第三話:瑞貴
拳、魔法、武器がスズナに容赦なく放たれる。突然訪れたこの危機的状況にスズナはひどく動揺していた。
「アイコ! ナナ! 皆っ!!」
次々とスズナに襲い掛かってくる友人達。スズナはただ避けることしか出来なかった。
青白い顔、白目、チアノーゼが出た唇。だが、肉体的には全く衰えていない。いや、いつもの数倍はあるだろう運動能力と魔力。
一体何の魔法にかかったのか、スズナは自分の記憶を辿るがじっくり考えている暇がない。
「し……ねっ……」
「きゃあああ!」
スズナは爆風で飛ばされ壁に叩きつけられる。頬から流血してくるのも感じられた。だが、それでも戦うことは出来ない。
「くっ!!」
頭がフラフラする。しかし、休んでる暇はない。立てなくなれば本当に命はないからだ。唇を噛み締め、彼女は襲い掛かって来る者達と向き合った。
『せめてここから逃げなくちゃ……!』
そう思考がまとまったが、スズナが見た光景は最悪だった。既に食堂には数百人の群れが押し寄せてきていたからだ。
その中には高等魔法を扱えるものも少なくはなく、全てを回避することは不可能だ。
「どうすればいい……!」
スズナは周りを見渡す。どこか一つでも突破口があればそこを目指して走ればいい。相手を気絶させる体力はある。
そして、彼女は辺りを見渡すと今日戦って勝利したあの筋肉男を見つけた。あいつになら勝てる!
「あそこだ!」
超スピードで筋肉男の顎を蹴り上げ道を作ろうと試みた。しかし、手応えがない!
「効いてない!」
スズナは一瞬にして悟った。そして、その状況を見逃さないものはやはりいた。
「し……ねっ!!」
「きゃあああ!!」
無数の魔法弾の直撃を受けたスズナは再度壁際に戻され追い込まれる。
『……本当に、私、ダメ?』
朦朧とする意識はついに途切れかけた。
だが、それを一気に覚醒させるものが現れる。
「メテオ……」
感情のないテノールが聞こえたかと思うと、食堂はスズナを取り残して一気に崩れる。そして自分の目の前に立ったのは一人の少年……
そう、現れたのだ。瑞貴が……