第十四話:セディ登場
どこにいても面倒に巻き込まれる奴ほど、自分の人生に張り合いを与えるものはいないと分かっていても、今回自分が仲間にしようと思う女は今まで出会ってきた女の中で最強の部類に入るかもしれない。
「はあぁ!! 先に貰われただと!? どこの悪趣味だ!!」
店員の襟首を掴んで瑞貴は責め立てた! せっかく稼いだ金も無駄にはなりはしないものの、使い道の計画が崩れるというものだ。
「少し落ち着け、瑞貴。それでどんな女だったんだ?」
「女? お前何言ってるんだ?」
性別を特定できるなど、ましてや女などとどうしてたずねる事が出来るのだろうか?
「さっきの剣士だろ? あの覇気、どこかで感じた気がしてな」
それだけ言うと瑞貴もなんとなく誰が連れて行ったのか予測がつき始めた。確かにヤンロンと対峙出来る者など、早々いないものである。
「それが偉い美人なんだ! 金髪に青い目をしたよ!」
店員がそう答えると瑞貴は大きなため息をついた。もうあいつしかいない!
「ちっ! せっかくあのおてんば娘を大人しくさせようと思ってたのによ!」
さまざまな計画をめぐらせていた瑞貴は先を越されたといわんばかりに口を尖らせる。しかし、それにツッコミを入れる人物は現れた。
「あらあら、それは可哀相じゃないの? 人の個性は認めてあげなくちゃダメじゃない」
「なっ!!」
気配すら感じさせなかった人物の登場に、ヤンロンはやっぱりか……、という表情を浮かべた。
「この人です! あの娘を貰っていったのは!」
店員は女を指差して言う。金髪に青い目をした美女、セディ・フローラだった。全体的にふんわりしているがとてもしっかりした女に見える。おそらく、腰に帯びた細剣がそうさせているのだろうが。
「瑞貴、女の子は大切にしてあげなくちゃいけませんよ。お姉さんそんな子に育てた覚えは……」
「分かったよ! で、一体どこにやったんだ!」
もはや姉と弟である。その掛け合いも実に数ヶ月ぶりというところだろうか。弟分の瑞貴の態度にセディはクスクス笑いながら答えた。
「フフッ! お姫様になれるところ。それより長が早く戻ってくるように言っているわ。私達に幻想の国を滅ぼした悪魔達を抹殺せよとの指令が下ってね」
青い目が冷たくなった。それは瑞貴とヤンロンの表情も同じ。
「スズナちゃんにも手伝わせるように命じられているの。構わないわね、瑞貴」
それは少しだけ心配そうな目。しかし、断るわけにはいかない。それが覇王としての使命なのだから……
「スズナには俺がすべて話す。セディの趣味で武装させてるんだろう? 早くスズナの元へ連れて行け」
時は動き出す……