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チョコレートの夜  作者: だるまさん
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「好きです、大好きです♡」

「そうか、ならめっちゃボディピアス付けてる女性の美脚のホルマリン漬けが欲しいな。」

「そう仰ると思いまして、私の足でよかったら、差し上げますけど……」

「お前のごつい短足のどこが美脚なんだ?言ってみろ。」

「大変失礼致しました。今日も麗しゅうございます、世界中のどんな足もユチカさんのおみ足に敵う足はありませんわ。」

「そんなこと聞いてない。とっとと失せるか黙れ。」

「んんふぃわふぇごふぁふぇまふぇん(申し訳ございません)」

「死ね。」


今日も今日とて、こいつは俺に熱烈なアプローチをかけてくる。全く迷惑極まりない女。

恋愛には種類があるだろう。両思い、片思い………ストーカー。こいつは最後のヤツだ。

しかし、何故ストーカーのこいつをそばに置いているかと言うと、単純な好奇心もあるが、俺のためならばなんでもする、という点が大きい。

コイツの名前はニャロ。猫みたいな名前だが、性格は豚野郎…雌豚野郎だ。身長は155センチくらいのチビで、女にしては重い(筋肉で)。顔は普通。大人しそうな、メガネの女だが、性格は真逆。

好きです、愛してます、結婚しましょう、一生養います………

めっちゃアプローチしてくるやんけ。

それで持って、ヤンデレという特性を兼ね備えている。上記のアプローチにストーキングと盗撮と殺害未遂(被害者は俺)が追加されたよ、やったね!

……………とある女性とワンナイト…甘い夜が始まったかと思いきや、床をパカっと開けて出てきた時は流石にビビった。

そして、さらに厄介なことに、こいつは強い。バケモノじみた能力を持っており、過去にプレゼント(と称し渡)した爆弾達によるニャロ殺害計画はことごとく失敗だった。


「ユチカさん、ユチカさん。」

「なんだ。」


やめろやめろ、この女がこういうキラッキラした純粋by乙女みたいな目をして話しかけてくる時はろくなことが無いんだ。


「もう直ぐバレンタインですよ。」

「だからどうした。」

「バレンタインのチョコは何がいいですか?ボンボンショコラ、割りチョコ、ココアマカロン、プリンアラモード、ブラウニー、チョコレートクッキー?」

「いらね…」

「あっ、チョコレートコスモスって手もありますよ!!」

「お前の死体があれば十分だ。」

「えっ、私!?嬉しい嬉しい!!頑張って用意します。」


ニャロは一人でピョンピョンと飛び回り、きゃーやら、嬉しいやら、叫び回った。そして一通り興奮し終わったら、フラフラと近づいてきた。ドスンと俺の横に座り、ハアハアと息を荒げて、最高の私の死体をあげます♡と囁いた。

何ですか?発情期ですか?年中ですか?

こいつは多分、自分のパーツを切り離しては死んで回復し、全てのパーツが揃ったらくっつければ死体になる。と考えているのだろう。俺は死ね、永久に死ねと言っているのだが。あと、お前みたいな雌豚に囁かれてもどうも思わねえよバカ。

興奮しきった顔でふへふへ笑ってるこいつは変態だ。

……………クソ、いい身体しやがって。


「ユチカさぁん、今日は何にも無いんですか?」

「仕事が入ればある。」


ニャロはさらに、俺の首に手を回し、胸を押し付ける形で抱きついた。


「仕事しなくても、私が養ってあげるのに………」


抱きつくな、締めるな、苦しい。

………クソ、いいおっぱいしやがって。

余計なお世話だ。これを言うとさらにうざったくなるから言わない。普段は仕事めんどくせぇとか考えてる俺も、この時ばかりは急遽でも仕事の依頼が入って欲しい………


〜リリリリリ〜


ナイスタイミング。黒電話がなった。


「ニャロ、離れろ仕事だ。」


俺は振り払うようにして立ち上がる。不満そうにしていたが、ニャロは素直に手を離した。が、こいつ普通に俺の仕事についてくる気じゃ無いだろうな?


「むーっ!いいですよお。付いて行きますから、私今日は………暇じゃないです…」


やったーーー!!!俺は心の中で勝利の雄叫びをあげる。こいつに付いてきてほしくない理由として、いくつかあるが、その1つに、ニャロは俺の仕事までやろうとしてしまうから俺は常連客から、たまに、「あのねーちゃんが良かったなぁ………」「可愛い嬢ちゃんはいないのかい?」など、ぶつくさ小言を言われたりすることがある。

いや、ニャロ店員じゃねーし。俺一人の店だし、不法侵入してる女がストーキングして仕事までついてきてるんだよ!!


「そうか………残念だな。ニャロお前はしっかりと仕事をこなしてくるんだ。俺は仕事のできる女は好きだぞ。」


これでニャロは付いてこない。褒められるとすぐにそれ通りに行動するんだこと女。時々バカすぎて心配になるが………まあ、ゴキブリ並の精神を持ち合わせているこいつなら平気だろ。

心の中でそう決めつけた。

実際そうである。


「ふえぇぇぇえうわあぁぁぁん♡」

「喘ぐな喘ぐな。」

「言ってきます!!頑張ります私!!ええ、ええ!それはもう!行ってきまーーーす!!!」


ニャロは店のドアをぶち破って走って行った。金具が取れたとか、そんなレベルじゃなくて、シュレッダーにかけたかのように粉粉になったドアの破片が俺の足元に転がってきた。弁償しやがれあのクソ女。

さて、電話………は、もうきれていた。取り敢えず、掛け直して謝ろう。ニャロは後でペナルティでも課しておこう。


***


2025年、第三次世界大戦が始まった。

人間とは、過去の過ちを繰り返す生き物で、第一次世界大戦と同様、総力戦、それに加えてサイバー戦や核兵器の使用による、戦火が巻き起された。国際連合はほぼ解散状態になり、秩序も何も無い、ただの戦争…


その中で最も愚かだと言える国は我が国、日本であると言えるだろう。

日本が作り出したのは、精神に干渉し、人間を内から壊すドラッグのような…いや、ドラッグよりもタチの悪いウィルスである。

そのウィルスの名前は「バレンタインウィルス」。一般的にはバレンタイン症候群と呼ばれる。由来は恋愛感情に基づき、このウィルスに感染すると血がチョコレートのように甘く、茶色く、トロトロとし始めて、さながらチョコレートになってしまう事から。症状は極めて攻撃的な性格になってしまい、殺人衝動に襲われる事、身体能力が有り得ないほどに高くなる事。


そして、女性にしか感染しない。また、恋愛感情からの攻撃性の餌食となり殺害されるのは、男性。

………しかし、全ての女性が発病し、発症すると言うわけでもなく、8割の女性は感染した時点で死亡する。感染源は不明。だが、着実に数を増やし、今や女性の人口は男性の十分の一。その男性も発症した女性に殺害され続けるため、少しばかり数も減った。つまり、世界人口自体が元の半分以下になったと言う事だ。女性は重宝され、「特区」と言われるドーム状のコロニーの様な場所に集められる。男性はその周りをうろつきながら生きていくしかないのだ。


今、世の中は女性が力を持つ時代である。




………………まあ、今は2150年で戦争が起きたのはもう100年以上前で、核戦争によって文明崩壊のち、新たな文明をまた築いた。それが今の世界なのだけど。

昔の文明よりは栄えていないらしいが、それなりにレンガの建物もたくさん建っているし、また我々は歴史を繰り返すのではないかと、俺は考えている。

そう考えながら、いつニャロのバレンタイン症候群は治るのかとしょうがないことを、今日も模索している。

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