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マデリーンの言葉に、バリー先生がくいっとメガネを持ち上げるのが見えた。

ゲーム内情報によると、これはバリー先生が動揺した時に出る癖だったはず。



「ただ、学園の規則では教師と生徒の恋愛は禁止されております。もし、そのような事態になれば教師は解雇、生徒は退学処分になるでしょうね」


「厳しいんですねー」


まぁ、あたしは別にバリー先生には興味ないからどうでもいいんだけど。

バリー先生が、ズレてもいないメガネを再度持ち上げるのが目の端にチラリと見えた。


「加えて、成人が未成年者と肉体的な関係を持った場合は、淫行条例により二年以下の懲役、30万以下の罰金が課せられることになっています」


「淫行条例なんてあったんですねー」


「えぇ、私の父が主体となって昨年可決されたばかりの法律ですわ。未成年者を健やかに育成することは、国家の務めですもの」


そう言って、マデリーンは不敵に微笑んだ。


「えー、じゃあバリー先生は32才で年齢とかあたしの二倍もあるし、思いっきりアウトじゃないですかー。付き合ったら学園クビで無職だし、えっちなことしたら二年も牢屋に入らなきゃいけないし、帰ってきたら前科者ですよー。そんな不良物件むりむりー。だいたい、そんなリスク冒してまで自分の生徒と付き合いたいなんて馬鹿、存在すると思えませんけどねー。バリー先生だって、そんなのお断りですよ、きっと」


いっきにそう言い切ると、バリー先生はぶるぶる震える手でカップを持ちながら、紅茶を飲もうとしていた。

紅茶溢れそうで、めっちゃ怖いんですけどー!


マイケルは後ろ向いて小刻みにぷるぷる震えているし、ナサニエルとディエゴは「今日は暖かいな」「本当だな」という会話を熱心に繰り返している。


あたし、なんか変なこと言ったかなーってちょっと心配になったんだけど、ルーシーとヴェロニカは相変わらず和やかにドレストークを交わしていたので、気のせいだと思うことにした。


あ、サムは幸せそうにチョコムース食べてた。


「そう言えば、バリー先生。学園長の娘さんとお見合いの話が持ち上がっていると伺いましたわ」


ぶるぶる震える手で紅茶を飲もうと難儀しているバリー先生に、マデリーンが話しかけた。


「まぁ、バリー先生お見合いなさるの?」

「詳しくお伺いしたいわ」


ルーシーとヴェロニカが、歓声を上げてその話に飛びついてくる。

うんうん、女子そういう話好きだよねー。イケメン教師の恋愛事情。


「別にまだ決まったわけでは」


バリー先生はカップを下ろすとメガネをくいっと持ち上げた。

あーそーね。下ろしたのは正解だね、そのカップ。


「実は私、お見合い相手の方と面識がありますの」


澄まして暴露したマデリーンにルーシーとヴェロニカが再度飛びつくように話しかける。


「まぁ、お知り合いなんですの?」

「どんな方?ぜひお聞かせいただきたいわ」


「レベッカ先生は、私が小さい頃に家庭教師をしてくださっていた方なの」


「まぁ、マデリーンさまの家庭教師をなさっていたなら、きっと優秀な方なんでしょうね」


「えぇ、とても才能に溢れたユーモラスな方で、家庭教師の仕事が終了したあと、女性で初めて魔法省の職員に採用されましたのよ」


「魔法省の職員…」


バリー先生がぽつんと呟いた。


ラブマジをやり込んだあたしは知っている。

バリー先生は本当は魔法省に就職したかったけど、家庭が貧しかったために上の学校に通うことができず、魔法省への道を諦めてしまったことを。


「まぁ、女性初の魔法省の職員だなんて」

「努力されたのでしょうね」

「才能もあったのでしょうね」

「素晴らしい方ね」


努力しても才能があっても、夢が叶わない人はたくさんいる。バリー先生もそのひとり。


それで、お見合いの席では、レベッカに対するコンプレックスで彼女に冷たくしちゃうんだよね。


いい歳して子どもっぽいんだよ、おっさんのくせに。今も、イジけて下向いてメガネ拭きまくってるし。


「ご自分で仰っていたのだけど、重度の魔法オタクなんですって。なんでも、学生の頃にジェフェリー・ドノヴァン著の『詠唱魔法の流布とその軌跡〜マジック・ロードを訪ねて』という本を読んで感銘を受けたのだとか」


「なんと、その本が愛読書なのか?」


マデリーンの言葉に、バリー先生が拭いていたメガネから顔を上げた。


その本はバリー先生にとって人生のバイブルとも言える本。二人が仲良くなるには、お互いの愛読書が同じ本だったと知る必要があるのよ。


「えぇ、本への想いが昂じて周囲の反対を押し切ってマジック・ロードへご旅行に出かけられたのだとか。ジェフェリー・ドノヴァンの歩いた道のりを徒歩でなぞられたそうですわ」


「大人の男性でも大変な道のりだと聞いています」


「とっても情熱的な方なんですの」


「それで、マジック・ロードを歩いた感想はなんと?」


「それは、お見合いの席でレベッカ先生から直接伺ってくださいな」


「僕も何度かレベッカ先生とはご一緒させていただいたことがあるのですが、とても面白い話が聞けると思いますよ」


マデリーンの言葉に、さっきまですっかり空気だったマイケルが合いの手を入れる。


「二人でお話をお伺いしていて、笑いが止まらなくなってしまったこともございましたわね」


「まったく、あのラクダの話は特に最高だったな。いまだに思い出すと笑ってしまいそうになるくらいだよ」


マデリーンとマイケルは、顔を見合わせて仲良さげにくすくすと笑い合った。


なんか、仲良さそうじゃない? マデリーンは、マイケルの王太子という立場にしか興味がなくて、マイケルはそんなマデリーンを軽蔑してるって設定だったはずなのに。


「それはどんな話ですか?」


いつのまにかメガネをかけ直したバリー先生が、身を乗り出すように尋ねる。


「だから、それは直接聞いてみてください。僕らが話したのでは、おもしろさも半減してしまいますから」


「レベッカ先生の話術と情熱があってのあの語り口ですものね」


仲良さげに微笑みあうマイケルとマデリーン。


「そうか、そんなに情熱的でユーモアに溢れた女性なのか」


空を見上げてぽつんと呟くバリー先生。

そんなバリー先生の前に、サムがすっとプリンアラモードを差し出していた。


ふと気がつくと、マイケルと微笑み合っていたはずのマデリーンがこちらを見ていた。


目が合った途端、ニヤリと笑って頷いて見せる。完全にドヤ顔だった。


なので、あたしもテーブルの陰からサムズアップを返しておいた。


バリー先生とレベッカのお見合いは、きっとうまく行くだろう。


そんなあたしの満足感は、あっという間に霧散した。


「ったく、女ってのは恋愛だのドレスだのアクセサリーだの、くだらない話がほんと好きだよなー」


ナサニエルの放ったデリカシーのないひとことによって。


書いたものをまるっと消してしまいまして、マッハで再度書いたのでところどころおかしなところがあるかも知れません。

前のが絶対面白かった。やっちまった。

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