第二十三話:面影
ヤンロンがサラのもとを訪れていた頃、セディは長に呼び出されていた。いつも長にあの二人を宥めるように言われるのはセディの仕事だと、本人も自覚しているからだ。
「相変わらず、地界でも騒ぎは絶えんかったようじゃの」
少しだけ皮肉を込めて長は言うが、セディには全く通用しない。怒るどころかニッコリ笑って返された。
「あら、どちらかと言えば瑞貴はいつになく楽しそうでしたよ。女の子と喧嘩なんかしたこともなかったのに、本当スズナちゃんとは楽しく……」
「認めんっ!!」
強く机を叩き、長は一喝した。しかし、セディにはいつものことだと動揺すらさせられないが。
「瑞貴はやがて天界の王になる身分じゃぞ! お前ほどの女神を教育係に付けたのも全ては天界のため! それをあんな地界の小娘にやれるもんか!」
「ですが、あのメイリンの血を継いでますよ」
セディは微笑んだ。さすがにメイリンは蔑ろに出来ないだろうと、寧ろ瑞貴に充分釣り合うだろうと言ってない分だけ伝わってくる。
「それに瑞貴は覇王を目指してる。あの子が生まれた時から予感はしていらっしゃったのでしょう?」
長は分かっていた。たった二歳だった瑞貴はすでに覇王になると騒いでいた。地界の王の称号など、この天界で大した価値などないのに……
「だが、認めるわけにはいかん。セディ、忠告はしておく。もし、お前達が本気で天界から抜けるというなら、この天の国すべての兵力をもってお前達を止める。瑞貴の時空魔法で逃げ切れると思うな」
空気にまるで電気が走ったかのようにセディは感じた。しかし、それに動揺することなくセディは落ち着いて答えた。
「肝に命じておきます、長。それでは瑞貴のもとに戻ります。スズナ様をメイリン様のように磨きあげたいので。どれだけ否定されようとも、あの空気が似てることだけは認めて下さい」
セディは瞬身でその場から消えたのだった。
「……あの全てを圧倒する空気だけは認めてはおる。だが、覇王だったあいつの方にそっくりじゃ……」
メイリンを天界から連れて逃げた男。かつての覇王だった男を長は思い返すのだった……
更新遅くなりました! ですが頑張りますので、これからもよろしくお願いします☆