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プロローグ second

全身に嫌な汗をかいて飛び起きた。ついさっきまで、イヤな夢を見ていたせいだ。 久しぶりに見たな・・・・・。


「あれから、三年か」


汗でぬれた服を着替えようとベットから立ち上がる。クローゼットに行き、今日の予定を思い出しげっそりする。


「そうだった・・・今日は、王命会議だ」


着替え終えて、ある場所に歩を進めて着く。俺の身長の二倍はあるであろう大きさの扉。それをノックする。


「起きてますかアイリス様」


返事はない。


またかと思いつつ、部屋に勝手に入る。最初のうちは部屋に勝手に入るのも憚られると思っていたが、今は慣れた。


部屋に入ると、俺の部屋のベットの二倍はあるベットへと足を進めた。


案の定そこには、寝ている長い銀髪の我が主の布団を俺はもぎ取る。そして、主の顔面にそれを叩きつけた。


「痛いッ・・・」


「あ、起きた」


主は、ベットから飛び起きその蒼眼でキッと睨む。


「何するんだよ!!!僕の顔に傷がついたらどうしてくれるんだ!!!」


「ははははははは、手加減は多分したので姫の美しい顔には傷はつきませんよ」


「そういう問題かー。君は、僕に対する敬意が足りないって言ってるんだよ!」


「払ってますよ。王命会議がある日に、寝坊する呆れた主にはね」


「ウッ・・・」


「分かったらとっとと準備してください。王に怒られますよ」


「分かったってば」


そう言って、ベットから立ち上がるアイリスを横目に俺はドアへと向かう。


「あ、そうだ。今回の王命会議、セルネス王子も出るらしいですよ」


「え、さらに行きたくなくなったんだけど・・・・」


「ま、どんまいですね」


「あー、行きたくないよ」


「諦めてください、アイリス様」






王命会議には、王族とその側近が出席を許されている特殊な会議である。だが、実際に側近が出席した事例はない。大抵は、王城の中にはで待っていることが多い。例に漏れず俺も中庭の噴水の近くに腰かけている。


しばらくすると、俺の隣に誰か座った気配がして振り返ると案の定黒いマフラーに黒い着物、腰に俺と同じ刀という武器を刺した男がいた。


「久しぶりだな、焔」


焔は赤茶色の眠たげな瞳で俺を見てくる。久しぶりに見る同僚の変化のなさに、何となく安堵を覚えた。


「ああ、ルノアか。三か月ぶり?」


「いや、半年ぶりだなー。前の会議は出席してないからな。そっちの王女様は、今回も出席したんだな」


「まあな、渋ってはいたが・・・何せ親があれだからな」



若くして強国であるネルシアの王位を受け継ぎ、ここまで保ってきた。


名高き名君。


 ナレオス・ネルシア。


何度かあったことがあるが確かに好きではない・・・何を考えているのかわからないのもあるが威圧感がすごいのだ。

 癖のある白髪に紫の瞳。背もそこまで高くなく、体つきも細い。武人肌な人間ではないことは確かで一見普通の人間に見える。しかし、最初に会った時その身に内包した圧倒的な存在感が魔王を髣髴とした。そんな印象だった。



「あの親だからな・・・」


「ところで、ルノア。人斬り亡霊の噂知ってるか?」


「人斬り亡霊?」


聞いたことがない名前だ。王都では、有名になっているのだろうか?


「ここ2、3日の話なんだが・・・騎士団の人間が辻斬りに会って惨殺される事件が多発しているらしい」


「へー・・・それはそれは、騎士団も大変だな。新人を何人もやられちゃって」


「・・・殺されているのは、騎士団の中でも腕の立つ奴ららしいんだ。それはそれは鮮やかな手並みらしいぞ」


「具体的には誰が殺されたんだ?」


「流石に詳細は分からないんだが・・・どこかの部隊の副隊長が今朝惨殺されたという話を副団長がしていた」


「大事だな。騎士団は、どうするって?」


「さあ?そこまでは知らん」


騎士団の副隊長と言えば、役柄的には上から四番目だ。騎士団としても見過ごせる領域ではないな。


「そっちの姫さん・・・イリス様はなんて?」


「ああ、どうやら興味があるらしい。どんな理由で騎士団を襲うのか?いったいどれほど強いのか?飼い犬にできるのかとか・・・困った姫君だ」


「ああ、うちも飼い犬にしたがりそうだな」


アイリスも第三王女であるイリスも似たようなものを欲しがる。わがままで腹黒くて、どうにも従者の扱いがうまいところまでそっくりなのだ。赤毛で、従者二人は苦労してるわけだが。


