第四十三話:合流
魔導師などという存在が認められているのもスズナ出身の幻想の国、カイトのグランド帝国、そして異世界のみである。
それがこの場にいるのだから驚きだ。
「こら、人を化け物みたいに見るなよ。
都会にはいろんな魔法使いがいるんだぞ」
都会おそるべしと言い切った青年はやはりどこか掴みどころがない。しかし、それが恐怖を倍増させるから不思議だ。
「とりあえず、テキサス一家からの報酬は失くなると思うからさ、今のうちにトンズラこいた方がいいと思うぞ?
じゃないとあんた達みたいな賞金稼ぎでしか生きていけない人間にとったら、この港町は過酷だろう?」
言っていることは正しい。マフィアで生計を立てているテキサス一家は自分達の汚点になる存在は消すはずだ。特に名も売れてない賞金稼ぎぐらいなら簡単に消せる。
「リックの言うとおりだ。早く逃げた方がいいと思うぞ」
マスターもグラスを拭きながら悠長にいう。結果は火を見るより明らかだ。
「くそっ!!」
賞金稼ぎ達は逃げ去って行った。
「そのテキサス一家の頭領が忠告してるのも変な話だな、マスター」
「その一家にお前を使ってお姫様を救助させるのも一興だと思わないのか?」
二人は笑った。テキサス一家の頭領はこのコロンのマスターなのである。
「いいけどさ、マスターがあのお姫様を幻想の国から掠って来いといった癖にどうしてまた戻すような事にしたんだ? まだ国自体は危険なはずだろう?」
「確かにな。だが、あのお姫様はお前以上の魔力を持っていただろう? だったら幻想の国はすぐに復興するさ」
マスターはライムジュースをリックの前に置いた。
「レディア・メイリン、やはり女神メイリンの血筋だけあって美人だったな」
「だが、メイリンの生まれ変わりじゃないぜ」
突如乱入した少年の声。その少年にリックは満面の笑みを浮かべた。
「ようやく来たんだな、覇王」
「お前がうろつくからだろう?」
「ヤンロンも久しぶり」
リックはすっとセディの前に片膝立ちになった。
「光の女神セディ嬢、今宵は私目と飲み比べなどいかがでしょうか」
片手を取りその手に口づけようとしたところ、ガコンと踵落しが一発。
「馬鹿がさらに馬鹿をやるな、いらつく!」
瑞貴は鋭い眼光をリックに向けた。
「いてぇな〜、本当に冗談が通じない覇王だ」
「当たり前だ。それよりしばらく俺達に付き合え。闇界に行く」
いきなり言われたことにリックは目を丸くしたがすぐにニッと笑った。理由は簡単、嬉しいからだ。
「メイリンの生まれ変わりがいたのか?」
「ああ、想定外のお転婆だがな」
瑞貴はそう言いながらも、心の奥底の気持ちは隠せなかった。