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『追撃戦』

 「これで人間側には魔法使いも、ろくな武器もない」

 「あと、ついでにいえば、水を食料もない」

 「これで勝利は確実だ!」

 人間側の悲惨な惨状を説明すると蝙蝠達は嬉しそうに声を上げる。ここま魔族側は連勝につく連勝、先ほどの大戦果に皆多くの歓喜の声を上げる。


 「とうとうこれでようやく城攻めじゃな」 

 そこには晴れ晴れした笑顔の金髪ロリ少女いや”元”金髪ロリ少女といったほうがいいか、我が主人が満面の笑みで鎮座していた。

 今回の城への攻撃、特に魔法使いへの魔力を吸収できたことが強かった。人間でも通常の兵士より魔法使いの方が当然ながら魔力も圧倒的に多い。

 結果として金髪ロリ少女の姿は小学生高学年の体から中学生程度への少女へその姿は変貌していた。

 結果としてその胸は膨らみ、ウエストはしまり、若干幼いといえどもちゃんと女の体に変貌を遂げていた。すでにロリという言葉は似合わない。今では小さいながらもしっかりと金髪少女へとその姿を変えていた。

「あはは、突撃じゃあ、突撃じゃぁ!」

 ただ、残念ことに相変わらず馬鹿だった。どうやらその馬鹿は年齢的なものではなく仕様のようだった。

 残念、返品や交換はきかないものだろうか?

 「城攻めはしませんよ」

 「なぬまだ我慢なのか、お主も慎重だのぉ」

 「いや、城攻めはしないです。最後まで」

 「そうか・・・最後までせぬのか、それは仕方ないって・・・なぬ? なぜせん、妾の城はどうなる」

 予想外の言葉に金髪少女がうろたえる。そりゃそうだろう、本人にとってこの作戦の最終目標は城奪還にあるのだら。

 「いくら弱体化してても、城攻めなんてしたら相手も死に者狂いになりますし、こっちの被害に馬鹿になりません。なので城から出たところ狙います」

 「ふむ、そう簡単に奪った城からでるとは思えんが・・」

 「いえ、すでに支度を始め、明日には出るようです」

 「なぬ?」

 すでに偵察蝙蝠から得た情報を主人に伝えると、驚く顔を返した。

 まぁ、人間からすればここに至っては撤退は当然の選択肢になる。というより、これしか選択がないというのが正解。

 食料も武器もなく、水さえない、城内は火傷した怪我人と病人ばかり、肝心の魔法使いさえいない。

 これではあとは全滅しか選択枝にない。

 もし初戦で快勝さえしなけばここまで戦はもつれ、全滅の憂き目に遭わなかったかもしれないが、ここに至っては後の祭りである。

 

 「ご主人様は本体を率いて、追撃戦に出てください。そこで敵を殲滅しつつ、魔力を回復してください」

 「ふむ、逃げ惑う人間達を一方的に蹂躙か、ようやく今回の仕返しができるのう」

 「はい、自分は今回の魔力補充で大幅に増員、強化された魔法蝙蝠部隊を分け、それぞれ兵を伏せ、伏兵として使います」

 「伏兵? なんじゃそれ、美味しいのか?」

  ったくこの馬鹿は・・・いやいい最早あきらめた。

 「・・・・いや、もはや何も言いません。とりあえずご主人は、思いのまま敵陣につっこんでください。何か変更点があれば別途指示します」

 「うむ、そうかそうか、自由に攻撃か」



 なぜこうなったのだろう? 

 人間側の軍を率いる貴族はこれまでを思い起こしてみた。人間と魔族は抗争の歴史しかない。魔族は人間を求め幾度となく侵略を繰り返し、人間はその度防衛を行う。

 又、魔族が支配する土地をめざし、人間は反攻作戦を取り、成功し占領すればその土地はその占領した貴族の物となる。

 これだけ見ると単純な二次元論に見えるが、魔族は魔族で派閥をつくり戦争を行い、人間は人間で国家を作り戦争を行う。それがこの世界を複雑な構造にしていた。

 今回の人間側の出兵は過去から見れば小規模な物だった。例え千人規模といっても、過去には数万を超える出兵もあった。


 今回の小規模の出兵は多くの要因が重なって起きた。

 一番の要因として、今回人間側が相手をした『金髪の魔将』と呼ばれる上位魔族の弱体があった。ここより離れた魔族側の土地で金髪の魔将陣営の魔王と敵対する魔王が戦場において全面衝突をした。無論『金髪の魔将』もそれに参加した。

 結果として先鋒を任せれた結果『金髪の魔将』勢力は大きな被害をうけた。『金髪の魔将は』は魔王と直接対峙し、甚大な被害を受けたのだ。

 そして重なるのは人間側の理由、先日王家による監査により、会計の着服が発覚、その汚名を返上するする必要があった

 結果、魔族領土の奪取という功績があればその罪を弁解するのに十分だっただろう。

 その大小2つの要因がかさなり、このような出兵になった。


  しかし、なぜこうなったのだろう?

