第三十二話:そして始まる伝説
親子が争うことは実に悲しいこと。スズナの両親は彼女を魔法の国の王女として扱わず、捨てた……
「瑞貴、やはりその程度か」
青竜王は自分の足元で膝を付く瑞貴を見下しながら言う。力の差は最初から明白だった。どうあがこうとも、竜族の主に敵うはずなどない。
しかし、我儘と頑固さは瑞貴の専売特許なのか引くことをしない。
「まだやれるさ。風よ……」
「やめておけ。お前がどれだけ私に刃向かおうとも絶対的な力の差は埋めることは出来ない」
重力が瑞貴に襲い掛かり、また動きを封じられる。致命傷を与えないだけ親心なんだろう。
「瑞貴! やっぱりダメだよ! もうそれ以上戦わないで!」
「うるさいっ! お前は引っ込んでたらいいんだよ! メイリンみたいな魔法使いになりたいんだろ、スズナ!!」
傷だらけの顔が綺麗だなんて初めて思った。自分の夢を認めてくれる人だからそう思ったのか、瑞貴が元から美形の部類にはいるからなのかは分からないが。
「確かになりたいけど……、あんたが死んだら意味がないでしょ! 私は覇王のために強い魔法使いになりたいの! こんな夢みたいな願いに付き合ってくれる奴なんかあんたみたいなバカしかいないのよ!」
スズナは青竜王に突撃する! もはやスズナご自慢のど根性に頼るしかなかった。
「どきなさい! 青竜王!」
「愚かな……」
青竜王はスズナを重力で地に伏せさせようとしたが、
「なめんじゃないわよ!」
怪力女の底力は半端じゃなかった。地に伏せていた瑞貴を持ち上げ、青竜王を抜き、天界と闇界の境目に拳を立てる!
「壊れなさい!」
「させん!!」
二人の力が見事にぶつかり、それが弾けて二人の姿は消える。
「瑞貴! スズナ!」
二人の姿が消えたと同時に、ヤンロンとセディはたどり着いた。
「青竜王様! 瑞貴とスズナは!」
ヤンロンは慌てて尋ねると、
「進むべき道に落ちた。そして、お前達もその世界へ行くがいい」
その言葉だけ残して、青竜王はその場から消えたのだった。
そして物語は、伝説の幕開けとなる……