第二十一話:竜王の血筋
お日様の匂いがする。高級でやわらかそうな大きなベッドに大理石のテーブルが置かれた飾り気のないシンプルな部屋はなんとなく瑞貴らしい……
「いたた……」
額につけた大きなたんこぶはギャグではなく本物。瑞貴は氷嚢袋を額に当ててやると、一つ溜息を吐き出して告げた。
「自業自得だ。あれほど止まれと言ったのにな」
もうこの憎まれ口を何度聞いたことか分からない。だが、それでもスズナの短気さは変わらない。
「あんたが大木を召喚するからでしょ! だいたい、あんた一体どれだけ魔法を使えんのよ!」
「地界にあったものはほぼ全てだな。お前と違って学校では優等生だったしな」
瑞貴は笑いながら答えるが、地界にあるものをほとんど使いこなせる人間など天界にも限られたものしかいない。
「それだったら私だって成績は学年一よ! これでもかなりの有名人だったんだから!」
「ああ、知ってるよ。怪力で超がつくお転婆の一年生。腹が減るたびにいろんな奴等にバトル挑んでたところから、食い意地は学年一だったらしいな」
瑞貴は腹を抱えながら笑う。しかし、当たっているので何もいえない。
「だが、悪かったな……、お前の両親も友人も救えなくなっちまってさ」
初めて謝罪の言葉をきいた気がする。その顔はなんとなく不器用。しかし、それが瑞貴の本心だった気がした。
「……私の友達がドールにかかる前にあんたの話をしてくれた。どこかの貴族じゃないかとかって。だけど、私が感じた印象を言って良い?」
スズナはまともに向き合った。初めて会ったあの時に感じた印象を伝えるため……
「竜王の血筋なんじゃないの?」
「!!」
瑞貴は声が出ないほど驚いた。それがまさに真実だったからだ。
「天界の中で尊敬されるものと言ったらそれしか考えられなかった」
「お前勘良すぎだろ……」
瑞貴はまいってしまった。自分で伝えようと思っていたことはとっくにばれていたことであった。そしてすっと立ち上がると、彼の身分を語り始めた。
「天界の竜王は俺の先祖だ。俺の正式名は「敖 瑞貴」。東海青竜王の末裔だよ」
それを聞いたスズナはしばらく止まると、
「ええ〜〜〜〜〜!! そんなに偉い竜王の子孫だったの!?」
「自分で言ったんだろうが」
「いや、普通の竜族かなと……」
「普通って何だよ!」
またもや始まるパニック。額のたんこぶの痛みも忘れたほどだ。
「とにかくそういうことだ! 普通なら瑞貴様とぐらい呼ばせたいがお前は絶対無理! だからせめておてんばくらい控えろといえばさらにやらかす! 俺の苦労が少しはわかったか?」
「さぁね。元々そんなことこだわるほどいい性格でもないでしょ?」
いたずらな笑顔でスズナは答える。たしかに、瑞貴もこのままのほうが好きだ。特別視しないスズナだからこそゆとりがもてるから……
「仕方ないやつはいるんだな……」
こつんと額のたんこぶを叩いてやると、スズナは再び声にならない痛みにもがきだすのだった……