第8話 喋るネックレス
家を出た後、何時も通り公園に向かった。
公園は封鎖されていて、
”危険近づくな”と書いてある看板が設置されていた。
それもそのはず、救急車が来たあと警察も来て公園の設備を確認し、
安全性に欠けていると判断され封鎖されたのであるのだから。
翔は渋々学校に向かおうと公園の前から去ろうとした瞬間、何処からか声がした。
「待ってください」
(ん?今何か声がした様な......)
周りを見るが人の気配はない。
気のせいかと思い歩き始めると又しても声が聞こえてきた。
「待ってって言っているのが聞こえないのですか?そこの制服を着た学生さん!」
(え、それって俺の事だよな?)
辺りを見るがやっぱり誰も居ない。
「何処から話しているんですか?」
翔は大声で言った。
「砂場を見てください!」
言われるがまま見て見るがやっぱり誰も居ない。
「砂場を見ましたが誰もいませんが何処にいるんですかぁー?」
「馬鹿なのですか?人では無くモノです。そこにネックレスが落ちているでしょ!」
(ん?何を言っているんだこの人)
砂場を見ると確かにネックレスが落ちている。
仕切られたロープを跨ぎ砂場まで歩きネックレスを手に取って持ち上げた。
「やっと気づいたんですか、馬鹿な男ですね」
「うわぁ!」
大声を上げネックレスを砂場に落としてしまった。
(今ネックレスが喋ったよな?)
「そんな大きな声を出して、失礼な男ですね」
「いやいや、普通ネックレスは喋らないから」
無意識に突っ込んでしまった。
もう一度ネックレスを持ち上げ、
よく見ると昨日彼女が身に着けていたネックレスにそっくりだった。
頭を打った時の衝撃で砂場に落ちたのだろう。
「えーーっと喋るネックレスさん、何で喋れるのとか色々聞きたい事はあるけどあなたの持ち主さんて神薙由比さんですか?」
「そうだけど...なぜそれを知っているんですか?」
翔は墓穴を掘ってしまった。
(締まった。茂みから彼女の事を覗き見していましたから何て言えねぇーー)
「えーと、彼女が身に着けている処を偶然見かけたからだよ。あははは」
「本当ですかーー?」
翔は必死にポーカーフェイスをするが、
昔から嘘を吐くのが苦手で直ぐ顔に出ていた。
「...まぁいいでしょう。ところで昨日は私を助けてくれてありがとうございます」
「いえいえ。気にしないでください」
(...私?)
「それにしても随分冷静ですね。物が喋ってるのですよ!驚いてないいですか?」
「俺は現実には起こることのない事を信じているから物が喋ってもそれ程驚きません」
「イコール。頭が可笑しい厨二病の変態さんなんですね!」
「厨二病は否定しないが変態と頭が可笑しいは外してください」
「どっちにしても同じでは?」
(此奴なんかムカつくな)
「それより人を呼び止めといて何の用ですか?」
「そうでした...不本意だけど貴方にお願いがあります」
翔はその刺々しい言葉に苛々していた。
「なんでしょうか!?」
「私をもう一人の私まで連れて行ってください!」
(もう一人も私?)
「もう一人の私ってどういう意味ですか?」
「連れて行ってくれるのであれば話します!」
「わかりました。連れていきます」
翔は興味が湧き即答で了承した。
「即答ですね!じゃあ、話しましょう!」
翔はその場で座り込み話を聞くことにした。
「お願いします!」
ネックレスにお辞儀をした。
(傍から見たら頭の狂った学生にしか見えないだろうな!まぁ俺は気にしないけど)