3 激おこブンブン蜂
「うぅ……クヌギおじーちゃん……」
「ごめんねえ……」
根元からポッキリ折れてしまったクヌギおじーちゃんに、ハイハイで近付き泣きながら懺悔する二匹。ずっと樹液のお世話になっていたクヌギおじーちゃんを、己自身の力でポッキリ折ってしまった事のショックは二匹にとって計り知れなかった。
「ごめんねえ、森のみんなぁ……」
同様に、雑木林の生き物たちへの罪悪感も湧き出てきたいた。突如引き起こされた大惨事に対し、虫、鳥、獣、雑木林に住まう全ての動物達が思い思いの鳴き声で騒がしく鳴き、飛べる者は飛び交って大騒ぎしていた。そして、正体不明の危険から逃げるように去っていく。
森の生態系の多くの生物たちは、オオムラサキであるタテハ達にとって、ほとんどの生物種に対して餌の取り合いや縄張り争い、被食者と捕食者、巨大な破壊者といった何らかの利害関係が成立している競争相手であった。生存に関わる外敵であった。
しかし、それはあくまで生存のための闘争であり、何も特定の相手を憎んで戦っているわけでは、勿論なかった。むしろ、根本的な所では、「同じ地に住まう仲間達」という仲間意識すら持っていた。
故に、意図的ではないとはいえ、二匹はこの大惨事を引き起こした事を森の生物達に対しても申し訳なく思っていた。巨大化した事で、主な競争相手であった昆虫達に対して圧倒的有利となった余裕の為せる上から目線でもあるため、勝手な話ではあるのだが……
「……飛べそうには飛べそうだけど……」
「うん……」
これほどの力があるならば、従来の感覚通りの飛行は余裕を持って可能であろう。
しかし、その度に人間サイズの体重を支えるための風圧を発生させていては、たまったものではない。主に、周囲の生命体が……
相当力を抑えても、それこそ支える体重と同等、人間程度の体重が吹き飛ばされる規模の風圧は発生してしまうだろう。
「緊急時以外は封印だね……」
「だね……」
一々余計な外敵を呼び込みたくはないし、何より移動のたびに被害が出るのは気分のいいものでもない。大人しく、普段の移動は歩行に頼るしかなかった。そう、不慣れな二足歩行で……
……ん?コムラの後ろの方、遠くから橙色のもやが近付いてくる。あれは……
「……コムラ!!!後ろ!!!スズメバチの群れ!!!」
「うそっ!?」
二匹は向かい合っていたため、タテハがいち早く異変に気付く事が出来た。先程の爆風で巣を破壊されて興奮しているのか、単独ではなく大群でこちらに向かってきている。その数、数千匹。完全にブチ切れモードである。
今の自分達なら、虫や小型動物達に対しては圧倒的な体格差がある以上、危険を感じる必要はないはずである。しかし、毒を持っている生き物、それも大群となると話は別だ!
そうこうしているうちにも、スズメバチの大群はみるみるうちに迫ってくる。
「どどど、どうしよう!!!」
「どうもこうもないよう!!!」
少しでも『面白い』『続きが気になる』、『更新早くしろ』『エタるんじゃねえぞ……』と思っていただけたら、
この小説を『ブックマークに追加』したり、このページの下部にある評価欄【☆☆☆☆☆】から『評価ポイント』を入れていただけたりすると、飛び上がって喜びます(蝶だけに!)。
ぜひ、ブックマークして、追いかけてくださいますと幸いです。