4 ホワイ ドント ユー ラン?
「あわわわわわ!!!」
「あわわわわわわわわ……!!!」
お手本のようなあわてぶりを誰に見せるでもなく見せる二匹。見ているのはスズメバチだけだし、多分視力的によく見えていない。
「あ、あの数は無理だってえ!!!」
今まで相手して撃退してきたスズメバチは、せいぜい単独か数匹ずつ程度である。一度に数千匹をも相手取った経験など、当然無い。それは、その状況が即ち死を意味するからだ。
「終わった……!私達、せっかく生まれ変わったのにもうこんなところで死ぬんだ……!」
「終わるなー!!!タテハ戻ってきてー!!!」
そうこうしているうちにスズメバチの軍団が目の前まで迫ってきた。
「「ぎゃ〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」」
バサバサバサバサ!!!
生命の危機に瀕した二匹は、慌てて本能的に羽を振ってスズメバチの接近を拒絶した。さっきの被害がトラウマ気味だったため、完全に全力ではないが……
さて、大地に根を張った木々が吹き飛ばされるような強風を起こせる力。それがスズメバチのような、木々とは比べ物にならないほど軽い生物に向けられれば……一体どうなるであろうか?
「……あれ?」
命を刈り取りにくる恐怖の襲撃に身構えて目をつぶっていたタテハは、予想されうる衝撃と痛みが一行に来ない事に困惑して目を開いた。
スズメバチの軍団は、爆風に煽られた事でかなりの距離まで吹き飛び、散り散りになっていた。
「……コムラ、いけるよ!!!」
「え?……うわ、ホントだ!」
一匹じゃ、この数は無理だ。でも……私達二匹なら!
二匹はお互いに向かいあって、抱きつきあう。
「えいっ!」
バサッ!!!
散り散りになったスズメバチ達は、しかし勇敢にも外敵と認識したタテハとコムラに果敢に突っ込んでくる。群れが散らばった事により、むしろ全方位から襲撃できるようになり対応しにくくなった。
巣を壊された怒りを、己と相手の命をもって精算する。そんな気概すら感じられる猛攻であった。
しかし、風の壁に阻まれて吹き飛ばされる。
「やあっ!!!」
バサバサッ!!!!!
一匹では散らばった相手に対して手数が追い付かず、いずれ包囲されて滅多刺しにされていただろう。しかし、二匹はお互いに向かいあう事によって、前方に風を送りにくい弱点をカバーした。これなら、反動で姿勢を崩して隙を晒す事も無い。近付く事すら困難な、風の要塞が完成した。圧倒的な数的劣勢を前にして、しかしタテハとコムラは相手の戦力に必死に食らいついていた。
スズメバチ達が特攻する。タテハが追い返す。スズメバチ達が特攻する。コムラが追い返す。スズメバチ達が特攻する。タテハが追い返す。スズメバチ達が特攻する。コムラが追い返す。
その繰り返しが何巡か経過したのち、スズメバチ達は疲弊し諦めたのか、はたまたフェロモンが吹き飛んで興奮状態が落ちついたのか、定かではないが兎に角突然二匹への攻撃をやめ、遠くへと去っていった。
「はぁ、はぁ……」
「ぜぇ、ぜぇ……」
生死を賭けた激しい運動に加え、吹き荒れる強風によって呼吸が困難になっていた二人。人間の口から空気を取り入れ、肺呼吸によって必死で酸素を血中に巡らせる。
「「た、たすかったぁ……」」
生命の危機の回避に成功し、安堵して互いにもたれかかる二匹。しかし……安寧の時は、長くは続かなかった。
パキパキ、パキパキ。倒れた木々の枝が踏み締められる音に、二匹はバッと振り向く。
「う、嘘でしょお……」
食物連鎖の頂点。絶対的捕食者。力そのものの権化。肉弾戦の信奉者。巨大さの象徴。脅威そのものの姿。
二匹が知る限りの最強最大の戦闘生物、森のクマさんが二匹を見据えていた。
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