あなたはオレンジの片割れ①
それは彗星のように現れて、瞬きする間に消えていった___
「暑い…」
人間がこう呟くときは、涼しくなれと思うときだと、少なくとも僕は思っている。
しかし、その期待を裏切るかのように、それはやってきた。
「おっはよーー!今日も一人?」
何と無粋な言い方だ。確かに事実ではあるが、もうすこし穏やかに言えないのか。
本などまるで読みそうにない彼女にそんな語彙力を期待しても無駄であった。
「一人が好きなんだ。何が言いたいか分かる?」
「どっかいけ、でしょ?いやだよー!」
はぁ…この女は何を言っても聞かない。
ああ言えばこう言う、というやつだ。
「何読んでるの?まさか、エロ本じゃないよね?まぁ、君は女性に興味なさそうだけどねー。」
こっちは話す気がまるでないのに、どんどん話を進めてくる。早く何処かへ行かないかと願っていると、
「蓮香〜?どこ〜?」
と甲高い声で誰かが呼んだ。
「涼子〜今行く〜!」
と言った後で、
「じゃあね、また後で!」
会いたくもない、と言いそうになったが、
「それじゃ、君に見つからないように隠れてるよ。」
と返しておいた。彼女はきゃははと嬉しそうに、猿のようにはしゃいだ後、「涼子」と呼んだ同級生の元へとかけていった。猿は余計だったな、と思ったがそんなものは一限目開始のチャイムと共に忘れていった。




