三学年 卒業式2 最後の普通な日常
そうこうしている内に教室に到着
「みんなおはよう」
俺はいつもみたいに…もう何年もやり慣れている仮面をかぶりながら…つまり微笑みながら教室に入る。
「!?咲夜くん!!」「咲夜!!おはよ」「今日の花形は来るのが遅かったなー」「今日はもう来ないかと思ったじゃないか」「俺とお前の青春もここまでか…元気にしろよ」「咲夜くんはこのまま高等部に行くんだよね?一緒だね♪」
すぐさま教室に居た者達に囲まれる。……うん…予想通り。いつも通り。……ついでにやり飽きた。
「うん おはよ」「はよ~」「今日は歩いてきたからね」「途中ちょっとボーッとしてたら遅くなっちゃったんだ」「山村お前もな 元気にやれよ」「うん。そうだよ 佐藤さんまた一緒のクラスだといいね」
一人一人の話に耳を傾けているうちにHRに。……うん。いつもとまったく一緒の展開。
「えぇ~…改めて…担任の後藤だ……今日は卒業式な訳だが…なんだろうな…三年間はあっと言う間だった。…俺の中ではみんなと会ったのがつい昨日のように感じるよ…このクラスで取り組んだこと全てが…頭のなかで走馬灯のように流れている…卒業おめでとう」
入学から今の今まで担任だった後藤が話を始める。……てかしんみりしすぎてね?まだここは式場じゃねぇぞ… …今日コイツが泣くことに10万懸けれる自信がある…
さらに後藤(やたらと語りたがる癖を治して欲しかったが…今日で最後となるとちょっと寂しいかも)が話を続ける。
「…思い出すと懐かしい…ちょうどお前らと始めて会ったあの日も今日みたいな少し暖かい日だったっけか…俺が「みんな元気してるか」って言って教室の扉を開けた時のこと…お前らは覚えているか…」
長い。今日はいつにも増して長い。
……これは最長記録の75分と49秒を塗り替える勢いだ…
…どーりで集合時間がおかしいわけだ…
だって式が始まるの約2時間後だぜ?
「……そうだな岡田。あのときお前は俺の鼻フックデストロイヤーをかわしてメリケンサックル叩き込んだっけ…懐かしいな…」
……いや、待て待て
少し聞いてない内に何があったんだ?
てか後藤。仮にも教師なんだから生徒にそれはまずいんじゃ…てか岡田もヤバイよ?学校によくバレなかったな…ある意味尊敬。
(30分後)
「……宇佐美!!よく言った!!…たしかにそうだな…俺もおかしいとは思ったんだ!!…だって70過ぎてるはずだしな…黒髪は流石におかしい。…そう思って実は文化祭の時に探ったんだそしたらやっぱり校長のあれはカツラでな、しかも…」
……なぜカツラの話?
そしてなぜ誰も突っ込まない?
…林さんなんか完全にのめり込んでるし。なんかうっすら涙うかべてるけど?
……文句があるならお前が言えって?ヤダよ。
最後の最後にキャラ崩壊は避けたいんだよ。
(さらに30分後)
「……そして俺は言った!!「それは貴方のハートです」ってな。そしたら相手はなんて言ったと思う?「Oh OKOK Thank you アリガトウゴザイマシタ」だとよ!!いやぁ…修学旅行も悪くないなって思った瞬間だったな…しかもそのあとそのアメリカ人がさ…」
後藤。お前は修学旅行先で何をやった。
……それ完全に英語理解してなかったろ。相手だってどー見たって流してるし…
てかそろそろ誰か突っ込まない?
なんでみんなそうやって食いつけんの?
……前言撤回…もう二度と後藤の語りは聞きたくねぇ…神に誓って!!
(さらにさらに30分後)
「……ってなかんじで俺はクラスマッチを控えて自主練してたんだ…だってお前らの前だから恥ずかしいとこは見せられないと思ってな…お陰で当日はバッチリ写真を収めることができた…それもこれも夜中のカメラさばきの秘密の特訓の成果と思うと胸がいっぱいでさ…」
……まだ言うの?もうよくない?
