第4話 少女への思いと突然の事故
午後の授業が終わり、帰りのホームルームを終えると翔は何時もの場所に向かった。
例の公園である。
徐々に日も沈み外灯が付き始めた。
此処の公園は夜に星が良く見える。
そしてある噂が立っていた。
夜に成ると見知らぬ男の唸り声が聞こえるそうだ。
翔はその噂のお蔭で一人の時間を手に入れられていた。
因みに犯人は翔であった。
翔は此処のベンチで寝る癖があり、寝言が周りからは唸り声と間違わられている。
翔はまさか自分が犯人だとは全く築いてはいなかった。
古びたベンチに上向きになり左腕を伸ばしながら手を大きく広げ目を閉じる。
(俺の左腕に暗黒の力、宿れ!)
毎度毎度やっているが暗黒の力は宿ることはなかった。
目を開け左腕を腹部の方までもって行き、右腕を頭に当てながら空を見上げた。
木々で囲まれているが風の通りが良く、気持ちが好い風が吹く。
もう一度目をつぶり転校生の神薙由比について考えた。
初登校という事もあり、昼休みが終わり彼女は担任に呼ばれそのまま下校したらしい。
周りでは個々でグループを作り、彼女の悪口を言っているように見えた。
翔は不愉快な気持ちになり睨んだ視線を煩い女子グループに向けながら考えた。
(貴様ら!俺の自慢の聖剣で正義の鉄槌をくれてやろうか?!)
心の中で翔は微笑んだ。
翔は頭の中で昼休みに彼女が言った台詞と光景を思い出し、頬を赤くして目を開け星空を眺めた。
(俺は彼女に好意たるものを感じているのだろうか?)
(端に気になっているだけではないだろうか?)
(今度公園であったら話掛けてみようかな?)
他人に興味が持てない翔は不思議と興味が持てた。
綺麗だからだけではなく。
他にも性格とか自分に似た何かがあるのではないかと思ったからである。
彼女の事を考えて居ると足音が聞こえてくる。
”カタカタ”と足音を立てながら誰かが近づいてくる。
翔は慌ててベンチから起き上がり茂みに隠れた。
(まさか転校生ではないよな?)
胸に期待を抱きながら茂みからそっと覗いた。
そのまさかの転校生の神薙由比が公園の真ん中に歩いて来た。
制服ではなく私服で黒のショートパンツに無地の白い半袖、サイコロの形をした青色の結晶玉に銀色のチェーンのネックレスを身に着け、
赤いスニーカーを履いていた。
(夜でも相変わらず綺麗な紫色の瞳を......ん?紫色の瞳を......え?)
翔は必死に今日の記憶を思い返す。
公園と学校で見た時の彼女の瞳の色は透き通った海の様な瞳をしていた。
でも現在彼女の両方の瞳は紫色に成っていった。
なんだか雰囲気も変わったように見える。
気になる点はいっぱいあるけど取りあえず、翔は彼女の事を観察することにした。
彼女はブランコに腰を掛け星空を眺めており、
瞳からは”ポロポロ”と涙を流していた。
この時初めて翔は綺麗な流れ星を見た。
彼女の涙が真っ黒な夜空と星の光と外灯の明かりに混合して、
翔の目には瞳から流れる涙の流れ星のように見えていたのであった。
暫くして彼女が自分の涙を拭こうとポケットからハンカチを取り出そうとした瞬間。
”ガッシャン”と物凄い音がした。
その瞬間彼女が視界から消えた。
急いで茂みから出て見るとブランコの鎖が外れ彼女が頭を打って地面に倒れていた。
すぐさま駆け寄り、
「神薙さんしっかりしてください!」
「大丈夫ですか?」
など問いかけ意識があることを確認した。
「うぅ」
反応があった。
打ちどころが悪く頭からは血が出ていた。
急いで110番に連絡し、
自分のワイシャツの袖を歯で破り彼女の頭に包帯のように巻いた。
応急処置を終え、暫くして救急車が到着した。
翔も一緒に付き添いながら救急車に乗り込み、
彼女の傷口を抑えながらそのまま病院へと向かった。