第一話: 悪夢のはじまり〜どうしてこうなった?〜
友人監修、ヒューマンドラマついに開始!
短めになりますが、最後までどうぞよろしくお願いします。
諸事情もあり結構フィクション混ぜておりますがほぼ実話です。
——某会場。
晴れやかな青空に、ほんのりと暑い日差しを送る太陽。時刻、十一時に幕が開けた。
「設営完了……っと」
ここまでの準備として自分のスペースに群青のテーブルクロスを敷き、新刊と値札、お品書きを配置。新刊やお品書きに隠れて表からは見えないようにコインケースを置く。
パイプ椅子に腰を下ろすと、公式アナウンスによる開始の合図と共に拍手が会場に響いた。入り口には一般参加の人々が会場入りし、限られた空間に熱量が篭る。
やはりサークル参加は楽しいものだ。楽しい時間を同士達と交流出来るのだから、一度参加したら癖になる。そして、私の新刊の分厚さも一度分厚くしたら癖になる。
私——谷崎 篠。二十六歳は、アニメやゲーム、漫画などなどが好きであり、何より創作物が大好きである。特に自分作ったオリジナルキャラクターの物語の小説や絵を描くのが好きだ。
どちらかといえば小説メインで活動している為、今回出している新刊も小説である。Web投稿サイトなどでは活動してはいないものの、昔はよく携帯サイトを運営してそこで執筆していたのは懐かしい思い出だ。新刊を出す度に以前より文体は上手くなったよなあ、などとちょっとだけ誇らしくなる。
とはいえ、私のサークルは大手という訳ではない。まちまちと一般参加者の人がお手に取ってくれている程。
隣の超可愛い黒髪ロングのお姉様(年齢は分からないけど)の方は大手のサークルさんらしくひっきりなしに一般参加者が新刊を手に入れてる。
やっば、超すげえ……などと横目でその様子を見ていると、目の前に一人の女性が立ち止まった。
「ザキさん、ですか?」
「あ、はい。そうです」
ザキさん、とは私のSNS上のハンドルネームである。
「あの! ファンです! 私も創作してて……よければメッセージとか、通話アプリとかでいいので繋がりませんか?」
オタク特有の語彙力のなさのままに彼女は申し出てきた。ファンだという言葉には確かに嬉しいので首を縦に頷いた。
彼女の本名は晴川 かえこ。ハンドルネームは、〝のむら〟というらしい。
自己紹介と好きなジャンルを簡単に説明して、盛り上がっていた——。
その時の私は、思いもよらなかっただろう。
これが悪夢の始まりだと言う事に——。
*
は????
なんだこれ、私の世代あるあるが通用しねえぞ????
おまけに通話してる時に後ろのご家族様もうるさいな????
あの即売会以降、のむらと通話やメッセージをして分かった事がいくつかある。
その一、世代あるあるが通用しない。私の相方やフォロワーはほぼ私と年齢が同じで、世代あるあるが通用する。
「携帯サイトの裏歴史」「某ジャンルの略称」「当時流行っていたジャンルの話題」諸々の事であるが、彼女——のむらには一切通用しない。なので、当然話題も枯れる。
でも実際あの即売会で対面した時には、自分より歳上のイメージが無かったのだ。
「(え……いやいや、まさかな)」
あり得ない想像をしてしまって、大袈裟に首を横に振ると問題の彼女から一件のメッセージが飛んできた。あまりにもタイムリーすぎたので一瞬身を引いたが、どうにかスマホを手に取って通知を確認する。
通話をしたいとのことらしい。まあそれだけならいっかと返して、通話アプリを開いた。さぞ当たり前の如く彼女の通話越しの家族の声がうるせえよ!!!!!!
どうにか「ご家族大丈夫?」と聞かずに我慢した私を誰か褒めて欲しい。誰もいねーわ!!
『今度また即売会でるのー?』
「うん、出るよ出るよー」
『売り子で行っていいー?』
ンン——ッッ!!
私の脳がフル回転を始めて計算し終わった結果、絶対に面倒な事になりそうだと思った。
「うーん、金銭の方が色々あるからなあ……」
遠回しに断ろうとしても、彼女は粘った。どうしても売り子で行きたいらしい。諦めろって言ってやりたいのに言えない私のチキン。てかここまで遠回しに断ってもまるで話通じないのヤバいな? 本当にあのフラグまであるぞ。
すると、何を思ったのか——。
『あのさ、売り子にうちの姪っ子とかどう?』
は???????
いやあの、頒布する本が成人向け本なんですけど??????それに姪っ子さんと対面した事も話した事もないのにどうしろというの?????
流石の私も開いた口が塞がらない。話を聞くにまだ中学三年生らしい。いや問題大有りなんですけど!!!!!
あのね。分からない人向けに説明するんですけど、売り子とはいえ頒布してる本が成人向け本。何か言われたら責任取りたくないじゃん!! それくらいの常識知ってろよ、のむらお前ェェ!!
『こんな子なんだけど』
と、通話アプリのメッセージの所に姪っ子……らしい、の写真まで送りつけてきた。どうやら女の子っぽい。
「いや、頒布するの成人向けだし……金銭のやり取りもあるから……」
そう何とか濁して断ったのだが、私の嫌な想像は確信に至りつつある。
もしかして、のむら、貴女……未成年か????
確かにその方が納得は行く。
だが確定と言う訳でもなく通話は何とか終了したが、彼女は私が絵を描けるのを知ると「うちの子描いて〜」と何かと擦り寄ってくるようになった。別に自分が描きたいときにはよその子も描くけど、強要はあまりにも良くないし、正直言うとここまで擦り寄られるとクソですね!!
まあそんなこんなが続いた訳ですよ。
そして私の想像通り。
——数週間後。
某ジャンルのコラボカフェに行く話になった時、のむらの衝撃の一言が走る——!
『実は私、未成年なんだよね』
は?????????
え?????????
あんた、アラサーって言ってたよね??? まあ見えなかったけど(イズ即売会)
う、うわ〜〜〜〜年齢詐称だあ〜〜〜〜〜〜!!!!
あれかな。誤魔化せないって思い、ザキさんにならいっかな〜〜って思ったのかな????
反応にめっちゃ困った。え? 皆も困らない????
ヤバい。 私彼女に顔バレもしてるんだよな(イズ即売会)
ど——やって逃げようかなあああああ!!!!