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閑話

 そのころ人間側が占拠した魔族の城では混乱の極であった。

「なぜ、魔族がこんな事を!」

「ええい! それよりも、情報だ、偵察部隊は何をしている」

 人間側から見れば魔族の認識とは 強力で凶悪で人間より個々の戦闘力は遙かに凌駕するが、その行動は獣なみであり慎重な策と計略により対処可能な存在であった。

 なので人間側の戦術とは最初は囮の部隊で敵前衛部隊をを引き出し、後背から襲うという物であった。

 しかし魔族側がいきなり前衛どころか全軍を出してき為、急ぎその場所から撤退することになったのだ。

 今回の軍を率いた貴族としては、当所の予定が完全に崩れ今回の作戦の失敗が頭に浮かんだ。しかしそんな貴族の行動を変えさせたのは何気ない部下の一言だった。

 「こんだけ魔族がくれば、城はカラだったりして」

 もしかして? 本当にそうなのか?

 貴族の頭の中にその言葉が何度も反芻される。貴族としても何も選果も上げず撤退しては分がわるい。しかも、もし本当に魔族が城をカラにすれば大選果を得ることができる。貴族はカケに出ることにしたのだ。

 急ぎ、部隊を迂回させつつ敵の城に近づき、同時に斥候も放った。

 貴族としてはまぁ運が良ければ、と同時にさすが魔族が馬鹿でもそこまではしないだだろうという予測だったのだが・・・

  それがいい意味で完全に裏切られた。


 重厚な防御の厚いはずの魔族の城、しかし、そこには魔族なぞ1人も居なかった。

 さすが半信半疑でここまできた貴族もさすがに口を開けて呆然とするしかなかった。

 すぐ城を占領し、同時に迎撃準備にかかる。そして今回の遠征には強力な魔法使いも20人以上連れてきているのだ。

  堅く城を固めつつ、隠れつつ魔族への奇襲を準備した。

 魔族が残念な顔でのこのこと出た来たところを、バリスタや、石弓、魔法なので総攻撃による奇襲を行った。

  その奇襲は劇的な効果があった。懸念した敵の大将。敵魔将であり『金髪の魔将』とよばれる凶悪な女性の姿もなかった。

 居たのはひたすらにヒステリックに叫ぶ似たような姿の金髪の少女。おそらく『金髪の魔将』の縁者か子供なのか?

  その子供は子供にしては多い魔力を有していたが、当方の魔法使いによる連続攻撃にいいように狙われていた。

 何しろ相手はただ突撃するだけである。高い石の城壁の上には敵に倍する弓兵、いくら魔族個々の能力が高かろうが、その兵力差では一方的に蹂躙されるだけある。

  脅き、怒りの魔族達は何度も突撃してきたが、対した統率もなく、攻撃したた魔族は次第に個々に撃破されるだけになった。

 無論人間側にも被害は発生したが、当初の予測よりもはつかに被害は軽微だった。さらに退却する魔族に対し追撃を行い、敵将と思われる子供は逃したが、ほぼ魔族を殲滅という大選果を得た。

 結果、あまりの少ない被害に予想外の大選果により、この城を橋頭堡とし、さらなる選果を得るために行動を開始した。


  しかし・・・ここに来て結果が予測と著しく違ってきた。今も城の会議室内で貴族の配下と思われる上級兵たちが気落ちした面々で会議に望んでいた。

 「のぉ、さすがに一時、撤退がよくないか」

 「しかし、被害はまだまだ軽微。今回の遠征でそもそも予定された消耗率まで遠く及んでいません」

 「それはそうじゃが、そもそも、この城での防御戦と比べて、無視できない被害が、偵察、哨戒部隊にでておる」

 「それはそうですが・・・それを加えても、今更折角得たこの城含めた領土を放棄するのは割にあいません」

 「確かに、念願の魔族の土地の奪取、領土をみすみす放棄するのは実に惜しい」

 「しかし、これは異常事態ともいえる、今までこんなに偵察、哨戒部隊に被害が出た事はない」

 「これは・・・何か人間の、それもかなり知恵者が向こうにはついているのではないか?」

 「魔族に? そんなの普通はありえませんが」

 「普通に考えればのぉ、 しかし魔族が正面決戦ではなく、このような各個攻撃なんて本来にはないものじゃ。予測外の行動にはこちらがいくら警戒しても物足らん」

 「・・・ふむ」

 「たぶん、向こうの手としては次は補給部隊を襲うと思うのだが」

 「魔族が補給部隊を襲うなんてあまり聞いた事がありませんが」

 「確かにの・・しかし敵はこちらの目と耳をふさいできておる。次には補給とくるのが普通じゃが」

 「一応、早馬数名で警戒するように伝令を出しております。あと伝書鳩も数羽放しております」

 「ふむ、それで間に合えばよいがの」

 

  しかし結果的には早馬も伝書鳩も貴族の本拠地に届く事はなかったのだ。魔族側は広げた複数の蝙蝠よる警戒網、異常を察知すると各地に配置した少数の魔法蝙蝠が迎撃に向かう。これにより制空権は完全に魔族側にあった。


  そんな不安なままの人間達の城に異常がもたらされたのは数日後、体のアチコチに火傷を負った兵士が、瀕死の重傷のまま城に駆け込んできたのだ。

 「何、全滅じゃと!」

  その驚愕の報告は補給部隊の全滅を知らせる物だった。運んでいた糧食や矢などの補給物資が全部魔族の手によって焼き払われたというのだ。

 30名ほどいた補給部隊も彼以外は行方がしれず、とりあえず逃げてきたという。

 「警戒するように早馬を飛ばしたのだが」

 「いえ、当方には何の連絡も来ていません」

 「何だと!」

  そして、その補給部隊の生き残りから聞いた魔族側の攻撃手段も人間側のそれまでの常識を覆すものだった。

  何度も小規模な夜襲を繰り返した後、早朝での攻撃。しかも伝令も通じてない事から察するに明らかに人間の知恵者が魔族についているか、魔族側に新しく知恵者がついたのがどちらかであった。


 それを踏まえ会議はさらに困窮した。

 「だから、早々に撤退すべきだったのだ」

 「そんな事始めて聞いたぞ、これだから文官は」

 「それよりも、どうするかだ、食料も限界はある、それり予想外の城防衛戦で矢の数が圧倒的に足らない」

 「だから撤退を」

 「撤退時、追撃されたらどうする。貴公も撤退時の追撃線はどれほどの物になるか、前回この城で十分にみたであろう」

 「うーむ」

  城の会議室では結論がでないままで夜は更けていくのであった

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