このクラスは心が広い人が多いのか?……俺はさすがに限界。
……まぁだいぶ前からだけど
……もうキャラ崩壊とかどうでもいいから終わらせよっかな…
(さらにさらにさらに30分後)
「○◆◇◎▼★▲☆」
……キャラ崩壊はやだからもう真面目に聞かないようにした…
なんか身ぶり手振りで説明してるが…俺は聞かないよ
クラスのヤツら全員涙流して笑ってるけど…俺は聞かないよ
だからといって龍哉みたいに無表情でいるのはキャラじゃないから顔だけ周りに合わすけどな…俺は聞いてないからな
てかみんな聖者?俺だけ?こう思ってんの…
(さらにさらにさらにさらに30分後)
「………となって俺とセバスチャンは友人になったんだ。みんなも高等部で新たな友人を作るときは参考にしてくれ。本当に卒業おめでとう。そろそろ卒業式が始まるからトイレいきたいヤツは行ってこいよ。これでHRは終了。入場まで教室で待機な。それじゃあ解散」
……終わった?終わったの?
前みたいにフェイントじゃない?
……ふぅ…長い長い地獄がようやく終わった…
なんでみんな泣きじゃくって「セ、セバスチャン」とか「よかったねぇ先生」とか泣いているかはよく分からないがとにかく終わった…
入場までの時間、俺は卒園式の卒業生代表の挨拶があるため原稿の確認をしていた。
……高等部入学の時の新入生代表挨拶も考えなきゃなと思いを馳せながら…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
入学式が始まった
……別に説明はいらねぇよな?
ご存じのように入場、祝電披露、学校長式辞や卒業証書授与式とか、あの長ったらしくて暇でつまらなくて早く終わんねぇかなっていう時間が過ぎて俺の番。
「9、卒業生代表挨拶」「はい」
俺はクールに…そして堂々とした足取りで壇上に向かう。
壇上に立つとこれまで長きにわたり俺がまとめてやってきた愚民…おっと失敬…まとめてきた者達が俺を見上げているのが見えた。泣いているヤツらがほとんど。…龍哉の無表情がいつになく目立っていた。
…お気楽なヤツら
「……多くのことを学び、過ごした三年間は僕たちの宝ものです…」
…多くのことを学び、過ごした三年間は俺の輝かしい跡継ぎへの道を照らし出してきた宝物です
「…この学舎で培ったことを糧に、僕たちはまた一歩大人へと成長できました。」
…この学舎で培った権力の大切さ、独占する方法を糧に、俺はまた一歩親の会社を奪う方法を手に入れ、成長しました
「…支えてくださった先生方、また僕たちのために今日まで側で見守ってくださった母さん、父さん…本当にありがとうございました…」
…俺のアイディア全てをなんの曇りもない態度で完全に信じきっていた先生方、また俺の内面を理解せず真面目な咲夜くんを…ウザイくらい見守ってきたお袋、俺のなかの父親の威厳を失いつつあるオヤジ…本当に見ていて色々楽しませてもらったよ…
「…僕たちはこれからも希望に満ち溢れた将来に向かって歩き続けます。」
…俺はこれからもコイツらのような俺の肩書き欲しさに近寄って来るヤツらを手駒にし、ヤツらに地獄を味あわせる将来に向かって歩き続けます
「……また、今日まで不甲斐ない僕らについてきてくれた一年生、二年生…先輩から1つ助言があります…
毎日努力を怠らないでください。
努力を怠るものは必ず後悔します。努力を惜しまなかったら必ず幸せな人生になります。これからも学業に励み、更なる高みを目指してください。」
……また、今日まで学園の"王子様"を信じきってついてきてくれた後輩共…1つ教えてやるよ。
努力なんてなにもできないバカがやることだ。
本当にできるものは根本から他のヤツらと作りが違うんだよ。毎日努力なんてしなくても悪知恵働かせれば幸せは掴み取れるんだよ。これからもせいぜいそのことに気づかないまま学業に励み、無駄な努力だけど更なる高みを目指せばいんじゃねぇの
「……本日は僕達ために貴重なお時間をどうもありがとうございました。僕達はこれからも精進いたしますのでご助力を頂けたら幸いです。」
……本日は俺の日頃のうっぷんを晴らす貴重な時間をどうもありがとう。俺はこれからもこんな感じのスタイルでいくからせいぜい気づかないまま助力してろ。
「…年度卒業生代表凰寺咲夜」
……とまぁ挨拶をして席に着く。
いやぁ…うっぷんを晴らせたわ…
……見てみろよ保護者の方々も目元押さえてるよ…
……ほんとお気楽なこった
まさかこのとき言った「努力を怠るものは必ず後悔します」って言葉がが実現して、俺に降りかかってくるとは夢にも思わずに俺は卒業式を無事終え、私立聖麗学園中等部を卒業した。
そして次の…最初の絶望したあのシーンの引き金となった出来事はその日…春休み最終日の前日…
オヤジの帰宅が全てを狂わせたんだ…