第三十八話:魔導師の戦い方
カイト・グランドがその辺の魔導師より強いと分かっていた。その魔力もヤンロンやセディより上だとも直感的に感じ取っていた。そして、闇界の住人が恐ろしく強く、自分達があのまま闇界へ入っていたら間違いなく殺されていたのだと、スズナは思い知ることになる。
「カイト、何だか息苦しくない?」
「だろうな、標高三千メートルはあるんだ。息苦しくて当然」
そう答えながらも相変わらず息一つもきらしてない。とはいえ、体温だけは魔力を纏っていてもさすがに少し冷えるのか、マントを羽織って凌いでいた。
「確かにそうだけど、空気も悪くない?」
「当たり前だろう? ここにいるのは闇界の住人だ。少しでも俺を弱らせて戦いたいんだろう。無駄な事だと分かればいいものを」
またも不適な笑みを浮かべる。この医者は一回ぐらい痛い目にあった方がいいに違いない、スズナは心の底から思った。
「さて、そろそろ出て来るだろうな。ここの忠臣あたりがな」
「その通りです」
スズナは空間を裂いて現れた女の攻撃を間一髪で避けた。
「意外だ、避けた」
「悠長なこと言ってる場合じゃないでしょ!」
少しぐらい助けるつもりはないのかとつっこんでやりたい。しかし、第二撃目がスズナを狙って来た!
「光の壁!」
「弱い」
カイトは瞬時にスズナの前に立ち、魔法弾を素手で弾いた。
「全く、お前はそれだけの力を持っている癖してコントロールがなっちゃいない。もっと底からメイリンの力を引き出せ。幻想の国に張られた結界を破ったんだろう?」
あくまでもカイトは余裕だった。それだけの力は語るまでもない。
「スズナ、魔導師の戦い方をしっかりと目に焼き付けておけ。こんな雑魚相手にいろはを使ってやるから感謝しろよ」
嫌味な奴とはまさにこのこと。だが、目を奪われる。
「まずはドール化の解除と同じ魔力コントロールからだ」
「この楊貴をなめるな! カイト!!」
楊貴はカイトに突っ込んでいくが、カイトは高く飛び上がる。
「舞空術もコントロール一つで身体能力そのものを強化できる。もちろん破壊力もだ。そして次が召喚だ」
「なっ……!」
いつの間に召喚したのか、茨の蔓が楊貴に巻き付く。
「召喚によって相手を困惑させることも可能。そして最後に」
「うっ……!!」
楊貴は泡を吹いて意識を失った。
「絶対的な支配力、覇気の強化。魔導師たるもの、覇王以外に屈するわけにはいかない。分かったか? スズナ」
「わ、分かった……」
呆気にとられながらも、スズナはそう答えるのだった。