第一話:魔法学園
「私があなたの翼になってあげる……」
幻想の国。世界太古の古代都市は今日も魔法の力に満ち溢れている。かつては幾度となく戦場となったこの国も「メイリン」という美しき魔法の女神によって守られていた。
そして、今日も明日のメイリンになろうと、魔法使い達は「魔法学園」で精を出しているはずなのだが……
「はあ~やっぱり先輩はかっこいいわ……」
「本当ね、どこの御貴族かしら……」
女生徒の注目の的で「涼」という言葉が非常によく似合う少年は魔法書片手に歩いていた。黒目黒髪の端正な顔立ちをした少し背が高く細い少年、彼女達の一つ上の学年だ。
「だけど、それに引き換え……」
二階から見下ろすことの出来る闘技場。そこには身長2メートルはあるだろうという筋肉男と、お転婆を代名詞にした金髪の少女がバトルを繰り広げているのだ。
「スズナ~! お前に賭けてるんだから負けんなよ!」
「そんなドチビすぐにやっちまえ!」
各々のサイドから歓声と野次が飛び交う。学園側も公認しているこの闘技場のバトルは常にスズナのためにあると言っても過言ではなかった。
「オチビちゃん、痛い目にあう前にさっさと負けときな」
筋肉男は指の骨を鳴らしながらスズナを見下して言うが、
「冗談じゃないわ! 今日のランチがかかってるの! 負けてあげるつもりなんてさらさらないわ!」
勝気なエメラルドの目が筋肉男を睨みつける。白い肌には僅かばかりのアザはあるようだが、それも彼女の魅力を表すアクセサリーの一つだ。まるでいくつもの戦いが彼女を強くしたという証拠のよう。
「そうかい、学園一の魔法使いの座は俺のもんだ!」
突如別空間から出された一トンはある丸太。それをスズナめがけて振り下ろしてきたが、彼女はタンと跳び上がると足に強力な魔力を宿して叫んだ。
「ハイヤァ!!」
スズナ蹴りが筋肉男の顎に入るとその巨体は五メートルは宙に浮かんだ。そして、彼は地面に叩き付けられ完全に戦意を失ったのだ。
「勝者スズナ!」
「イエーイ!」
スズナは満面の笑みを浮かべ、ガッツポーズを決めるのだった。