 人間の貴族は魔族から奪った城の中で思い起こしてみる。すでに結果として戦は確実に敗北が決定していた。現在は撤退戦に移行するしかない・・と。

 そして、それははある程度の悲惨な撤退戦を覚悟していた。

 しかし、ここまで来ては既に撤退しか選択肢がない。


 貴族としても軍を率いる経験嬢、撤退線は経験済みだ。ここまで勝敗が明らかになった時点の撤退戦は経験にない。最初の快勝による城占拠の功績がここまで”撤退”という判断をここまで遅らせた。

 敗軍の撤退戦というのは悲惨きわまりない物になる。それを貴族は思い起こしていた。しかも今回は特に前例にない悲惨きまわりない撤退戦になるだろうと予測もしていた。現状水も食料も武器もなく、しかも病人と怪我人を連れての撤退である。

 本来、病人と怪我人を見捨てて逃げたい気持ちがいっぱいだったが、そうもいかない。最初から見捨てていけば、部下から見捨てたといわれ、今後の領地経営にも支障がでる。

 そして実は魔族に関してはこの病人と怪我人は役に立つ。この病人と怪我人が襲われ、戦闘状態にある間に本体はできるだけ遠くに逃げる事が可能になる。その分結果的に死傷者は減る。

 非道と残酷と言われるかもしれない、しかし軍はすでに極限状態にありもはや軍としての体勢を成さない、

 そもそも自分の命さえ危ういのだ。部下であろうとそんな他人の命をかまう余裕はすでになくなっているのだ。


 「では、これより皆で領地に帰る。皆のもの愛する家族に会うために最後の視力を尽くそうぞ!」

 貴族のそんな号令により、城にいた全ての兵は撤退を開始する。故郷に帰るといえども、その兵士達の表情には生気ががない。

 城を占拠してから、これでも多くの過去例にない周到な攻撃。それを思い起こすとこの先迎える撤退時に何も起こらないハズがないと皆確信しているのだ。


 そして撤退開始してから僅か一時間後、予想通り、魔族が襲撃が開始された。敵は少数の魔族、しかしそれを撃退する気力はない。

 その中心には金髪の少女の姿見える。当所城防衛戦でみた少女よりも幾分大人にした感じであったが、もしかしてアレが噂の『金髪の魔将』なのだろうか?

 しかし、いまそんな事を考えて居てもしかたない、ただ逃げるほかない、あの時と違いこちらには満足に戦える兵士も、魔法使いも、武器のないのだから・・。


 「引けぇ、皆の物、、故郷に帰るのだ」

 友を、仲間を戦友を捨て、一心不乱に逃げる。皆必死であった、とにかく脇目もふらず逃げた。そして後続の部隊の犠牲を糧に、前衛の部隊は魔族から多少の距離を稼げた時点でさらなる悲劇が起こった。

 「伏兵だぁ」

 空から襲いかかる、蝙蝠型の魔物隊、これまで、偵察部隊を散々苦しめてきた口から炎の矢を吐く魔物だ

 しかし、空からの襲撃ではどうしようもできない。

 すでに弓も矢もなく、魔法使いによる攻撃も期待できない。逃げるしか最早手段は残されていない。

 「逃げろ~」

 そんな声が集団から上がるが、そんな事言われなくとも皆分かっている。それしか手段が無いことを全員わかっているのだ。

 しかし現実がそれを許さない。

 逃げて、多少の安心感がでるちょうどの時を狙いすましたかのように、再度の伏兵が襲いかかってくる。

 また後続部隊を犠牲に逃げる事数度、すでに敵伏兵の6度の攻撃に部隊はもはや数騎の騎馬を残すのみであった。

  そして7度目の伏兵が現れたとき、貴族は逃げる事を辞めた。

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