「ところで、何で人斬り亡霊なんだ?」


人斬りという部分は分かる。だが、亡霊である意味が分からない。


「何でも、誰もその姿を見ていないのと夜にしか現れないかららしいぞ」


「安直だな」


「名前なんてそんなもんさ」


思った以上に書もない話だった・・・。それにしても・・・


「もし、天利のところの副隊長だったらやばそうだな」


「ああ、あいつは情に厚いからな」


「・・・フム、相変わらず勘が鋭いな。当たりだぞ・・・少年」


後ろから声を掛けられ、バッと音がするのではないかという勢いで振り向いた。するとそこには、艶やかなドレスに身を包んだ女性がいた。最初に、飛び込んできたのは、赤。深紅の瞳と深紅のドレス。


そして、王女の中で唯一違う黒髪・・・。


「お久しぶりですね、リリア王女殿下」


「お久しぶりです」


俺に続くように、焔が挨拶する。そうすると、何がおかしいのか、くつくつと笑い出した。その笑みは、アイリスとは違う、ゾッとするぐらい男を引き付ける魔性の笑みだった。


「そう固くならなくてよい。妾は、余り堅苦しいのは好まぬよ」


「・・・リリア王女。先ほどのあたりとはどういう意味ですか?」


完璧に王女の言葉をスルーする俺に眉を少しひそめたが、リリア王女はすぐに表情を戻し、語る。


「そのままの意味だ。殺されたのは、治安維持部隊副隊長であるレナネル。天利隊長の部下だ」


「・・・マジか。弔い合戦か。面倒事になりそうだな」


「おい素が出てるぞ」


思わず飛び出た言葉に、焔が反応して俺を窘めようとしたが遅かった。


「バッチリ聞こえてぞ。まあ、そんなんことで何か言うつもりもないがね。それに妾も同意見だ。あ奴の性格上、命令を無視してでも敵を取りに行くだろう」


騎士団の隊長に命令権を持つのは、王族と公爵、騎士団長に副団長。軍事関連の関りがある文官だ。どの命令も逆らえば待っているのは重罰だ。最悪死刑なんてのもあり得る。


「そうなったら身内狩りか・・・楽しくない仕事だな」


同じことを考えていたらしい、焔がつぶやく。


「楽しい仕事なんてあるのか?」


「う~ん・・・殿戦とか?ほら、勝つのが勝利条件じゃないし、何となく自分の働き一つで部隊の命運が決まるとなると少しはやる気が出るだろ。それに平時だったら、つまらない犬死って言われかねない死に方でもそういう戦いの中だと意味がある死に方っぽいだろ?」


「歪んでるな」


「間違ってるか?」


とそこで完璧に、リリス王女を置き去りにして話を脱線させていることに今更気がつき、話を戻そうとすると予想に反し、リリス王女が会話に参加してきた。


「戦場に正解なんてないと妾は思うがね。それは、後に歴史と人が決めることだ」


「・・・意外ですね。王女がそんなこと言うなんて。でも、天利はこういいますよ『仲間のため、国のために戦ってるやつが正しい』と」


「前時代的だな・・・」


「まったくだ・・・暑苦しい」


王女に同意するかのように、焔が吐き捨てる。


「というか、王女。前時代的だなんて、王女の言っていいセリフじゃないですよね?」


「おっと、口が滑ったというやつさ。まあ、忘れたまえ」


少しお茶目に笑う王女を見ながら、自分の印象と違った姿に驚いた。


「そろそろ、会議も終わる時間だ。君たちも、主の迎えに行くべきじゃないかね」


「・・・あれ?王女は会議に出席していないので?」


「今更か・・・まあ、簡単に言うなら変装の達人が部下にいたから試しただけだ」


「・・・・・・・」


さぼりたかっただけじゃないのかっと俺も焔も思った。しかし、触らぬ神にたたりなし・・・黙っておいた。


「ではな」


王女はさっそうと王城の中に戻って行った。


「・・・・・・俺らも行くか」


「同感だ」







「ということがあったんだよ、どう思う?アイリス」


部屋に戻り、俺は、会議から帰ってきたアイリスに今日会ったことを語り、愚痴る。


「君はさ・・・疲れて帰ってきた主に対する敬意が足りないと思うんだ」


「・・・?」


そんなはずは・・・ない。疲れているであろうことを見越して、癒しの効能がる茶葉を使い茶を入れ街で有名なスイーツをメイドに買いに行かせこうして出している・・・これの何が足り何のか。


「普通は、主の話を先に聞くと思うんだけどな!?何で君は、私に一方的に愚痴を垂れこぼしているわけなんだ!?」


銀髪のツインテールを、その怒りと比例するように震わせ憤慨するアイリスはなかなか可愛い・・・が、しかしこのまま怒らせると面倒だ。


「すみません、アイリス様。配慮がなかったです」


「今更、様付けするなー」

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