミトス」に目覚める為の薬を国に投与させられた五人。この国ヤバくない?
後に五人の他に、カリスマ四人組アイドル「銃剣」、国民的三人組アイドル「Elー dora」、悪役っぽい雰囲気漂う二人組アイドル「ゲフェングニス」もこのヤバい薬を投与されて力に目覚める。
つまり簡単に説明すると、表はアイドルとして国を盛り上げて裏では謎の敵と戦うヒーロー。(ただし、正体は隠さないといけない)
さて、ソシャゲといえばガチャシステムが問題だ。このゲームはキャラクターカードのレアリティの順番として星1、星2、星3、星4、星5が存在する。一番レアリティが高いのは勿論星5。天井はあるから最悪十万くらいぶち込んで課金すりゃいいけどピックアップは相変わらず仕事しませんね。
キャラクターカードを育成し、編成して挑むクエストはまさかのコマンドバトル。これ、ほんとにアイドルゲーか? ストーリー激重だしロールプレイングに路線変更したらどうだ????
とはいえ近年の女性向けコンテンツとしては高クオリティの絵と豪華声優陣、ストーリーの練度からかなりの人気である。
私——谷崎 篠、こと「ザキさん」。
そして彼女——晴川 かえこ、こと「のむら」はこのアスタリスク*ファイブに激ハマりしていた。
それとほぼ同時期にSNS上でもフォロワー同士になったのだった……。
時折流れる、のむらの「おまいうブーメラン」を横流しにしながらも——。
「はぁ〜〜海くん……」
彼女は通話でこんな事を漏らしていた。
名嘉 海くんという、*5のセンターの男の子。エネルギッシュで皆に元気を与えるような歌声を持つ。*5のメンバーの中で最も「ミトス」への適合率が高く、故に戦闘力も高いが相応の代償を持ち……ってそれ! そこ! まだ明かされてない! 何なんだよ代償って! しんどいわ!!!
そんな彼には兄のように慕う親戚が居た。
黒柳 照。 海くんの少し歳の離れた親戚で、カリスマ四人組アイドル「銃剣」のセンター。芸能界からもかなりの注目を集め、その年相応の容姿と適度適切なファンサービスから圧倒的女性人気を誇る。海くんとは、まあ、色々ありましたね……(長いから省略)
彼の言動としては、海くんが「ミトス」を投与されたって聞きつけた時は「ミトス」開発責任者の内線電話のコードを切って外部からの通話を遮断させ、メンバー全員引き連れて包囲。過激か????
まあ後は脅して自らもメンバーと一緒に「ミトス」を投与して貰って共闘するの!! 少年漫画かよ!!
のむらは海くんが好きになり、私は照くん推しなのだが……。
創作と言っても、色んな種類の創作があるものでして。
一つの世界観を共有してそこにオリジナルキャラクターをぶち込むのが主に私がやっている創作。彼女もそんな感じ。
今回はアスタリスク*セブンの世界観やキャラクターが存在しているという設定で、それを題材にそこにオリキャラをぶちこむっていう創作。
……なのだが。
「ねえ〜! うちよそしよ、うちよそ!」
うちよそ、とは、要するにうちのオリジナルキャラクターと他人のオリジナルキャラクターとの交流の意味である。オリジナルキャラクターって長いしオリキャラっていう単語でもういい?
うちよそは確かに嬉しいし楽しい。
楽しいんだけどさ……。
うるせえ〜〜〜〜〜〜!!!!
ってくらい彼女はうちよそ! ってすぐ言ってくる。
最早鳴き声。
「ザキさん〜! うちの子書いて描いてえ〜!」
って乞食も以前に増してエスカレート。
私どないしたらいいの??
後はアスタリスク*ファイブについて——。
「私、海くん同担拒否だから、皆配慮してください!」
お前同担拒否で配慮強要しろって偉そうな事言うっつーならまず海くんのカードレベマスキルマにしてから言えや!! 完凸なんて贅沢な事は言わねえからせめてそれくらいはしろ!!
そんで課金しろ!! 公式に金を落としてから言ってください!!(私は照くんに課金してちゃんと完凸レベマスキルマしたわ畜生)
そして奇しくも、私は膝から崩れ落ちた。
なんと、SNSの繋がりたいハッシュタグで十年もの付き合いの私の相方が、のむらと繋がったのだ。
逃げてえええええええ!!!!
そいつ、やべーやつだからああああああ!!!!
全力で注意喚起したかったのに、何故か困らせちゃったらどうしようという思いで私は言えなかった……。