第四話:覇王を目指すもの
この世界は終わった、ただその言葉だけが彼女の脳裏に過ぎっていた……
高等魔法を唱えた瑞貴は、壁際で俯いている少女の元に歩み寄った。
その姿は、これほどの敵を相手によく今まで一人も殺さずに戦っていたものだと感心を覚えるほどだ。
しかし、いつまでもこんな場所にいるわけにはいかない。敵はここだけではなく、まだいるのだから……
「おい、立てるか?」
瑞貴は手を差し伸べる。確かおてんばで有名な「スズナ」という一つ年下の女だと彼の脳にはインプットされていた。
だが、そのおてんば娘は全く動こうとしない。
「おい、何か反応を見せたらどうだ?」
再度声をかける。普通の女子ならここで蕩けていた筈だが、今はそんな状況ではない。
「……ったく!」
ショックを受けるなら後にしろ、と言いわんばかりの表情を浮かべながら、その白き手がスズナの腕を掴もうとしたその時!
「やあああ!!!」
「なっ!?」
突如、スズナは声を上げて瑞貴に殴りかかって来た!
「お前は!」
次々に激しい拳打が繰り出される。しかし、瑞貴はそれを全て見切り避けていく。
「お前は……!!」
さらに繰り広げられる攻撃にさすがの瑞貴も受けざる終えなくなってきた。いや、受けた方が早いと思った。
そして、痛快な音を響かせながらもスズナの拳を簡単にその手におさめる。
「お前が何だよ」
涙を流しながら乱打を繰り出してきたスズナを動けなくし、その凛とした黒曜石の目で見据えた。
「……っつ!! お前がアイコ達を殺したのか!!」
スズナは叫んだ! そして、さらに拳打を繰り出そうとするが瑞貴の魔法がそれをさせない。
悔しさで唇を噛み切る少女に瑞貴は冷静な声で告げた。
「違う、俺はお前を助けに来ただけだ。とにかくここは危険だ。一気にここから移動するから少しぐらい落ち着け」
「落ち着け……!!」
落ち着けるか、と言おうとしたが瑞貴はそれをさせなかった。
完全に自分の精神を操られている。言葉を止められている。それだけが事実だった。
「俺を信用しろ。俺は瑞貴。覇王を目指すものだ」
そう告げて二人はその場から消えたのだった。
ようやく更新しました。
遅くなってすみません。
これからも楽しく読んでやって下さいませ。